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東北編

第7回 日本全県ラーメン巡り その1

ラーメン会議は、今回からいよいよ郷土のラーメンを求めて日本全国に出かけてゆく。その第1回目は、人口比では日本一ラーメン店が多い山形県をはじめ、知られざるラーメン王国東北を、郷土文化研究家でもある東北担当講師の斎藤博之氏と共に回る。いつもの様に、この基調トークを踏まえ、塾生諸君の意見や感想を、ブログで大いに発言してほしい。


●斎藤博之プロフィール
1960年、青森県弘前市生まれ。青森市在住、フリーランス・ルポライター。東北や北海道を主なフィールドとして、祭りや民俗芸能、地域に固有な食文化・街道や海上の道の社会文化史・温泉の文化史・地域のなかの蕎麦やラーメン、地域づくりやNPO活動などについて執筆をしている。また、スローフードやエコミュージアム・グリーンツーリズムをテーマとする地域づくりの指導もしている。


第7回 発言テーマ
1. いわゆる創作ラーメンではなく、その土地で生まれた郷土のラーメンの魅力とは。
2. キミがいちばん好きな郷土の地ラーメン
3. キミが紹介したい、まだあまり知られていない地方の地ラーメン。

※発言テーマは上記に限らず広く考えて結構です。
 今回の基調トークとの関連で自由に発言して下さい。


06120801.jpg小哲〜「日本全県ラーメンめぐり」は、まずは青森からスタートしようと思うんですが、東北担当講師の斎藤さんは、「美味しんぼ」の「日本全県味めぐり?青森編」(2007年にスピリッツで連載予定)の取材コーディネートもやっていただいたんですよね。

斎藤〜ええ、青森の郷土料理のガイドみたいなことをやりました。

小哲〜でも、斎藤さんは郷土料理だけでなく、東北のラーメンについても非常に詳しくて、しかもラーメンは郷土料理だというのが持論だそうで、これは「ラーメン会議」のテーマでもあります。そこで、今度は「ラーメン会議」の東北担当講師として、東北らしいラーメン屋をいろいろ案内してもらうんですけど、その前に、斎藤さんと郷土料理のそもそもの関わりについて、教えてくれますか。

斎藤〜私はもともと各地域の民俗芸能を調査してまして・・・・

小哲〜あっ、そうか。もともとは民俗芸能ですか。

民俗芸能に郷土料理はつきもの

06120802.jpg斎藤〜はい。民俗芸能というのはお祭りの日に行われ、ハレの日なので、いろんな食べものも一緒に出てきます。ですから、その地域の民俗芸能と郷土料理は密接な関わりがあるんですね。それで、私もだんだんと郷土料理の方にも興味を持つようになったわけです。で、蕎麦やうどんなみたいな粉で作る食べものが、地域の特徴がいちばん出ていて面白いんだけど、いわゆる「そば通」という人達は、東京を中心にしてしか見ていないから、それぞれの地域の特徴のあるものがきちんと評価されていないと思うんです。同じように、ラーメンについても、全国一律に美味しい、美味しくないの価値尺度があるのではなく、その地域の人にとっての価値尺度があるのではないかと思います。だから、ある地域の人々にとって美味しいラーメンと、別の地域の人々にとって美味しいラーメンが必ずしも同じでなくてよいし、むしろ、いろんな尺度があるべきなんです。そういう意味で、私はラーメンというものも郷土料理だと思っています。ラーメンは日本で成立して百年近い歴史があるわけですから、その歴史の中で、麺はどういうふうに作るのかとか、スープは何のだしなのか、どういう場所で食べるのかとか、いうことも含めて、地域ごとの特徴があって、だからラーメンは郷土料理だと思います。ただし、これまでラーメンはあまり郷土料理としては語られてこなかった。

山形県は人口比で日本一のラーメン県

小哲〜まったく、その通りですね。僕も含めて都会の人間というのは、ついつい東京中心の価値観で日本全国を見ようとしちゃうんです。だから正直な話、僕だってこれまで東北のラーメンにはまったく目が向いていませんでした。札幌ラーメンや博多ラーメンみたいに全国区になったものは別として、地方のラーメンは東京の人間にとっては、まだまだ未知のものだと思います。でもね、統計資料をみると、人口比で日本一ラーメン屋が多いのは、北海道でも、福岡でもなく、なんと山形県なんですね。もちろん、東京の人間は誰もそんなこと知らないし、当の山形の人だって、自分の県が日本一だなんて気がついてないんじゃないかな。ちなみに、青森は全国で6位ですよ、福岡が31位だってのに。

斎藤〜それは意外ですけど、わかります。青森の人間はほんとによくラーメン食べますから。

小哲〜ところで、斎藤さんは食べるだけじゃなくて、ラーメン屋をプロデュースしたこともあるって聞いたんですけど。

斎藤〜ええ、何店かプロデュースしたことがあります。でも、私の場合は地域の食材を活かしたラーメン作りがしたかったんです。

小哲〜ようするに、「郷土料理」というコンセプトで地域のラーメンをつくろうとしたわけだ。それもあって東北中を食べ歩いていたと。

06120803.jpg斎藤〜ええ。でも私が食べ歩いているのは、どこそこのお店がおいしいということよりも、その地域のラーメンの特徴は何か、ということが一番の興味なんです。基本的には、民俗芸能の調査時に行った時に、その土地のラーメンも食べ歩くわけです。そうすると、いわゆる最近はやりのご当地ラーメンとは違って、○○ラーメンという名前はついてないけれども、その地域ごとに特徴のあるラーメンが沢山あります。例えば、まだあまり知られてはいないけれども、山形県の酒田ラーメンのようなレベルの高いものがあちこちにあるので、そういうのがすごく面白いですね。

一杯のラーメンから土地の文化や人間まで見えてくる

小哲〜なるほどね。それぞれの土地の味が生かされたラーメンが各地にあるわけで、それを一律の価値観で単に美味しいまずいを言うのではなくて、とにかく食べてみる。そうすると、たかが一杯のラーメンであっても、その土地の文化や人間まで見えてくるわけだ。あの、よくまずい店に入っちゃうことってあるでしょ。僕は、そういう場合は、もうラーメンの味がどうだこうだというのは諦めて、その店のオヤジの顔とか、古びた店の作りとかをストーリーとして楽しむんですね。ラーメン以外のところを味わうってわけで、けっこう懐かしかったりもして、ま、いいかってことになっちゃう。

