第2回 ラーメンは郷土料理だ!
札幌、博多、喜多方をはじめ、日本各地にはその土地ならではの様々なラーメンが存在する。その違いが、それぞれの土地の個性の違いによるものであるならば、ラーメンも立派な郷土料理といえる。会議第2回目は、「ラーメンは郷土料理だ」という視点からラーメンについて、塾生諸君と共に考えてみたい。会議の進行は、まずは塾長雁屋哲と、塾頭雁屋小哲が基調トークを行います。これを踏まえ、塾生諸君はどう考えるのか、ブログで大いに発言してほしい。
[第2回 発言テーマ]
1.自分にとっての、地元のラーメン、
2.自分にとっての、よその土地のラーメン
※ 発言テーマは上記に限らず広く考えて結構です。
今回の基調トークの範囲内で自由に発言して下さい。
例)
博多人にとっては、やっぱり博多ラーメンが一番だという、その理由。
関東の人間にとっての博多ラーメン。等
基調トーク 2
日本料理になったラーメン
小哲〜前回も話したけど、ラーメンて一口にラーメンとはいうけれど、地方によって全然違うものになってますよね。たとえば、昔の東京風のさっぱりしたラーメンと、博多のトンコツラーメンでは、もう、まるで別の食べ物でしょ。いま日本各地にご当地ラーメンというのがあるけれど、どれも地域ごとに麺もスープも違うし、具だって地域ごとに特徴がある。でも、ルーツは明治の末に浅草に登場したような、中華麺を日本人向けにさっぱりさせて作ったラーメンだったわけで、それが地方に広まるにつれて、その土地の味とか、食材なんかが取り入れられてどんどん進化をしてゆく。このへんがね、ラーメンの生命力っていうか、面白いとこだと思うんですよ。だって、元は中華料理だったものが、日本全国に広まりでここまで日本化したものって他にないでしょ。
塾長〜日本人はもともと折衷民族だから、西洋料理であろうがなんであろうが、なんでも日本化してしまうのが得意なんだよ。とんかつも、カレーも、てんぷらも、どれも元は西洋からきたものだけど、とんかつなんかすごいよ。コットレットがとんかつになり、さらにカツ丼になり、串かつにもなり、ついにはかつカレーにまでなっちゃったんだから。なんていうか、日本人の面目躍如ってところでね。で、ラーメンもそれと同じで、ただ、他の料理より権威主義的でなく大衆的だったぶん、好き勝手に工夫され進化してきたんじゃないかな。とにかく、これほど日本の地方ごとに様式が生まれた食べ物は他にないだろ。
地方ごとに進化したラーメン
小哲〜そうですよね。とんかつだと、地方版といえばせいぜい名古屋の味噌かつくらいのもんで、ラーメンみたいに日本のあちこちにご当地とんかつなんてものが生まれているわけではないですからね。カレーだって、博多カレーとか、札幌カレーなんてのはできてない。ところが、ラーメンは日本料理になったうえに更に地方ごとに進化したわけで、そう考えると、外国料理でラーメンほど日本人に受け入れらた食べ物ってほかにないですよね。しかも、地方ごとに元のラーメンとはまったく別ものに変えちゃってるわけだから、その意味でも日本的だ。
塾長〜このあいだ青森県を取材したんだけと、この地域のラーメンっていうのは焼き干しでだしをとっているんだよ。いわしの煮干しではなく、焼いてから干したやつで、こっちのほうが澄んだ味のだしがとれる。だけど、これを昔ラーメンを考案した中国人のコックが食べたら、さぞびっくりすると思う。ただし、このあたりでは昔から汁ものや煮物の出しに焼き干しを使っていたから、ラーメンであろうとなんの抵抗もなく焼き干しを使ったんだね。要するに、自分たちの口に合うように変えてしまった。
小哲〜そうそう、結局、みんなその土地土地で自分好みの味に変えていっちゃうんですよね。で、面白いのは、ご当地ラーメンっていうのを見ると、どれも、その地方の味の好みとか、素材とか、気候風土なんかが大きな要素となってできあがってる。前に喜多方ラーメンを取材したことがあるんだけど、あそこの麺が太くて縮れているのには理由があるっていうんですよ。冬の雪の日に、時間をかけて出前をする時にね、細い麺だとのびてしまう。それで太くしたんだって。この、雪の日の出前ってのが、ちょっと情緒があっていいでしょ。それと、喜多方では、祝い事とか宴会の最後のしめくくりとして必ずラーメンを食べるんですって。で、一番びっくりしたのは、ラーメン屋の開店時間が朝の7時だっていうの。店の人がいうには、店を開けるとすでにもう待っている客がいるんだって。なんたって朝食にラーメンですからね。こうなると、ラーメンはその土地の生活や風習にも溶け込んでいる。
うどんはラーメンに負けた
塾長〜宴会のしめくくりにラーメンを食べるっていうけど、山梨ではほうとうを食べるって言っていたな。特に酒を飲んだあとは、皆で必ず食べにゆくそうだ。
