ラーメン会議トップへ戻る

« 第17回 日本全県ラーメン巡り その11 | メイン | 日本全県ラーメン巡り、拡大版が始まります。 »

第18回 日本全県ラーメン巡り その12

東北ラーメンめぐり、最終回

「日本全県ラーメン巡り〜東北編」もいよいよ今回で最終回を迎え、東北のラーメンのレベルの高さから、郷土ラーメンの魅力まで、斎藤講師の話にも熱がこもる。「日本全県ラーメン巡り」は、まだ東北3県を終えたばかりだか、今後は各地域の講師にひきつがれ、日本全県の郷土ラーメンをカバーする。どのようなラーメンが登場するのか、大いに期待してほしい。


東北のラーメンのレベルの高さに驚いた

小哲〜今回は、斎藤さんと一緒に5日間にわたって、青森県、秋田県、山形県の東北3県のラーメン屋を食べ歩いたんですけど、とりあえず、僕の感想からいうと、東北のラーメンのレベルの高さに驚きました。もちろん、斎藤さんがいい店を選んでくれてるってこともあるけれど、全体の印象でいうと、関東よりも品のいい味で、これはまったく予想外でした。最近の東京のラーメンは、やれインパクトだのパンチだのといって、出汁も具もやたらゴテゴテしているのが多いんだけど、東北の場合は、人間でいえば、おおむね肩肘はるとこもなく、居住まいのいい人って感じだったなあ。じつ言うと、もっとしょっぱかったり、グチグチャしたどんくさい味かと思ってたんですよ。ところが大違いで、地域それぞれのラーメンにその地域なりの洗練があった。青森県の「煉瓦亭」も、酒田の「三日月軒」もよかったし、とくに十文字の「丸竹食堂」のラーメンなんか、毎日でも食べたいくらいですね。

07030801.jpg

斎藤〜東北全般についてみると、日本でラーメンという食べものが最初に成立したときに近いつくり方のラーメンだと思うんですね。ただ、手元にある食材が焼き干しだったり、煮干しだったり、その土地土地でいろいろで、それを使うということをことさら強調しているのではなくて、それはその場所にあるから使っているのであって、それにインパクトを持たせようという気持ちはさらさらないわけですから。
 
小哲〜そうですね。青森はイワシの焼き干しがあったからそれを使った。そば屋さんでもそれを使ったし、つゆものとか煮物にもそれを使った。その流れでラーメンにも使ったんだと。でも、ただ単にあったから使ったというのではなく、最初に入ってきた時は中国系の味であったはずで、それが時が経つうちに、煮干しを入れたほうがなにかしっくりとくる、うまい、ということで使われるようになったんじゃないかな。つまり、しだいに自分たちの舌に合わせてしまった。カレーなんかもそうですよね、インドからイギリス経由ではあるけれど。

07030802.jpg

斎藤〜大間の場合は、真昆布がとれる地域なので、それを使って出汁をとった。函館もほんとはそうなんですけども。そして、南部地方のはじかみとか、煮干しがとれる地域では煮干しを使う。酒田は、アゴの焼き干しが飛島でつくられているので、それを使った。それぞれの地域で自分のところで手に入りやすい食材で、ラーメンというものの中に一つのバランスとして使う。

小哲〜行った店をずっと並べると、なんだ、どこも煮干しじゃないと思うんだけども、煮干しにそれぞれ違いがあるんですよね。それと、日本全体を見ていくとわかるのかもしれないけども、もともとラーメンのルーツは中国で、上海でも広東でも海に面してるところはいくらでもあるけれども、出汁は牛、豚、鶏、ほかに金華ハムなどの動物系で、基本的には魚出汁は使わないでしょ。ところが、周囲を海に囲まれている日本では、煮干し、かつお節、さば節の節文化があるから、結局、スープにもその土地の節文化が入り込んでいる。そういう意味では、魚味というのはごく自然な、なるべくしてなっだ日本のラーメンの味なんでしょうね。