斎藤〜私もね、古くて汚い店って好きなんですよ。なんていうか、居心地がいい。

小哲〜そうそう、いい具合に古びていて、もうワビの世界でね。そんな所で食べるラーメンは、もう美味しいまずいじゃない・・・。おっと、ちょっと話がそれてしまった。さて、そこでなんですけど、これから青森県を回るにあたって、青森の地域性がよく出ていているラーメンにはどんなのがありますか。

斎藤〜そうですね、例えばですね、青森県にはいろんな地域があるんですが、スープの出しに焼き干しを使ったり、あるいは煮干しを使ったり、近くでとれた真昆布を使ったり、あるいは、青森県なのに函館から消えてしまっ昔の函館ラーメンの原型が生きていたり、いろんなものがあるんですが・・・・・

小哲〜おっとっと、じゃあ、その続きは行ってからの楽しみにしましょう。

つづく...

第8回 日本全県ラーメン巡り その2

青森県から始まった「日本全県ラーメン巡り」、最初に訪れたのは、標準的な青森ラーメンの味を知るべく青森市内の「凡蔵」という店。煮干し風味のさっぱりスープは、小哲によれば、関東のうどんや蕎麦の汁をほうふつさせるというのだが・・・・・・。いつもの様に、この基調トークを踏まえ、塾生諸君の意見や感想を、ブログで大いに発言してほしい。


第8回 発言テーマ
1. キミにとっての煮干し出しラーメン。
2. 生まれ故郷の味とラーメンの味との関係
3. キミの故郷のお雑煮とラーメンのスープとの類似性。

※発言テーマは上記に限らず広く考えて結構です。
  今回の基調トークとの関連で自由に発言して下さい。


06121300.jpg●店データ
「凡蔵」 
住所 青森県青森市本町5−10−14
電話 017−735−5795
営業時間 18:00〜翌2:00
定休日 日曜日
 
 
 
 
支那そば&手打ちラーメンが青森の標準

小哲〜斎藤さん、いよいよ青森のラーメンを食べるんですけど、この「凡蔵」という店は、「焼きとり」なんて看板も出ていて、ラーメン屋というよりも居酒屋っぽいですね。でも、ここが斎藤さんおすすめの青森ラーメンの店なんですね。

斎藤〜ええ、もちろん青森でもラーメン屋で焼きとりを出している店は珍しいです。でも、この店はですね、まずは一般的な青森のラーメンがどういうものなのかが分かるような、標準的な青森ラーメンの店ということでお連れしました。

小哲〜最近は青森でも、トンコツラーメンや東京風のもが増えているみたいなんだけど、この店は青森のスタイルを守っているってことですね。

06121303.jpg斎藤〜そうなんです。で、この店はその中でも煮干しのだしが強い。それと青森県では、一般的に支那そばとか中華そばと呼ばれるものと、手打ちラーメンというものと二種類あります。支那そばというのはちぢれた細麺で、青森ではこれが標準タイプです。それと、青森にはもう一つ手打ちラーメンと呼ばれているものがあって、これは少し太めの手打ち麺が使われています。

小哲〜ほんとだ、確かに店の品書きには、支那そばと手打ち麺と二つ並んで書かれていますね。

斎藤〜ぞれじゃあ、さっそく食べてみましょうか

煮干しの匂いが強いさっぱりスープ

小哲〜最初に頼んだ支那そばが出てきました。なるほど、麺は細くて縮れています。スープは煮干しの匂いがとても強いなあ。でも、鶏の出しも使っているから、うまくまとまっている。それと、脂がほとんどなくて、とてもさっぱりしていますね。これ、関東の人間にとっては、ラーメンというよりも、うどん屋さん、おそば屋さんのおつゆですね。すごくさっぱりしてる。いま、東京ではトンコツとか脂こってりのが流行ってるけど、こういう昔風のシンプルなのもいいなあ。具としては、煮豚にメンマと刻みねぎ。それと、このお麩が入っているってのが不思議ですね。お麸の入ってるラーメンは、僕は初めてです。青森のラーメンはみんなお麩が入ってるもんですか?

店主〜そうです、ほとんど入ってます。なるとかお麩ですね。

小哲〜なるとは、東京でも古い店は使っているけど、お麩っていうのは見たことないなあ。

店主〜おうどんにもお麩が入るんです。鍋焼きうどんでも。

小哲〜あッ、その流れだったのか。関東でも鍋焼きうどんならお麸がはいってますからね。

斎藤〜青森では戦後、そば屋でラーメンを始めたところが結構あって、そのラーメン屋さんのスープというのが、こういった煮干し系のだしだったんです。で、この店は特別煮干しだしが強いんですけれども、こういうのが青森ラーメンの一つの傾向です。で、元々は手打ちの中太麺だったんですが、戦後間もなく製麺工場ができて、こういう縮れた麺を開発したところがありまして、それからこのようなチリチリタイプの麺が普及するようになったんですね。で、結局、昔からあった手打ちと、二つタイプが共存するようになったというわけです。

小哲〜細くて縮れてるのは僕の好みなんだけど、この手打ちのほうも食べてみると、この麺もいいですね。サッポロラーメンだと太くてボソボソしてるけど、これは麺の水分の含み具合とかがちょうどよくて、すごくしなやかなのに、コシもある。なかなかいいですね。だしは煮干しと何が入ってるんですかね。

斎藤〜いくつかのタイプがあって、ここは煮干し、焼き干し、昆布、あとは野菜のエキス。動物系は鶏ガラが少し入っていますね。手打ちラーメンは太いといっても、ごく太というより、ちょっと太めでコシがあって、これも縮れていて、スープはいま言った、焼き干し、煮干し、鶏ガラ。やっぱりそば屋さんのおつゆに近い感じがします。

お雑煮とラーメンのスープは似ているかもしれない

小哲〜これにお餅を入れたらお雑煮になるなあ。関東でもかつおじゃなくて、鶏の雑煮ってあるんですよ。

斎藤〜ええ、関東のラーメンて、関東のお雑煮に近いじゃないですか。例えば、東京のラーメンは東京のお雑煮に近いでしょう。鶏とかつおだしの。もともと昔の東京ラーメン。ラーメンというより中華そばっていう感じの。これもそれと近いんだけれども、これはこの地域のお雑煮のタイプなんです。

小哲〜これもお雑煮タイプ? そうなんだ。

斎藤〜基本的にお雑煮とラーメンは似てるのかもしれない。

小哲〜そうか。このへんだと正月食べる雑煮はこういうおつゆ?

