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第14回 日本全県ラーメン巡り その8

酒田で次にやってきた店は、かつて中国人コックが伝えた太い竹棒ならぬ鉄パイプで麺を打っているという。酒田では珍しくないというが、それはまさに、かつて「美味しんぼ」で究極のラーメンを作ったときに用いた製麺法ではないか。酒田ラーメンの質の高さにいよいよ期待が高まるのであった。例によって、この基調トークを踏まえ、塾生諸君の意見や感想を、ブログや美味しんぼ塾フォーラムで大いに発言してほしい。

第14回 発言テーマ
1.ラーメンの具はたっぷりがいいか、シンプルがいいか。
2.キミがいままでに美味しいと思った麺

※ 発言テーマは上記に限らず広く考えて結構です。
   今回の基調トークとの関連で自由に発言して下さい。


●店データ
山形県酒田市「三日月軒」
住所: 酒田市東中の口町8-1
TEL: 0234-22-7616
創業年 : 昭和42年
営業時間 : AM11:00〜PM7:30
定休日: 不定休


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酒田には棹麺(カンミェン)の伝統がある

小哲〜酒田は初めてなんですけど、まさか棹麺(カンミェン)を使ったラーメン屋が何軒もあるとは考えてもいなかったですね。もう今から20年ちかく前になりますけど、雁屋塾長がはじめて「究極のラーメン」を作った時の麺が、太い竹棹で打った棹麺(カンミェン)だったんですよ。その時たまたま中国から棹麺(カンミェン)作りの名人が横浜に来ていたので、その人にやってもらったんだけど、当時、横浜でも棹麺(カンミェン)式の麺を使っているところは珍しかったくらいですから。それが、酒田では昔からずっと店ごとにそうやって作っていたというわけでしょ。これは、僕はびっくりですね。

斎藤〜酒田にはここと同じ「三日月軒」という店が何軒かあるんですけど、同じように酒田のラーメンを代表するスタンダードなところで、「大来軒」というお店も何軒かあって、そこも棹麺(カンミェン)というやり方をしていますね。なかでも三日月軒はアゴの焼き干しを使うという特徴があるので、棹麺(カンミェン)というつくり方と、アゴの焼き干しを使うというのでこの店にやってきました。

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小哲〜さて、注文したラーメンが出てきたんですけど、具はチャーシューに、メンマと刻みねぎ、それだけで、いたってシンプルです。で、さっそくスープを飲んでみると・・・・・・・魚出汁の味がかなりします。ただし、そんなに飛びでてはいない、とても穏やかな感じがするのは、動物系の出汁とうまくバランスがとれているからですね。

斎藤〜使っている豚は庄内豚だそうです。

小哲〜山形県の地元の豚ですね。

斎藤〜出汁に使っているアゴの焼き干しも、酒田の沖にある飛島という小さな島でつくったものですね。

小哲〜ということは、出汁も麺もみんな地元産ってことがゃないですか。

斎藤〜小麦粉がどこのものかはまだ聞いてないんでわかりませんがね。

小哲〜で、この麺なんですけど、中細の縮れ麺で臭みはまったくない。ああ、よくかんでいると口の中に小麦の甘味が広がってきて、美味しいなぁ。斎藤さん、じつはこれは僕の好きなタイプなんですよ。魚出汁がもっと強いかと思ったけど、思ったほど出しゃばってないし、醤油も強すぎず、スープの加減がちょうどいい。斉藤さんとしては、もっと魚出汁がきいているほうがいいんじゃないのかな。(笑)

斎藤〜いやいや、これはこれで美味しいですよ。

小哲〜でも、やっぱりこの麺がいいですね。ただチャーシューが肩ロースなんだけどけっこう固いな。口の中でもそもそしてきた。これも昔風ですね。

斎藤〜あ、今、ちょうどお客さんがいないから、ご主人の話を聞いてみましょう。

酒田では竹から鉄パイプに棹麺(カンミェン)が進化していた

小哲〜こちらでは麺に棹麺(カンミェン)を使っているって聞いたんだすが、昔からなんですか?

佐藤(店主)〜うちは私で2代目ですが、ずっと変わらず棹麺(カンミェン)でやってます。

小哲〜棹麺(カンミェン)って普通は太い竹棹なんですが、こちらは竹棹ではなく鉄の棒なんですね。

佐藤〜元々は竹だったんですけど、竹だと軽すぎてつぶれないんですよ。

小哲〜竹だとぴょんぴょん跳びながら打ってますよね。

佐藤〜これは鉄パイプなんですが、梃子の原理で後ろからみるとしなってますよ。これでいいんです。栃木の佐野あたりはまだ竹でやってるところもあるっていう話は聞きますけど。竹の場合は軽すぎて落ち着かない。それと、酒田ラーメンの特徴は多加水の熟成麺なんです。ちなみに我々のケツで打つやり方でいくと、いまの時期だと47〜48%ぐらい入るかな。

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小哲〜エッ、そんなに。ちなみに、多加水じゃない普通の麺は何%ぐらいなんですか。

佐藤〜30%を切るでしょう。

小哲〜そんなに入るんだ。

佐藤〜普通の製麺の場合、ミキサーからすぐ圧延しますので、多少硬くてもなんぼでも延してくれるんですよ。うちらの場合には、延びないんですよ、鉄棒で何度やっても。それが一つ。それと、生そばなんかでもそうですけど、多加水の方がはるかにおいしい。だた、これの欠点は、日持ちがしない。それと伸びやすいんです。ですから、出前には不向きです、はっきり言って。伸びないようにつくることも可能なんです。ただ、麺としてのうまさは残念ながら損われるかな。昔は出前主体だったんです。どこの地域もそうだと思うんだけど、いまはほとんどが店に来るお客さんが圧倒的に多くなっていますので、うまさを重視したようなつくり方をしています。

