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第5回 20年後の究極のラーメン

96年組以後のラーメンが実際どのように変わったのか。ラーメン会議は表参道ヒルズにある「MIST」へと場所を移し、参考事例を試食しながら、やがて話は「究極のラーメン」へといたる。今回も、「日本一ラーメンを食べた男」、ラーメン評論家の大崎裕史氏とともに、会議を行う。いつもの様に、この基調トークを踏まえ、塾生諸君の意見や感想を、ブログで大いに発言してほしい。


[第5回 発言テーマ]
1.キミが食べてみたい究極のラーメンとは。
2.現時点で君にとって究極と思える、またはそれに近いラーメン屋
3.キミが考えるラーメンの値段と価値について。
  MISTのラーメンは1200円だが、安いか高いか。
4.キミにとって居心地のいいラーメン屋。
  ラーメンが美味しければシャレタ店である必要はないのか。

※ 発言テーマは上記に限らず広く考えて結構です。
  今回の基調トークとの関連で自由に発言して下さい。


06112201.jpg小哲〜さて、そんなわけで、表参道ヒルズのMISTにやってきたんですが、いやあ、ラーメン屋でこんなにおしゃれな店っていうのは、初めてじゃないですか。まるでカフェバーみたいです。カウンターには布のナプキンが置いてあるし、カウンターの下の備えつけの引出しを引くと、箸とレンゲが納められています。それから店の人の格好もカフェのギャルソンみたいだし、とてもラーメン屋とは思えない。

塾長〜昔のラーメン屋だったら、ラーメン屋のテーブルの上にはお箸がボーンと立てられていて、それを勝手に取り出して、そこに塩だの胡椒だのがあって、実に乱雑な感じ、今まではほとんどがそういう感じだったけれども、これだと、一体何を出されるのかわからないな、西洋料理風の造りだから。

大崎〜パッと見、レストランですよね。

塾長〜それで実は出てくるのはラーメンだから面白い。

大崎〜しかし、表参道のこういうファッショナブルな場所にラーメン屋さんが入れるようになったということだけでも一つの進歩だと思うんですよ。チャレンジャーなわけですね。それと、夜はラーメン懐石のコース料理もあります。

塾長〜これまでの乱雑な感じのラーメン屋から、料理としてのラーメンへ脱皮しようとしているんだな。

小哲〜さてさて、店の造りに驚いているうちに、いよいよラーメンが出来上がったようです。今日は、大崎さんのおすすめで醬油ラーメンを注文しました。それと、食べながら店主の森住さんにもいろいろお話をうかがいたいと思います。

MISTのラーメン登場

06112202.jpg小哲〜えーと、具材はバラの煮豚とメンマに、長ねぎとあさつきを刻んだもの、それに煮玉子がのっているだけで、最近のラーメンの中ではとてもシンプルてすね。麺は細めで縮れてはいないけど、かすかにウェーブがついています。そして、スープは鶏と豚の出しに、鰹節系の出しがパランスよく溶け合い、どれ一つ飛び出るというこどもなく、香りがとてもいい。麺もカンスイの臭いはなく、よくかんでいるうちに小麦の甘味が広がってくる。

塾長〜うん、美味しいね。スープの味がとってもいい。ただ、僕にはちょっと塩分が強すぎるなあ。もう少し塩味が薄かったら満点なんだけどな。だって、スープを全部飲みたいもの。(笑)しかし最近はいろんなラーメンがあるもんだなあ。

小哲〜昔だったら、こんなラーメン考えられなかったけど、これが96年組以降の新しいラーメンなんですね。

塾長〜でも、思ったほど変わってるわけじゃないじゃない。

小哲〜うん、そうですね。料理としての基本を守ってますね。

塾長〜伝統的な味っていうか、鬼面ひとを驚かすようなことは何もしていないもんね。

森住〜ラーメンとしての守りたい形が僕にはありまして。

小哲〜ところで、塩分が濃いのは、これは意図的にやってますか。

森住〜はい、麺が強いので、合わせていくとどうしても麺を美味しく食べていただくためには、こうなってしまうんですね。

どんぶりの形にも理由がある

塾長〜しかし、このどんぶりの形は変わってますね。

森住〜ワインと一緒です。醤油味用は少しフレアにして香りを楽しめるようにして、あと、麺の太さに合わせて器の縁の厚さを決めています。

大崎〜そういう意味では、スープはレンゲを使わずに飲んだ方がいいんですよね。

森住〜そうなんですね。そうすると、麺をすすった唇が麺の厚さを覚えていますので、どんぶりを口のあてたときに違和感がないんです。

塾長〜となると、レンゲは使っちゃいけないの、やっぱり?それにしても、そこまで考えましたか。

小哲〜こちらは麺も自家製なんでしたっけ。

森住〜はい、いま僕は毎日製麺をやってます。

06112203.jpg塾長〜小麦はどこのものを使ってるんですか。

森住〜北海道と信州です。

塾長〜それをブレンドして使ってるんですか。ブレンドするのにはコシを出すためとか、香りとか、いろんな要素があると思うんだけど。

森住〜低蛋白と高蛋白を合わせて中間を出したいんですね。低蛋白を加えることでなめらかさが出て、国産小麦の特徴がありまして。

塾長〜鹹水は何を、どんなものを使ってるんですか。

森住〜内モンゴル鹹水、濃厚な鹹水です。

塾長〜内モンゴルの鹹水。それを選んだ理由は?