斎藤〜ただ、青森のお雑煮はもっと濃いめですね。

小哲〜でも、味つけは醤油で?

店主〜醤油です。醤油だけども、あっさり系じゃないですね。わりかしドロッとしてます、青森のお雑煮は。

小哲〜だしは焼き干しを使うんでしょう。

店主〜もちろん焼き干しも入ります、昆布も入れます。あと、鶏ガラじゃなくて、鶏肉を入れますね、骨付き肉とか。どちらかといえば、きりたんぽ鍋にお餅を入れたのが青森のお雑煮ですね。東京のお雑煮は青森の人は物足りないと思う、あっさりしすぎてて。

小哲〜ああ、そんなに濃いんですか、青森のお雑煮は。

店主〜濃いですね、汁そのものが濃いから。これよりもうちょっと濃いと思います。そこの家庭、家庭で違いますけどね。わが家はどちらかというときりたんぽ系で。

小哲〜あれ?きりたんぽって青森もあるんですか? あれは秋田でしょ?

店主〜秋田ですけど、好みはあっち系に似てるので好んで食べます、きりたんぽ。

小哲〜そうか、お雑煮はきりたんぽ鍋に近い味だと。で、ラーメンにもその流れが入ってるってわけだ。だしだって同じだもんね。

店主〜秋田のラーメンは食べたことないんですけど、きりんぽは結構食べます。

小哲〜僕ね、ここのラーメンは個人的に好みですね。そして、最近、関東では、具がゴテゴテ入っていたり、背脂でギトギトのが多いけど、こういうシンプルなのは、なにかホットするな。それと、焼き干しの香りもね。これが青森の標準的な形なんですかね。

斎藤〜まあ、一つの傾向だと思ってください。

06121302.jpg小哲〜焼き豚も、青森はこんな感じですかね。

店主〜焼き豚に関しては、ラーメン屋さん、ラーメン屋さんで全く違います。

斎藤〜支那そばって書いてるところは、こういうタイプのチャーシュー。

店主〜味がしみやすくできているところと、ごてごてしてるところとありますね。

小哲〜使う肉も違うからね。最近はバラをぐるっと巻いたやつで脂の多いのが結構流行ってるからね。昔は東京もこういう肩ロースの焼豚が普通だったけどね。どういうわけか、ある時からコッテリ系にエスカレートしていった。

青森の人間には青森のラーメンが一番
              
小哲〜お客さん、青森の方ですか。よそのラーメンと比べて青森のはやっぱり体に合いますか。

店主〜青森のラーメン美味しいですよね、東京のより。

小哲〜東京よりもおいしい? たとえば、どんなところが?東京のって最近は脂ギトギトのが流行ってるんですよ。

客1〜そういうのはここにはないのでわからないけど、シンプルなのが。

客2〜酒飲んだあとはこういうのがいい。

小哲〜そうだな、お酒飲んだ後はね。でも、まだ早いですよ?

店主〜早い方は5時ぐらいから飲んでますから。

小哲〜そうか、夜のこの時間は、もうお酒を飲んだあとなんだ。

店主〜そうなんです。ですから、この界隈に来るお客さんはこってりしたのは食べないですね。飲んだ後だから。

小哲〜こってりしたのも、あることはあるんですか。

店主〜あります、あります。とんこつ置いてる店もありますね。

斎藤〜元来はこういう傾向なんですね。最近は東京風のラーメン店が進出してきたり、まねして始めるところもあって。でも、大体青森の人は、どこそこのご当地ラーメンてテレビとかで紹介されるでしょう、でも、そんなものより青森のラーメンの方がおいしいと思ってますよね。

店主〜飽きちゃうんですよ。食べるのは食べるんだよね、一応もの珍しさで食べるけれども。

小哲〜お客さん 戻るところに戻ってきたわけだ。

店主〜一時的に変わったラーメンが流行ることは流行るけど、結局、自分の好みに戻るんですよ。

小哲〜その好みっていうのは何なんでしょうね。鍋とか、子どもの頃からおばあちゃんやおふくろがつくったのを食べてたとか。でも、それって、自分の好みであると同時に、じつはその土地の好みでもあるんですよね。だから、結局そういう味が身に染み込んでいるってことなんでしょうね、ラーメンでも。

店主〜そうだと思いますね。

ラーメンは強い、郷土の味はもっと強い

小哲〜青森のこのへんだとなんだろう、その鍋は。

店主〜青森はじゃっぱ汁だよね。さんペい汁、塩であれ、味噌であれ。

小哲〜タラで作るやつね。

店主〜そうです、そうです。

小哲〜だけど、あっちのほうが、もっと具がこってりしてるよね。

店主〜でも、あっさり系だと塩味で。脂ののってる魚を使うときはこってりで味噌味にして。あれはお正月だね、ほとんどね。お正月、お酒飲んで、こってりしたのがほしくなれば味噌味のじゃっぱ汁。あっさりして喉ごしをよくしたければ塩の薄味で大根を入れたりね。

06121301.jpg小哲〜そうか、そういう普段の食べ物が背景にあるから、ラーメンにしても、こういうタイプのものが、青森の人の口に合うってわけだ。でも、青森だって昔はラーメンじゃなくてうどんを食べていたんでしょ。そこにある時ラーメンが入ってきて、若い人がみんなラーメン飛びついちゃった。

店主〜うどんもそばも昔はいっぱいお店あったんですけど、うどんやそばは自分の家で食べるのが多いから、お店に行って食べるっていうのがあんまりないんですよ。だから、最近はあんまり流行らないんだよね。

小哲〜じゃあ、外食で麺を食べるとなると最近はもっぱらラーメンで、しかも、昔から馴染みのある焼干しのような味つけが好まれたってわけですね。それにしても、ラーメンは強いなあ。ただし、青森を見ていると郷土の味も強いから、ラーメンのほうも青森風に変えられてしまっている。

斎藤〜そうですね、ラーメンはうどんやそばにはない味の強さがあるけれど、一方でそんなふうに土地の文化に合わせて自由に変化させ順応できるってところが、また強みなんでしょうね。

小哲〜その意味じゃ、ラーメンってやっぱり日本的ですよね、融通のきくところが。だから、どんどん進化してしまう。ところで、斎藤さん、次はどんな店に連れてってくれますか?