土地ごとに微妙に違うところが、土地らしさ

斎藤〜いままで見てきた東北のラーメンというのは、材料を文字に書いて並べてしまうと、煮干し、焼き干し、昆布、云々かんぬんという、似たものになるんですが、土地ごとにそれぞれ微妙に違って、その微妙に違うところがその土地らしさだと思うんですね。郷土のラーメンというのは多様なんだけど、その多様性というのは、うちはこれ、とバーンと主張しているのではなくて、その土地毎に微妙なずれというか、差異があって、その連続だと思うんですね、ずっと北から順に歩いて来ると。

小哲〜そうですね。青森県、秋田県というような現在の行政区分的な視点では、郷土料理などの歴史的な流れの中で形成されたものは捉えきれないですよね。青森県だって津軽と南部に分かれていて、南部は岩手県と重なっているわけ出汁。だから、足でずっと歩いてゆくと、少しづつ違ってくるのがわかる。少しずつ違うから。県ごとではないし、さらにあえていえば、港と川とかの交通の要衝をおさえる必要があるかもしれない。

07030803.jpg

斎藤〜いま郷土のラーメンというのは、最近、ここ10年ぐらい流行の、この食材にインパクトを持たせました、と主張していうのではなくて、その土地の食材を活かしつつ、一つのどんぶりの中にまとめているというか、まとめようと思ってまとめてるんじゃなくて、何十年とかいう時間、幾世代かをかけて、そういうものになってきたんですね。

小哲〜そういうものとしてできあがった、そういうことですよね。
 
斎藤〜で、その土地の人がずっと長く、例えば、毎日食べに来たりするわけだから、米沢の喜久家さんなんか、お客さんが毎日食べに来るっていってましたね。

小哲〜そうそう、毎日来る、夜も来るって行ってましたね。

斎藤〜毎日食べることができるということは、その土地の人がこういう味が好きだというものがあって、それにだんだんなっていくということでもある。

小哲〜新しいラーメン屋さんを見つけて食べたらおいしかった、じゃなくて、おそらく土地の人たちが普段食べているものとラーメンが一つのまとまりになって、彼らの好みの味が出来上がってると思うんですよね。小学校、中学校時代から食べて、高校になって、大人になって食べて、いちばん体になじむ味っていうのがあのラーメンだって、それはその土地の人の味であって、それがいわゆる郷土の味っていうかね。ご当地とは違う、地の人の味のラーメンだと思うんですね。

郷土ラーメンはどれもみんな優しい味

斎藤〜いわゆる、「ご当地ラーメン」というのは、町おこしとか地域おこしであえて名前をつけて、みんなから注目されるためにはなんらかの特色を表に出している。逆に「郷土のラーメン」というのは、ラーメンを作っている人もそこで何世代か続けて作っていて、そして、お客さんも、前の世代も、その前の世代もそのお店のお客さんだったりするわけですよ。だから、これと強く主張しなくても、ずっとその土地に伝えられてきた食べものの味というものにだんだん収斂していく。何かを強く主張するというのではなくて、ずっとその土地の人に愛されるということは、その土地の食の文化をラーメンも持っている。それは持たせようと思ったから持っているんじゃなくて、自然に幾世代か伝わっていくうちにそういうものにだんだんなってきた。だから、何かひとつとんがっているというんじゃなくて、どれもみんなやさしい味だったと思うんですね。

07030804.jpg

小哲〜そうですね。ラーメンてどんぶり一杯の中にすべてが入っていて、いわば麺とスープという形式による規定種目なんです。だから、この「ラーメン会議」で地方めぐりをすることで何を期待するかというと、今後九州とか、和歌山とかに行っても、基準となる基本形があるから、そのような地域ごとの文化や人間の違いがよく分かると思うんです。で、さらにいえば、日本の各地にはいろんな種類の郷土料理があるけれども、ラーメンという形で日本全国を比較していくと、日本の食文化って何だろう、そして日本人て何だろう、というところまで見えてくるんじゃないかと思うんです。そうなると、たかが一杯のラーメンでも、面白くなってくる。

