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第12回 日本全県ラーメン巡り その6

まだまだ食べ足りない青森のラーメンに名残を惜しみつつもやってきた秋田県。まず最初に訪ねた十文字町で、小哲塾頭と斎藤講師はあらためて郷土ラーメンの素晴らしさを再認識するのであった。いつもの様に、この基調トークを踏まえ、塾生諸君の意見や感想を、ブログや美味しんぼフォーラムで大いに発言してほしい。

第12回 発言テーマ
1.キミが毎日でも食べたいラーメンとは。
2.キミにとっての故郷のラーメン、心に残るラーメン。
3.醤油は濃いほうがいいか、薄いほうがいいか。

※ 発言テーマは上記に限らず広く考えて結構です。
   今回の基調トークとの関連で自由に発言して下さい。


●店データ
「丸竹食堂」 
住所:秋田県横手市十文字本町 7-1
電話:0182−42−1056
営業:11:00〜19:30
定休:木曜日

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小哲〜さて、なかなか青森県を離れたがらない斎藤さんを無理やり引っぱって、ついに県境を越えて秋田県にやってきましたが、あいにくの雨模様です。でも、斎藤さん、青森と違ってなんとなく山々の色がのどかで秋田っぽくなってきたと思いませんか?これって気のせいかな。

斎藤〜はい、もちろん気のせいだと思います。

小哲〜。そうか、やっぱり、気のせいなんだな。でも、晩秋の紅葉がきれいですね。それじゃあ、これから行く店について、簡単に説明してくれますか?

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斎藤〜これから行くのは、横手地方の中の十文字という町にある「丸竹食堂」です。特徴は醤油ラーメンなんだけど、醤油の色が薄いんですね。で、かなりすっきりしたラーメンなんですが、これは丸竹食堂だけでなくこの近辺にあるいくつかのラーメン屋のどれもが同じような傾向で、これが十文字のラーメンの特徴といえます。で、じつは横手とか大曲とか角館とか、もうすこし南のほうへゆくと、このへんはもう隣町ごとに、それぞれいろんな特徴のある地域なんです。ほんとうはぐるっと回りたいところなんですが、秋田の中でももっとも特徴のあるのが十文字ラーメンなので、どこか一つということで「丸竹食堂」を選びました。

東北一帯に広がる煮干し文化

小哲〜なるほど、十文字ラーメンね。なんか響きがいいですね、十文字っていうのは。で、ダシに関してはどんな特徴があるんですか?

斎藤〜だしでいうと、いままでのところとほとんど変わりません。

小哲〜ということは、煮干し、とりがら、が主体ですか。県が変わったから即食文化も変わるってもんじゃない。

斎藤〜そりゃ、そうです。県という行政区分とは別の、歴史的な文化圏がありますから。

小哲〜ようするに、青森県が、いまだに南部藩と津軽藩という全く異なる二つの文化圏に分かれているように、県という明治以降の行政区分よりも、それ以前の江戸時代からの藩ごとの文化伝統のほうがしっかりと生き続けてるってわけだ。

斎藤〜私は、青森県でも津軽人であって、やはり方言も気質も南部の人とは違うわけですからね。

小哲〜そのへんもね、僕みたいな東京で育った人間にはわかりにくいことなんですよ。でも、たかがラーメンなのに、日本という国の地方文化の奥深さが見えてきておもしろい。しかし、いずれにせよ、東北のかなり広い地域で煮干しが使われているといことですね。

斎藤〜ええ、青森から、秋田、山形へ行くわけですけど、ずーとこういう傾向なんです。これは断言しますが、決して私がですね、煮干しのラーメンが好きだから、そういう店を選んでいるということではないんです(笑) 。

小哲〜なるほど、なるほど、了解しました。ところで、ふと思ったんですけど、青森もそうだけど、こっちのほうもラーメン屋なのに「○○食堂」というのが多いですよね。おそば屋でラーメンを出していた場合と、「○○食堂」というようにかつ丼とかカレーライスとと一緒にラーメンも出しているのと、二つのタイフがあって、ま、それが昔の形だったんだとは思うんです。関東の場合だと、昔は中華料理屋でラーメンを出すというのが多かったですね。

斎藤〜石巻なんかは、中華料理店のラーメンが、煮干しを使った地域のものになっていますよ。

小哲〜エッ、ということは普通の中華のスープとは別に、煮干しを使ったラーメン用のものも作ってあるわけだ。それは、珍しいですね。そうそう、これも車で走っていて気がついたんだけど、このへんは中華料理屋さんをぜんぜん見かけませんね。関東だったらどんな町にもレバニラ炒めとか肉野菜炒め程度の料理を出す小さな中華料理があって、そこにラーメンがおいてある。

斎藤〜東北でも、大きな町にゆくと、あるにはあるんですけどね。

小哲〜そういえば喜多方でも食堂という名前のついたラーメン屋が多かったですね。おっと、斎藤さんここが「丸竹食堂」ですか。ラーメン屋にしてはずいぶん立派な店構えだけど、やっぱり「食堂」って書いてありますね。

斎藤〜そう、食堂なんですけどね、でも、のれんの横に中華そば専門店て書いてありますよ。

小哲〜へえ、ラーメン屋にしてはずいぶん立派ですよね。それと、玄関前はきれいに掃除がされ水も打たれている。そして、灯籠や植木で飾られている。なんだかラーメン屋とは思えないくらいきれいだ。そうか、いま気がついたけど、「中華そば屋」よりも「食堂」のほうが、飲食店としては格が上なんですね。