斎藤〜次はですね、下北半島の先端、大間にちょっと珍しいラーメンがあるので、行ってみたいと思います。

小哲〜大間といえば本州最北端で、マグロの一本釣りで有名ですよね。その最北端の町でも、やっぱりラーメンがあるわけだ。ウーム、やっぱりラーメンは強い。いや、それほどまでに日本人はラーメン好きだってことか・・・・・・・・・


つづく...

第9回 日本全県ラーメン巡り その3

青森市内から下北半島をひた走り、斎藤講師と小哲塾頭がやって来たのは、海峡の烈風吹きすさぶ大間漁港。のれんをくぐると、そこには函館ラーメンの伝統を今に受け継ぐというラーメンが待っていた。いつもの様に、この基調トークを踏まえ、塾生諸君の意見や感想を、ブログで大いに発言してほしい。

第9回 発言テーマ
1. キミにとっての塩ラーメン。
2. 自分の町の味、よその町の味。
3. キミの好きな麺の食感について。

※ 発言テーマは上記に限らず広く考えて結構です。
   今回の基調トークとの関連で自由に発言して下さい。

●店データ
「すみよし食堂」 
住所 青森県下北郡大間町上野 20-1
電話 0175−37−3170
営業時間 11:00〜21:00
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海峡のこちら側と向こう側

小哲〜いやァ、ついにやって来ました。ここは、下北半島の先端、マグロの一本釣りで有名な大間です。僕はずっと前に恐山までは来たことがあるんだけど、まさか、まぐろじゃなくてラーメンを食べるために大間まで来ようとは思ってなかったなあ。

斎藤〜いやいや、どーも、お疲れさまでした。ほら、海の向こうに山が見えるでしょ。あれがもう北海道ですから。

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小哲〜そうですか、本州の最北端で、目の前の海が津軽海峡ってわけだ。なぜかわからないけど、海峡って聞くと、何か胸にジーンと迫るものがあるんだな。霧の深い海峡があれば、背伸びして見る海峡、なんてのもあって、泣けますよね。おっと、そんなこと言っている場合じゃなくて、ラーメンですよ、ラーメン。で、さっそくですが、斎藤さん、わざわざこんな所まで食べにきたそのラーメンについて説明してくれますか。

斎藤〜はいはい。えーと、ここ大間は津軽海峡を挟んで函館側と下北半島側と、同じような食文化を共有している文化圏でして、ラーメンについても、北海道と下北半島の津軽海峡側と同じ塩ラーメンなんです。むしろ、函館は東京の影響で最近はだんだん変化してきていて、こちらの方が昔のスタイルの函館ラーメンが残っているというちょっと不思議な地域なんです。

小哲〜海峡をはさんでだけども、それはフェリーボートで往来があるということですか。

斎藤〜それもあるんですけども、もともと江戸時代から往き来があったんです。もっとさかのぼれば縄文時代にも。

小哲〜えッ、そんな時代から往き来があった?

斎藤〜ええ。縄文時代の遺跡も函館側と青森側と同じような様式の土器とか文化を持ったものが両方にあるんです。

小哲〜そうすると、食文化でほかにも共通するものが、ラーメン以外にもあるんですか。

斎藤〜ええ、クジラ汁とか。それから、正月や小正月に食べるものとか、いろんな点で共通しています。

小哲〜なんだか、海峡をはさんだ函館の飛び地みたいですね。で、ラーメンはどんな種類なんですか。

下北に今も残る函館ラーメン

斎藤〜基本的には、豚のげんこつ、それに昆布と、ねぎやしょうがなどの野菜が入り、濁らないようにだしをとった澄んだスープに、塩だけで味をつけるわけですけど、今日は大間らしい昆布を練りこんだ麺のラーメンを食べてもらおうと思ってます。

小哲〜昆布を練りこんだ麺というのは、昆布の粉末が混ぜられていると思うんだけど、それって、新潟のへぎ蕎麦に似てますね。あそこは、ふのりが入っている。

06122104.jpg斎藤〜ええ、だからスープが昆布と野菜で少し緑色になるんですね。ここ津軽海峡でとれる昆布は真昆布という種類で昆布の中でもだしが最も濃厚に出るものなんです。日高昆布とか羅臼昆布とか、利尻昆布なんかよりもずっとだしが出るんです。だしが強すぎて、京料理なんかでは嫌われるんですけれども、その昆布と野菜の色で、ラーメンのスープがかすかですが緑色になります。
 
小哲〜そうですか、たしかに昆布はだしを取るときに水に浸けておくとわずかに色が出ますもんね。しかし緑色になるってのは、すごいな。

斎藤〜じゃあ、早速店に入りましょうか。

ねばり昆布は大間の海の味

小哲〜いやァ、この店のメニューを見ると、ずいぶんいろんな種類のラーメンがありますね。しょうゆ、味噌、トンコツ、四川に、それからまぐろラーメンなんてのもあるぞ。

斎藤〜でも、「塩ラーメン」がいちばん最初に書いてあるでしょ。この地域は、函館と同じで、やっぱり塩ラーメンが一般的なんですね。あと、この「ねばり昆布ラーメン」というのが、この店で5年前から始めたもので、麺に粘り昆布を練り混んでいます。この地方ではねばり昆布と言ってますけど、いわゆるあらめ昆布のことですね。ねばり昆布は普通の真昆布と同じ場所に生えているんですが、これがあると昆布の生育がじゃまされるので、漁師はこれを.間引いてとってしまいます。で、そのねばり昆布の有効活用を考えて、ここのご主人が、地域起こしの意味もあって、土地の素材として使い始めたそうです。

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小哲〜さてさて、注文した「ねばり昆布ラーメン」が出てきました。なるほど、これがそのスープですか。でも、思ったほど色は濃くないですね。かすかに色づいている程度かな。上に乗っている具は、煮豚のチャーシューに、メンマ、ワカメと刻み昆布に、・・・・

斎藤〜その細く刻んだ昆布が、地元でねばり昆布と呼ばれているもので、一般的にはあらめと言ってるものです。

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小哲〜なるほど、で、あとはカニ足、刻みねぎ、それと、やっぱりここもお麸が入っている。青森ラーメンのお約束ごとってわけだな。