斎藤〜日本人て何? ということも見えてくるし、それが見えてくることによって、逆に、東北って、四国って、というのも見えてくるでしょうね。

郷土ラーメンからは日本人の食べもののいろんな側面が見えてくる

小哲〜そうそう。その前にもう一つ、なぜ日本人てこんなにラーメンが好きなんだろう?が「美味しんぼ会議」の最初の疑問だったんです。斎藤さんのおかげで、今回は、「なぜ東北人はこんなにラーメンが好きなんだろう?」になりました。しかし、なぜこんなに好きなんでしょうね、東北人は。他にも、うどん文化とか、そば文化ってあるじゃないですか。米沢はもう少し北の方に行くとそば文化が非常に強いって、斎藤さん言ってましたよね。

斎藤〜米沢もそばの文化があるところなんですよ。ちょっと北の山形とか、村山とかの周辺には、最近はラーメン屋さんも結構出てきていますけれども、同じ山形県の中でも、米沢とか酒田とかに比べると、この土地のラーメンはこうだというものがあるわけでもないので、山形県のそばを食べる地域の中で米沢には、米沢のラーメンはこうなんだというのがあるんですよね。

小哲〜山形の北の方の人たちというのは、そば文化が根強く残ってるということなのかなあ。ラーメンが入り込む隙がないとか。

斎藤〜そこは置いとくにしても、日本人はなぜラーメンが好きなのかというのは・・・・・・。

小哲〜斎藤さんはどう思います? 東北文化を代表して。

斎藤〜うーん、すぐにはその答えはわからないんだけれども、ラーメンと呼んでいるものが、その土地、その土地で違うので、青森には青森のラーメンがあり、米沢には米沢のラーメンがあり、いろんな場所にいろんなラーメンがあって、「ラーメン」とか「中華そば」とか「支那そば」と呼んでいるものの中身が全部違うわけです。ですから、地域のラーメン、郷土のラーメンからは、東京にいる評論家とか、ラーメン通が語るラーメンとは違った、日本人の食べもののいろんな側面が見えてきませんか。

小哲〜まったく、そうですね。でも、みんな「ラーメン」もしくは「中華そば」と呼ぶからには約束事があるようで、僕が見てて思ったのは、東北3県をまわって、焼豚が入っている、メンマが入っている。それがあることによって「そば」じゃなくて「ラーメン」なんだという一種の記号が成立してるわけですよ、共通認識が。じゃあ、そばとラーメンとどこが違うかというと、動物系の出汁で、焼豚が入っているところ。動物系出汁は使っていなくても焼豚が入っているから、豚の脂でちょっと脂っぽくなる、それがラーメンらしさとして受けいれられているんじゃないですかね。でも、やっぱりその土地土地のラーメンの違いは、まずは出汁の違いとしてあるのかな。雑煮の出汁が地域ごとに違うみたいに。

斎藤〜自分たちが好きなタイプの味というのがあって、ラーメンの方がそのように変容しているわけですよね。

小哲〜そうなんですね、自分達の舌に合わせてラーメンを変えていっちゃった。それでも、ラーメンから焼豚、メンマはなくならない。ただ、これは今すぐに答を出せる問題じゃないから、全国を取材していくうちに、なにかわかるしもしれない。そうしたら、また斎藤さんの意見を聞かせて下さい。それじゃあ、どうも長い間ありがとうございました。

斎藤〜いやいや、とても楽しかったです。お疲れさまでした。


(了)

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.oishinbo.net/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/54

カテゴリー
このページについて

2007年03月08日 09:03に投稿されたエントリーのページです。

ひとつ前の投稿は「第17回 日本全県ラーメン巡り その11」です。

次の投稿は「日本全県ラーメン巡り、拡大版が始まります。」です。

他にも多くのエントリーがあります。メインページアーカイブページも見てください。


(C) Tetsu Kariya All Rights Reserved. No reproduction or republication without written permission.
イラスト/花咲アキラ(「美味しんぼ」より)
掲載の記事・写真・イラスト等のすべてのコンテンツの無断複写・転載を禁じます。