この地ではラーメンではなく中華そばと呼ぶ

斎藤〜壁の品書きを見てください。いろいろ並んでるけど、チャーシューメン以外は、全部「中華」となってますね。

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小哲〜なるほど、ここはラーメンじゃなく、いまだに昔風の「中華」なんですね。

斎藤〜冷やがけ中華というのがあるでしょ。ここは中華そばも特徴がありますけど、あの冷やがけ中華というのがまた独特で、いわゆる冷し中華ではなく、汁が冷たいんです。

小哲〜でも、やっぱり最初だから、僕は、基本の中華そばを注文しましたよ。

斎藤〜はい、その中華そばが来ました。

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小哲〜わぁ、ほんとうにスープの色が薄いですね。一見、塩ラーメンのようだけとけ、そうでもない。ちゃんと醤油の匂いがする。で、具は煮豚のチャーシューに、オオッ、やっぱり麸が入っている。そして、メンマと、刻みねぎ、のり、さらに、かまぼこが入っている。ウーム、関東だとなると巻きのところが、かまぼこと来ましたか。そこで、スープをすすってみると・・・・・・・・、いやあ、煮干しだしと鶏ガラなんだろうか、スープの味はとてもきれいにまとまっていますね。煮干しがでしゃばっていないし、かといって脂で味をまとめているわけでもない。かすかに浮いているのは、チャーシューの脂だけで、だから、脂にごまかされず、それぞれの味が素顔のまんま生きている。いやあ、うまいなあ。この細めで少し縮れた麺がね、個人的にいって、僕の一番好きなタイプなんです。カンスイの匂いもないし、じつに、うまいなあ。

北前船が運んできた薄口醤油文化

斎藤〜いいでしょ。この麺とスープが十文字の特徴なんです。だしは、煮干し、焼干し、それとかつお節も使っているそうです。それに、鶏ガラと昆布。それと、醤油が薄口醤油を使っているんですね。だから、関西の煮物のように汁の色が薄い。

小哲〜エッ、秋田でも薄口醤油を使うんですか?

斎藤〜地元で作っているんですよ。ここは雄物川を使って物資が往き来している場所だったので、そういう点で、当然薄口醤油が関西から伝わってきたんだと思います。。
 
小哲〜そうか、秋田県というとしょっつるが有名だけど、ちゃんと薄口醤油文化もあったんですかねえ。関西ならどこの家でも必ず薄口と濃口があるんだけども。
 
斎藤〜東北でも、このあたりは北前船による交易関係があったので、そういうのがあります。

小哲〜そうか、じゃあ北前船で京都とか関西の文化が来たってことですね。それがある地域では根付かなかったけども、ある地域の人たちには気に入られて定着し、その後ラーメンにもそれが使われた、と。それから、醤油もいいけど、この麺もいいですね。このへんの製麺所がいいのかな。煮豚もこんなにさっぱりしていいいのかなって感じ。

斎藤〜麺はここの自家製ですね。主人のおばあちゃんの話だと、昔は手で打っていたんだけど、いまは機械で自分のところで打っているそうです。この店を始めたのが昭和28年で、その前におばあちゃんは戦前からあった「まるたま」という駅前の店で働いていて、麺も味付けもそのラーメンが基本になっているとのことです。

小哲〜戦前からといえば、じゃあこれおばあちゃんが子供の頃から食べていたラーメンということなんですね。なんだか、歴史を感じますねぇ。そうそう、話がそれるけど、さっき店の前がとてもきれいに掃除されているっていったでしょ。そうしたら、店の中もね、隅々まで掃除が行き届いているんですよ。

斎藤〜お手洗いもとても清潔でしたよ。

小哲〜で、厨房を覗いてみたら、ここもやっぱりきれいに整頓されている。僕はね、こういうすべてのことが味に出ていると思うんだな。普通のレストランでも、ほんとうに美味しくて三つ星クラスの店は、キッチンがもうピカピカで片づいている。

斎藤〜そうですね、やっぱり料理人の姿勢というものは、作る料理にでてしまうもんですよね。

地域の人たちが慣れ親しんできた味だから、インパクトなんかいらない

小哲〜そう、だからラーメンの味も、特別なギミックを加えるでもなく、素直できれいな味になっている。最近は、脂を入れたり、だしを何種類も重ねたインパクトの強いラーメンというのが流行っているみたいなんだけど、ここのラーメンはその正反対なんですよね。

斎藤〜これこそ、その地域でずっと食べられてきた地のラーメンというのか、郷土のラーメンなんだと思います。ですから、刺激を強くして、それでお客さんを呼んで来る必要は全くなくて、ほんとにその地域の人たちが慣れ親しんできた味。毎日食べに来たりするわけですから、インパクトなんか全然要らないわけですよ。だから、どれもみんなものすごくやさしいです。

小哲〜そうですね。最近は、新しく店を始めた、客を集めなければいけない、話題性がなければいけない、それでインパクトが大事だというような発想が多いらしいんですね。そのために新しい脂を入れたとかいろんなものを使い、よそがやってない新しいことをやる。でも、それがエスカレートすると、いつしかものすごい厚化粧の化け物のようなものになってしまう。一番の問題は、本人が゙気がついてないってことだけどね。渋谷のヤマンバ娘たちみたいに。

斎藤〜その点、十文字のラーメンは、毎日食べても食べ飽きない素顔美人だと思います。やさしくて気立てもいいし・・・・・・。

小哲〜なるほど、今回はほんとにいいひとを紹介してもらってよかった。それじゃあ、次はどんなひとに会わせてくれるのかな、楽しみだな・・・・・。

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2007年01月19日 23:34に投稿されたエントリーのページです。

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イラスト/花咲アキラ(「美味しんぼ」より)
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