斎藤〜そう、青森はどこも麸が入ってますね。

薄化粧のラーメン

小哲〜で、まずはスープからゆきます。うーむ、豚と鶏ガラの澄んださっぱりしたスープなんたけど、かなり海草の匂いが強い。それと、けっこう、塩が立っています。塩ラーメンだってことと、脂も少ないから、よけい感じるんでしょうね。でも、港町だから、漁師さんにはこのくらいじゃないと物足りないのかもしれない。スープは、ワカメとかあらめが入っているから、ずいぶん海草の味がするんだけど、麺のカンスイの匂いも少し出ているなあ。でも、これも好き好きではあるか。

斎藤〜麺をよくかんで下さい。かんでいると、じんわりと昆布の味がしてきますから。

小哲〜フムフム、で、このモチモチ感が、昆布のねばりなんですね。でも、へぎ蕎麦ほどはプリプリしていない。

斎藤〜麺をよく見ると、黒い点が見えるでしょ。それがねばり昆布の粉です。

小哲〜でもね、斎藤さん、昨日食べた「凡蔵」のラーメンもそうだけど、このラーメンも、ずいぶんさっぱりしてますよね。とにかく、もはや函館から姿を消したような昔のスタイルの函館ラーメンが、対岸の下北半島の港町に残っているってのは面白いなあ。それとね、これ、東京人の偏見かもしれないけど、本州の最果ての町だから、もっとどん臭いラーメンを想像していたんで、びっくりです。ほら、厚化粧のオバサンが出てくるかと思っていたら、いきなり細面で薄化粧のおねえさんが出てきたって感じね。

斎藤〜なにを言ってんですか、青森美人って言うじゃないですか。

小哲〜おっと津軽人を怒らせるとあとが怖い。さて、斎藤さん、この次はどんなラーメンを食べさせてくれますか。

斎藤〜はい、次はこれぞ南部ラーメンという階上町のお店です。南部も美人ぞろいですよ・・・・・・・。


つづく...

第10回 日本全県ラーメン巡り その4

大間から再び下北半島を南に向かった小哲塾頭と斎藤講師は、青森県の東端に位置し太平洋に面した町、階上へ到着。斎藤講師によれば、もっとも南部らしいラーメンがこの町にある「煉瓦亭」で食べられるのだという。いつもの様に、この基調トークを踏まえ、塾生諸君の意見や感想を、ブログで大いに発言してほしい。

第10回 発言テーマ
1.キミにとっての煮干し顔ラーメン、とりブタ顔ラーメン。
2.自分の町の味、よその町の味。
3.キミの故郷のそばとラーメンのスープとの類似性。

※ 発言テーマは上記に限らず広く考えて結構です。
   今回の基調トークとの関連で自由に発言して下さい。

●店データ
「つるや別館 煉瓦亭」 
住所 青森県三戸郡階上町大字道仏字天当平1-49
電話 0178-88-3311(代表)
営業時間 11:00〜21:00

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小哲〜いやァ、大間から階上までは思ったよりも時間がかかりましたね。青森県と一口にいうけれど、こうやって車で走ってみると、高速道路がなくて一般道を走ってきたせいか、意外と広く感じます。さて、ここ階上は八戸市の南隣の町で、三陸海岸のいちばん北に位置し、ちょっと行くともう岩手県なんてすね。それと、これは僕たちみたいなよその人間にはわからないんだけど、青森県は津軽地方と太平洋側の南部地方と大きく二つの文化圏に分かれているそうですが。

八甲田山の東と西

斎藤〜ええ、ちょうど八甲田山をはさんで、その東側の南部地方と、西側の津軽地方に分かれ、同じ青森県であっても、言葉も文化も異なります。

小哲〜実際どのくらい違いがあるんですか。

斎藤〜まず、言葉のほうは方言がまったく違うのと、しゃべり方も津軽人は機関銃みたい話しますが、南部の人は津軽から見ると、なぜもっとはっきりしゃべらないんだと思うくらい言葉数が少ないですね。それから人間の気質も違います。津軽のほうが、なんていうか人の心の中にずかずか入ってくる感じなのに対し、八戸のほうは慎ましい。食べ物に関していえば、南部は粉を使った料理が中心で、津軽は稲作ができたので米が中心です。

小哲〜じゃあ、ラーメンにも違いはありますか?

斎藤〜ラーメンはですね、南部では煮干しが使われているのが一番の特徴と言えます。

小哲〜津軽のように焼干しじゃなくて、煮干しなんですか。

斎藤〜ええ、ここはすぐ近くに煮干しの産地があるんです。だから、煮干しが使われてます。あとは、鶏ガラも使い、材料だけだと津軽と似ていますが、微妙に津軽とは違います。材料の違いではなく作り方の違いですかね。

小哲〜津軽のラーメンが、最近は焼干しが高くて使えないので煮干しを使うようになったという話だったから、よけい違いがなくなっちゃうのかな。

斎藤〜それとですね、いま、八戸市内のラーメン店が40数軒集まって「八戸ラーメン」としていろいろ盛り上げようとしています。でも、それには属してないけれど、最も八戸らしいラーメンが食べられるのがこの店です。

小哲〜メニューを開いてみると、ここはラーメン屋というよりは、宴会料理や仕出し料理もやっていて、立派な料理屋なんですね。

斎藤〜いまは、この店は「つるや別館 煉瓦亭」となっていまずが、もともとは40年くらい前に食堂として店を始め、ラーメンを出していたそうなんです。それから民宿も始め、さらに現在みたいな料理屋へと大きくなった。ですから、このラーメンこそが、この店のルーツと言ってもいいんでしょうね。ご主人の話だと、こちらのお母さんが食堂を始めた時に、今と同じしょうゆラーメンを作っていて、作り方モ、味もまったく当時と変わってないそうです。だから、わざわざ八戸から通ってくる客が大勢います。

小哲〜そうか、日本橋の泰明軒は洋食屋なのにラーメンが名物になっているけど、こちらは、ラーメン屋さんが宴会料理まで作るようになって、でも、看板料理のラーメンはちゃんと作り続けているってわけだ。えらいもんだな。