小哲〜埼玉県では、昔から宴会の最後はしめくくりとしてうどんを食べるんですって。やっぱりね、うどんがないと終わらないらしい。それを考えると、喜多方の場合も、もともとはうどんだったのが、ある時、ラーメンに駆逐されたんじゃないですかね。時代の流れでうどんがラーメンに負けた。でも、ラーメンの出しに煮干しが使われたりして、じつは、ラーメンの方もうどんに近づいているんですよね。
塾長〜僕がはじめて魚介の入ったラーメンを食べたのは、焼津なんだよ、もう40年以上も前だけどね。焼津の魚市場の入り口に屋台のラーメン屋があって、そこで食べたラーメンに鰹節が入っていたのでびっくりした。で、それが初めてだったんだけど、食べてみて、うまいなって思った。それ以前に僕が食べたのは、まだ高校生だったしそんなあちこち出て食べる機会なかったから、せいぜい東京のラーメン屋しか知らなかった。東京のラーメンは基本的に鶏の出しじゃない。で、なぜ焼津かっていうと、焼津は鰹節の生産地だから。土地のそれぞれの人たちの好みと状況によって、じゃあこのラーメンに鰹節を入れてみようと、青森の場合は焼き干しだったけど、これは革命的な考え方だと思う、ほんと。出しをさ。ラーメンの出しに中華のだしにカツブシ入れちゃうなんて。それを自然にやっちゃったんだろうな。
郷土料理としてのラーメン
小哲〜それで思いだしたけど、焼津ではおでんにも粉鰹をまぶして食べるんですよね。むちゃくちゃ濃い味なんだけど、焼津の人はなんの抵抗もないんでしょうね。だから、同じようにラーメンにも鰹節をいれちゃう。でも、こうしてみると、ラーメンってのは、どんどん土地の味とか素材と融合しながら、結局その土地の食べ物として進化していくわけで、これって、やっぱり立派な郷土料理ですよね。それも、現在進行形の・・・・。
塾長〜サッポーラーメンなんてのも、それまでの東京のと違って濃厚なものになったのは、寒い気候があるんだろうな。ああいう寒いところだと、どうしてもこってりしたのを食べたくなる。逆に九州のトンコツなんかは、もう、九州の人達のなんていうか、彼らの食べものを見ていると豚とかやっぱりいろいろこってりしたものを食っているしね。それと、博多のあの細い麺は、元々はせっかちな市場の人間のために、すぐに茹で上がるように細くしたっていうしな。
小哲〜喜多方は出前をしてものびないように太麺にして、一方、博多ではせっかちな市場の人間のために細めんにした。で、それがその土地のラーメンのスタイルとして定着したってわけでね。この、なんていうか、そういうそれぞれの土地や人間の事情で、ラーメンのスタイルまで変わってしまうってところが、その自由っていうか、こだわりがないっていうか、これまたラーメンの面白いところでもありますね。その結果が、日本全国にあるご当地ラーメンであり、地ラーメンなんですから。
塾長〜だから、ラーメンを改めて郷土料理として位置づけると、また違った面が見えてきて面白いと思うよ。当然、昔からの郷土料理との関連性もあるだろうし。最近の若いのは郷土料理なんて見向きもしないけど、でも、 ふだん地元で食べているラーメンが、じつは、味も素材も郷土料理そのものだったりするわけだから。
小哲〜そうそう、たかが一杯のラーメンなんだけど、その一杯が
結局、その土地の昔からの伝統や生活風習に合わせ、地元好みのものに、作り変えられちゃった結果なんだってことが見えると面白いですよね。で、由来なんかを調べると、なんだ,、そうだったのか、それでこんなラーメンになったのかと、その土地のスタイルになったのには、それなりの必然的な理由があったりする。
一杯のラーメンは郷土の味のサンプル
塾長〜もう一つ、面白いのは、ラーメンって地方ごとにいろんな種類があるけど、でも、どんぶり一杯の世界だろ。で、上に乗っている具も、地方ごとにいろいろあるけど、最小限の約束ごととして、麺とスープと、どういうわけかチャーシューだけは乗っている。だから、地方ごとの違いがよくわかる。
小哲〜そうですよね、ラーメンってのは他の料理と比べたら、一種の規定種目なんですよ。だから、郷土料理としてみると、地方ごとの違いが一目瞭然だ。普通、郷土料理だと、多種多様だから地方ごとに比較するなんてとてもできないけど、ラーメンだったら、これって、どんぶり一杯が、言ってみれば、郷土の味のサンプルであるわけだ。
塾長〜そうなると、全国のラーメンを食べ歩くんでも、新たな楽しみが出てくる。郷土料理としてみると、単にうまい、まずい、だけでなく、その土地の生活とか風習とか、県民性まで、いろいろ見えてくる、たとえば、せっかちな県民性とかな。
小哲〜うーん、それ、ありますよ。「君がどんなものを食べているか言ってみたまえ、君がどんな人間かあててみせよう」のラーメン版ですよね。じゃあ、やっぱり、当分の間、ラーメン会議は「ラーメンは郷土料理だ!」でゆきましょう。
塾長〜そのうち、「日本全県ラーメン」ってテーマでイベントもやることにしよう。とにかく、ラーメンも、郷土料理も面白い。