小哲〜なるほど、昔は出前でも伸びないようにもう少し加水率を低くして。

佐藤〜ええ、加水を少なくして、グルテンをがっちりきかせて。

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自家製麺なら安くて美味しい麺が作れる

小哲〜小麦粉はどこのものですか、これは。

佐藤〜小麦粉そのものは国産と普通の純強力粉を混ぜて使ってます。 

小哲〜この色は鹹水でこの色になってるんですか。

佐藤〜そうです。鹹水はいまものすごい少なくなってますね。

小哲〜あんまり鹹水のにおいがしないですね。昔のはすごく臭かったじゃないですか。

佐藤〜そう。鹹水の質も悪かったしね。ちなみにこれはモンゴル鹹水なので、においはだいぶとれてますよね。

小哲〜においは少ない。全然気にならない。それと、熟成っていうのはどれぐらいの期間やるんですか。

佐藤〜最低3日。

小哲〜これで何日目ですか。

佐藤〜何日目だろう、1週間ぐらいなったのかな。

斎藤〜そんなにやったら色が黒くなりません?もっと黒くなると……、

佐藤〜いやいや、それは悪い小麦粉を使ってるからですよ。酒田のラーメンは、自家製麺比率がすごく高いんですよ。で、その理由として、一つは原価的なものもあるし、あともう一つは、スープに合った麺をつくれる。で、原価という面でいくと、いい粉を使えるんですね。ですから、1週間経ってもこの程度で済むんです。製麺屋さんは10グラム20グラム変わっただけで10円、20円変わっていくんです、買った場合に。実際の原価は数円なんですけどね。1袋当たり高い粉を使っても1個当たりにするとこれもまた数円で済む。そういうふうにしていってるもんで。

小哲〜手間はかかるけど、そのぶん満足のいくものが作れると。

佐藤〜手間は、毎日やってればこんなもんだと思えば。

小哲〜いやぁ、職人のカガミですね。客としては本当にありがたい。ところで、出汁なんですが、酒田はアゴ出汁が主なんですか。

アゴ出汁は昔は貧乏人は使えなかった

斎藤〜いや、煮干しが基本です。その中にアゴ、トビウオの焼き干しを使っているお店もたくさんある。全部がトビウオの焼き干しを使っているわけではない。昆布、煮干しなんです、基本的には。

小哲〜こちらは、煮干しとアゴ、それとも全部アゴですか?

佐藤〜全部アゴではないです。全部アゴでは出汁はとれないです。さっぱりし過ぎて、旨味もそれほど出ない。むしろ、和食のお店で昆布とカツオで純粋にきれいな出汁をとる手法があるでしょう。酒田も昔の良家ではお祭りとか催事があるときは、昆布とアゴ、トビウオだけで出汁をとったんです。

小哲〜それは煮物とかの出汁?

佐藤〜煮物しかり、そうめんしかり。いろんなものにね。そういう流れは昔からあったんです。ただ、いかんせん、昔からトビウオ自体が高かった。で、我々貧乏人は使えなかったんですよ、いくらおいしくても。それで煮干しの方に行ったんです。でも、いままたあらためてトビウオが見直されて。それと、トビウオの使い方そのものがわかってきたんですね。要するに、大量に使うもんじゃないです、あれは。48センチの寸胴に入れるのはせいぜい2尾ぐらい。

小哲〜えっ、そんなものなんですか。

佐藤〜そんなもんなんです。

小哲〜そうすると、どのぐらいの違いが出るもんですか、2尾入れたことによって。

佐藤〜味が丸くなります。

味には作り手の性格も出る

斎藤〜こちらのスープは一般的な酒田のお店に比べて、煮干しとか魚よりも少し動物系の方が強く出てますよね。これはどうしてそういうふうになったんですか?

佐藤〜どうしてっていうか、自分の好みの味を突き詰めていったらそういうふうになってきたんですね。動物系のだしは前日から煮るんですよ、仕事終わって。

小哲〜何を使ってるんですか。

佐藤〜動物系は一般的に普通の、ゲンコツ、あとは比内地鶏と普通の地鶏と、それから、豚のバラ軟骨、背脂はもちろん次の日なので、あとはモミジ。

小哲〜モミジも。

佐藤〜モミジも入れてます。モミジはかなり洗わないとね。これもまたクセが出やすくてね。

斎藤〜あと、昆布とか香味野菜、タマネギ、ショウガ、ニンジン?

佐藤〜もちろん入れます。

小哲〜それだけ入っていても味がうまくまとまってますね。

佐藤〜そうですね。それは結構時間がかかりましたね、ここまでなるには。

小哲〜僕はすごくおいしいと思いました。

佐藤〜ありがとうございます。

小哲〜魚出汁が飛び出てないし、動物系もそんなに飛び出してなくて、まとまっている。

佐藤〜俺自身が飛び出すのが嫌いなんです。煮干しくさいのがどうも。煮干しだしは好きなんですよ。好きなんだけど、いかにもって主張するのがどうもね。

小哲〜そうですか、やっぱり味には作り手の性格も出るってわけだ。いや、どうもありがとうございました、ごちそう様でした。

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2007年02月08日 08:13に投稿されたエントリーのページです。

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イラスト/花咲アキラ(「美味しんぼ」より)
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