八戸ラーメンの伝統

斎藤〜さて、その醤油ラーメンが出てきましたよ。

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小哲〜なるほど、これがその40年前と同じ八戸のラーメンというわけだ。具はチャーシューと刻みねぎ、それにメンマとのりだけで、いたってシンプル。で、スープはあまりしょう油が濃くなくて、色も薄めだ。脂はほとんど浮いてなくて、焼豚の脂がかすかに光っているくらいかな。で、まずは、スープを一口飲んでみると・・・・・・・・・うん、すごくさっぱりしていてきれいな味です。ただし、煮干しのだしがぐーんと濃い。そして、麺は細めの縮れ麺。カンスイの臭みもないし、これ僕の好きなタイプです。

斎藤〜八戸地域のラーメンはしょう油味で、鶏がらと煮干し、昆布が基本なんですが、そのバランスが、多分この店が一番きれいにまとまっていると思います。

小哲〜そうですね。さっぱりしていると感じるのは、要するにそれぞれの味がケンカせずにきれいに一つにまとまっているからですね。だからインパクトとかパンチとは無縁のラーメンで、とても素直でおだやかな味になっている。

南部では蕎麦だしにもにんじんが入る

斎藤〜スープは煮干し出しに、鶏ガラ、鶏皮、それに昆布と野菜でとっているんですけど、野菜はねぎやしょうがなどの香味野菜は使わずに、にんじんだけだそうです。

小哲〜へえ、野菜はにんじんだけなんだ。それで、スープの味がおだやかなのかなあ。

斎藤〜にんじんはですね、この地方では蕎麦のだしにも使うんですよ。

小哲〜えッ、蕎麦の出しにもにんじんを使うの!東京じゃ考えられないなあ。

斎藤〜にんじんは、昔は味噌汁のだしにも煮干しと一緒に使ったといいますから。ですから、こちらのお母さんが食堂を始めた時は、ラーメンを作るのにも、昔のやりかたでやってたんですね。

小哲〜そうか、ということは、味噌汁とも共通するところがあるわけか。

斎藤〜いやいや、それだけじゃないですよ。この地方の郷土料理でいちご煮というのがあります。うにとアワビの入った汁なんですが、そのだしも煮干しでとっています。他にも、南部地方の汁ものにひっつみとか、せんべい汁というものがありますが、どれも煮干しと、鶏、それに昆布が基本です。

小哲〜なるぼとね、こっちは鰹節文化ではなく、もともとが煮干し文化というわけだ。

斎藤〜八戸に白銀という地域があって、いわしがたくさん上がります。で、その浜で天日干しのとても質のよい煮干しを作っているので、この地方では汁ものは、鰹節ではなく煮干しを使います。

小哲〜つまり、ごく自然に煮干し、鶏、昆布の基本だしがラーメンにも移入されたってわけだ。

斎藤〜どうですか、このスープ煮干しは強いですが、ぜんぜん臭みはないでしょ。

煮干し顔が好きか、とりブタ顔が好きか。

小哲〜うん、でも、強すぎるせいか、僕にはかすかに臭みが感じられる。ただ、鰹節とは違うこの荒々しさが煮干しの持ち味ではあるから、まあ、好みの違いなんでしょうね。それも、個人的というよりも土地の好みなんだと思う。でも、このスープは飲んでいくうちに体になじんでくる感じで、後を引くなあ。

斎藤〜前に私がラーメンの本を書いた時に、取材で一日中ラーメンを食べ、もう食えないとこまできていたのに、このラーメンだけは、最後になってもなんなく平らげてしまったんです。

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小哲〜うん、素直な味というか、きれいな味をしていますからね。いま、ふと思ったんだけど、このラーメンは煮干しの味が前面に出ていて、その魚くささを抑え味に丸みをつけるために鶏のスープが使われている。一方、昔の東京系のラーメンはちょうどこの逆で、鶏がらや豚の脂くささを抑え、味に深みを出すために魚だしが隠し味として使われている。素材はそれほど違わないのに、動物系が前面に出るか、魚系が前面に出るかで、まったく正反対の味になってしまうわけで、煮干し顔か、とりブタ顔か、土地の好みがじつに分かりやすい形で表れている。で、そんなふうに土地の好みに柔軟に変化し、また、変えられても問題ないってところが、ラーメンの強みであり面白いところですね。大げさかもしれないけど、ラーメンというのは、土地の文化と人間を映す鏡でもあるわけだ。

ラーメンは最も過激な郷土料理

斎藤〜まったくそうですね。同じ青森県の中でさえ、南部の人が津軽ラーメンを食べると、あんなしょっぱいものは口に合わないといい、津軽の人にとって南部のラーメンは甘くて物足りないというくらいですから、ラーメンほど土地の好みがはっきりと出てしまう食べ物は他にないですね。で、これを日本全国でみれば、いったいどれだけの種類のラーメンが、その土地の好みに合わせてできあがったかですよね。

小哲〜うーむ、そう考えると、最近の創作ラーメンもいいけど、長い年月をかけてそれぞれの土地で淘汰されながら続いてきた地ラーメンには、伝統的な郷土料理と同じような、説得力がありますね。

斎藤〜私は民俗芸能から、郷土料理にも興味を持つようになったんですけど、そんなわけで気がついたらラーメンという最も過激な郷土料理にはまってました。

小哲〜さてと、斎藤さん、この次はどこへ行きますか。

斎藤〜次はイノシシと行きましょうか。

小哲〜なに、煮干しの次はいきなりイノシシですか。それも、ずいぶん過激なんじゃないですか。よーし、じゃあイノシシ、行きましょう。


つづく...