森住〜リンが入ってない。カリウムが含まれていない。

小哲〜リンが入ってないって、鹹水にリン酸塩が入ってないということですか。

森住〜そうです。ほんとに、炭酸ナトリウム100%です。リン酸塩が入っていると、骨粗鬆症になっちゃうんです。

塾長〜カルシウムを外に出しちゃうからね。

森住〜カリウムは胆石ができたり。僕ら毎日食事として食べるじゃないですか。ですから安全に気をつけて。

塾長〜でも、やっぱり鹹水が必要ですか。

森住〜使い続けたいですね。歯切れとか歯ざわり、口あたり、のどごしが、たまごだけで打ったり、そこに水を少し加えたりしても、比重が鹹水じゃないと、ラーメン、どんぶり一杯の脂がナトリウムで全部きれいに中和できるように、鹹水の比重を測るんですね。で、そこからラーメンづくりって始まってまして、どのぐらいの脂を使いたいかでその比重が変わってきます。ですから、一杯食べ終わったあと、体内で中性にもっていくためのものなんです。ですから、鹹水がないと分かれてしまうので、次の日とか結構つらいんです。これ、そばとかうどんで食べたら結構もたれちゃいますね。

だしの秘密は特製の鶏節

06112204.jpg小哲〜だしは何を使ってるんですか。

森住〜サバ節、カツオ節、血合を抜いて節をつくったものと、鶏節も入っています。

塾長〜鶏節?

大崎〜森住さんは鶏節っていうのをつくられたんです。

森住〜普通は魚系が多いんですけど、酸化臭のないように脂のない鶏肉を圧縮してカツオ節の形にして、それを風化させてカビづけをして。

小哲〜ビーフジャーキーって干し肉にするじゃないですか。それと似たような発想ですか?

森住〜いえ、全くカツオと変わらない形で。それを顆粒にしてスープをつくります。大体5分でできて、酸化臭がしないので、カツオとかよりは全然上品な、鶏の特徴が出ます。

塾長〜鶏はどこの鶏を使ってるの?

森住〜フランスです。

小哲〜フランスだと、ブレスの鶏とか?

森住〜ブレスのほんと小さいやつです。血統はそのへんの鶏なんですけど。どちらかというとハトに近いですね。その血抜きをした鶏節とか、カツオ節、サバ節。

塾長〜鶏節というのは森住さんのオリジナル?もともとどこかにあったんですか。

森住〜いえ、オリジナルです。知り合いの食品会社と一緒につくったんです。ラーメン屋からフレンチに何か食材を発信できたらということで。あと、だしは鶏と豚です。鶏も、東京シャモ、名古屋コーチン、比内地鶏、3種類をブレンドして、豚は天元豚です。その豚が今月からこの店オープンと同時に頭以外全部セットで入るようになりまして、あと、ロースはトンカツ屋さんに行っちゃうんですけど、そのほかの部分は全部契約で入ってくることになっています。

20年後の「究極のラーメン」

小哲〜森住さんの話を聞いていたら、まさにMIST流の究極のラーメンって感じですね。それで思い出したんですけど、塾長も以前に「美味しんぼ」で、究極のラーメンを作りましたよね。

塾長〜もう20年も前の話だけどね、テレビ番組の中で作りました。でも、その頃はそういうラーメンを作ろうなんて誰も考えもしなかったな。もともと、僕は鹹水を使った麺が臭くて嫌いだったのと、化学調味料をたくさん使っているのがダメだった。そこで、じゃあ本当に美味しいと思える理想的なラーメンを自分でつくってみようということでやったんです。あの時は、だしは地鶏のいいのを使って、豚は種子島まで黒豚を取りに行った。いまは黒豚はどこでも手に入るけど、その頃は黒豚って種子島にしかなかった。醤油だって、その頃は丸大豆醤油がほとんどなかったから、3年物の醬油を探して和歌山まで行った。麺は、粉もちょうどいい具合のやつを粉屋さんに選んでもらって、挽いてもらって、それを中国から来ていた麺打職人に鹹水を使わないで打ってもらったら、きっちりしゃっきりできたんですよ。鹹水を使わなくても。で、そういうことをやって、値段を計算したらラーメン一杯が30万円になった。(笑)でも、うまかったねえ。

小哲〜そのあと同じものを東京ガスのイベントでも作り、僕も係わっていたんですけど、いわばデモンストレーションとして作ったわけです。商売じゃなくてね。だけど、いまやそれと同じようなものを毎日、こうやって店で作ってだしているわけで、20年前にはとても想像できなかったことです。それを思うと感慨深いなあ。

塾長〜当時はとにかく、まず材料がなかったんです。いまみたいに良い食材が簡単に揃うなんていう時代じゃなかったんですよ。

大崎〜いま同じような食材を揃えたら、もしかしたらもっと安くなってるかもしれないですね。

塾長〜うんと安いでしょうね。今でも食材をいろいろ集めるのはもちろん苦労されてるんだろうけども、20年前とは様変りだと思いますね。しかし、驚きましたねえ。ある意味では森住さんの作るラーメンも究極なわけだから。もちろんその時々で変わっていくんだろうけど、いまできる限り最高のものを作ろうとしている。僕がオーストラリアに行っている間に日本のラーメンもずいぶんと変わったもんだ。

小哲〜森住さんみたいなラーメンの新しい地平を拓くというか、開拓者みたいな人が、96年組以降、登場してきたってことですね。

大崎〜そうなんです。でも、森住さんは見た感じもイチローに似てると思うんですけど、ラーメン界のイチローと呼ばれ、時代を切り開く先駆者という言われているんです。(笑)

小哲〜なるほど、大崎さんのオチが出たところで、次回は、96年組以降さらに進化を続けるラーメン界のイチローやゴジラの話をしたいと思います。

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2006年11月22日 16:14に投稿されたエントリーのページです。

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イラスト/花咲アキラ(「美味しんぼ」より)
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