第11回 日本全県ラーメン巡り その5

北三陸の階上から青森県を横断してやってきたのは、日本海側の鯵ヶ沢。弘前から岩木山を左手に眺め4、50分行くと、りんご畑のはずれにいのししラーメの店「竹浪食堂」の看板が出ていた。津軽の地で、なぜ「いのししラーメン」なのか、小哲と斎藤講師は期待に胸と胃袋をふくらませ車を降りた。いつもの様に、この基調トークを踏まえ、塾生諸君の意見や感想を、ブログで大いに発言してほしい。

第11回 発言テーマ
1.キミがいちばん美味しいと思う、だしの種類。
2.キミの知っている、珍しいだしを使ったラーメン
3.地の素材を使ったラーメン

※ 発言テーマは上記に限らず広く考えて結構です。
   今回の基調トークとの関連で自由に発言して下さい。

●店データ
「竹浪食堂」 
住所 青森県西津軽郡鯵ヶ沢町立石字大平199-300
電話 0173−72−1526

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小哲〜斎藤さん、ここへ来る前に鯵ヶ沢の海のほうへ行ったでしょ。あの時つくつぐ思ったんだけど、青森の人は確かにラーメンが好きですね。だって、なんにもない道路沿いに、他に食堂はないのにラーメン屋だけはある。車で走りながらあんまり頻繁に目につくので数えてみたら、10軒ちかくあったんで、びっくりしました。

斎藤〜そうですね、ほんとうにラーメンをよく食べます。青森では神社の縁日で屋台のラーメンが出るくらいですから、やっぱり好きなんですよ。

小哲〜縁日にラーメンってのは、珍しいなあ。関東だってみんなラーメンが好きだけど、縁日にラーメンが出るってのは見たことないですよ。麺類であるとしたら、せいぜいソースやきそばくらいだもんな。

斎藤〜だから、多少遠くても、みんな食べに行くんです。

小哲〜この「竹浪食堂」だって周囲はりんご畑だし、ずいぶん辺鄙なところにありますよね。関東でも最近は郊外の辺鄙な場所に店ができたりしているけど、まあ、それほどラーメンが人を引きつけるってことなんでしょう。ところで、斎藤さん、いのししラーメンについて、少し説明をしてくれますか。

斎藤〜はい、この店を選んだ理由は、伝統的な郷土料理とは直接には関係はないけれど、土地の素材を使っていることで、選んでみました。

小哲〜いのししが土地の素材ということですね。

青森の各地でいのししが飼育されている

斎藤〜ええ、青森はいのししを飼育しているところが沢山あって、個別に点在はするんですけど、一つの地域の中のあっちにもこっちにもという県はたぶん青森県だけだと思います。

小哲〜ラーメンとしては、いわゆる伝統のラーメンではないけれども、青森県の地の素材を使ってやっているという意味で、いってみれば地ラーメンですね。

斎藤〜そうです。青森県では、脇野沢とか今別、平内といったところでいのししを飼っていて、「竹浪食堂」もラーメン屋ではあるけれど、自分のところでもいのししを飼っています。

小哲〜自分のところでいのししを飼っているってはスゴイですね。野菜も自分のところでつくっていたら、完全な自家製ラーメンになる。

斎藤〜ただ、自分のところのだけでは量が足りないので、ここは脇野沢のいのししの骨と自分のところのいのししの骨を使ってスープをとっています。そういう意味で、青森県のいろんなところでいのししを飼育しているということもこのラーメンでわかります。

小哲〜前に長野の山奥のほうで野生のいのししや熊を食べさせる店に行ったことがあるけど、あそこは、鍋にしたり、焼いたりで、ラーメンまては作ってなかったな。でも、いわゆる一般的な豚と違って、脂が臭みがなくて美味しかった。いのししでラーメンを作ろうというのも、やっぱりラーメン好きの青森だからかな。

甘い香りとコクが持ち味のいのしし

斎藤〜さて、いのししラーメンの登場です。

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小哲〜なるほど、これがいのししラーメンですか。だしをいのししの骨でとっているというだけだから、とくに見かけが変わっているわけではい。具はチャーシューの代わりにいのししの肉を焼いたやつが乗っていて、他には刻みねぎとメンマという、いたってシンプルな盛りつけです。スープは濁らさずに透明に作ってあって、豚みたいな臭さもない。むしろ、ほんのりと甘い香りがしますね。

斎藤〜いのししの骨を使ってスープをとるのに、よく、くたくた煮てトンコツスープみたいにしてしまう人がいるんだけど、ここはゆっくり濁らせないように煮てとっているので、いのししの甘味というか、うまみが出ていますね。だしはいのししの持ち味を出すすために香味野菜等は入れずに、しょうがだけを使っているそうです。雑味もないですよね。

小哲〜そうですね、この雑味のない甘いかおりとうまみがいのししならではなんでしょうね。それで、麺はというと、これはやっぱり青森の標準的なタイプなのかなあ。中細で縮れている。

斎藤〜麺は、青森の場合大きな製麺会社があって、それを使っている店が多いんです。だからどうしても似てしまうし、まだまだ改善の余地があると思います。青森には自家製麺の店もけっこうあるんですがね。ところで、そのいのししの肉のほうはどうですか?

小哲〜うん、この肉がいのしし独特のうまみとコッテリ感があって、いいですね。いのししの肉ってよくかんでいると、じんわりと独特のうまみが広がってくるんですよね。豚よりも水っぽくないし、肉に赤みが強いぶん、味も濃くてこってりしていますよね。

素材がよければ、よけいな材料は必要ない

斎藤〜こちらのご主人によれば、豚は1年経つと肉が硬くなるけど、いのししは5、6年経っても硬くならないそうです。

小哲〜もともと豚よりも肉質がしかりしているけど、それ以上には硬くならないということなのかな。それにしても、よくいのししをラーメンに使いましたよね。

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斎藤〜こちらのご主人の竹浪さんは元々は横浜に住んでいたんですが、昔、新宿の「栃木屋」という店でよくいのししを食べ、肉だけでなくいのししの骨でとったスープのうまさも忘れられなかったみたいなんです。それで、その後、1982年に現在の場所に移ってきてから、いのしし牧場をはじめ、最初はいのしし鍋の店として始めたのですが、やがてラーメンも出すようになったそうです。ただし、いのししは豚と違って一回に生む子供の数も少ないしストレスに敏感なので、飼育もむずかしい。それと3年育てないと出荷できないので、コストもかかり、生産効率も悪い。
だから、脇野沢やその他の提携牧場から豚の骨が入手できるようになって、ラーメンが作れるようになったそうなんです。

小哲〜ふつう鶏や豚でも、餌や飼育環境が悪くて不健康になったりすると、脂が臭くなるんだけど、野生のものは飼育したものと違って、そういうことがないですよね。だけど、いのししは飼育されたものでも、あまり臭くならないみたいだな。そういば、中国に金華ハム用の豚で金華豚っているでしょ。あれがいま神奈川県の御殿場のほうで、もともとは日中友好で譲り受けたものが、飼育されていて、この肉を以前に食べたことがあるんですけどね。これがちょっとバラの花みたいな甘い香りがしてうまいんですよ。いい香りがするところが、ちょっといのししと似ているんだな。

斎藤〜結局、素材がよければ、他に野菜を入れたり、色々入れる必要がないんですよね。

小哲〜そうですね。要するに、素材としての豚や鶏が不健康に育ったものだと肉質が悪く、特に脂身が臭いので、どうしても素材の持ち味よりも、臭みを消すためにいろんな材料を重ねて使うようなっちゃうんですよね。 

斎藤〜このラーメンも格段ここの親父さんがこだわりの作り方をしているということでもないんですが、丁寧でセオリーどおりに作っているから、素材の味がきちっと出ています。

小哲〜そう、それが料理の基本だと思うのね。素材があって、どういうふうにしたらおいしいか、順番に必要なものだけ入れれば美味しくできちゃうわけだから。ラーメンだってまったく同じなんですね。ところで、ラーメンのだしというと、今のところ、動物系では豚、鶏、牛、くらいなんだけど、こうしてみると、まだ他にもありそうですね。

斎藤〜鴨なんかもいいんじゃないですか。

小哲〜うーむ、それならばいっそのこと、アイガモ農法のアイガモで作ったアイガモ南蛮ラーメンなんて、どうかな。おっと、イカンイカン、なんだか自分でラーメン屋を始めたい気分になってきた。さて、斎藤さん、この次はどこへ行きますか。

斎藤〜次はですね、秋田県へ行きたいんですが、ここにも隠れた名店があります。乞うご期待ですね・・・・・・。


つづく...

第12回 日本全県ラーメン巡り その6

まだまだ食べ足りない青森のラーメンに名残を惜しみつつもやってきた秋田県。まず最初に訪ねた十文字町で、小哲塾頭と斎藤講師はあらためて郷土ラーメンの素晴らしさを再認識するのであった。いつもの様に、この基調トークを踏まえ、塾生諸君の意見や感想を、ブログや美味しんぼフォーラムで大いに発言してほしい。

第12回 発言テーマ
1.キミが毎日でも食べたいラーメンとは。
2.キミにとっての故郷のラーメン、心に残るラーメン。
3.醤油は濃いほうがいいか、薄いほうがいいか。

※ 発言テーマは上記に限らず広く考えて結構です。
   今回の基調トークとの関連で自由に発言して下さい。


●店データ
「丸竹食堂」 
住所:秋田県横手市十文字本町 7-1
電話:0182−42−1056
営業:11:00〜19:30
定休:木曜日

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小哲〜さて、なかなか青森県を離れたがらない斎藤さんを無理やり引っぱって、ついに県境を越えて秋田県にやってきましたが、あいにくの雨模様です。でも、斎藤さん、青森と違ってなんとなく山々の色がのどかで秋田っぽくなってきたと思いませんか?これって気のせいかな。

斎藤〜はい、もちろん気のせいだと思います。

小哲〜。そうか、やっぱり、気のせいなんだな。でも、晩秋の紅葉がきれいですね。それじゃあ、これから行く店について、簡単に説明してくれますか?

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斎藤〜これから行くのは、横手地方の中の十文字という町にある「丸竹食堂」です。特徴は醤油ラーメンなんだけど、醤油の色が薄いんですね。で、かなりすっきりしたラーメンなんですが、これは丸竹食堂だけでなくこの近辺にあるいくつかのラーメン屋のどれもが同じような傾向で、これが十文字のラーメンの特徴といえます。で、じつは横手とか大曲とか角館とか、もうすこし南のほうへゆくと、このへんはもう隣町ごとに、それぞれいろんな特徴のある地域なんです。ほんとうはぐるっと回りたいところなんですが、秋田の中でももっとも特徴のあるのが十文字ラーメンなので、どこか一つということで「丸竹食堂」を選びました。

東北一帯に広がる煮干し文化

小哲〜なるほど、十文字ラーメンね。なんか響きがいいですね、十文字っていうのは。で、ダシに関してはどんな特徴があるんですか?

斎藤〜だしでいうと、いままでのところとほとんど変わりません。

小哲〜ということは、煮干し、とりがら、が主体ですか。県が変わったから即食文化も変わるってもんじゃない。

斎藤〜そりゃ、そうです。県という行政区分とは別の、歴史的な文化圏がありますから。

小哲〜ようするに、青森県が、いまだに南部藩と津軽藩という全く異なる二つの文化圏に分かれているように、県という明治以降の行政区分よりも、それ以前の江戸時代からの藩ごとの文化伝統のほうがしっかりと生き続けてるってわけだ。

斎藤〜私は、青森県でも津軽人であって、やはり方言も気質も南部の人とは違うわけですからね。

小哲〜そのへんもね、僕みたいな東京で育った人間にはわかりにくいことなんですよ。でも、たかがラーメンなのに、日本という国の地方文化の奥深さが見えてきておもしろい。しかし、いずれにせよ、東北のかなり広い地域で煮干しが使われているといことですね。

斎藤〜ええ、青森から、秋田、山形へ行くわけですけど、ずーとこういう傾向なんです。これは断言しますが、決して私がですね、煮干しのラーメンが好きだから、そういう店を選んでいるということではないんです(笑) 。

小哲〜なるほど、なるほど、了解しました。ところで、ふと思ったんですけど、青森もそうだけど、こっちのほうもラーメン屋なのに「○○食堂」というのが多いですよね。おそば屋でラーメンを出していた場合と、「○○食堂」というようにかつ丼とかカレーライスとと一緒にラーメンも出しているのと、二つのタイフがあって、ま、それが昔の形だったんだとは思うんです。関東の場合だと、昔は中華料理屋でラーメンを出すというのが多かったですね。

斎藤〜石巻なんかは、中華料理店のラーメンが、煮干しを使った地域のものになっていますよ。

小哲〜エッ、ということは普通の中華のスープとは別に、煮干しを使ったラーメン用のものも作ってあるわけだ。それは、珍しいですね。そうそう、これも車で走っていて気がついたんだけど、このへんは中華料理屋さんをぜんぜん見かけませんね。関東だったらどんな町にもレバニラ炒めとか肉野菜炒め程度の料理を出す小さな中華料理があって、そこにラーメンがおいてある。

斎藤〜東北でも、大きな町にゆくと、あるにはあるんですけどね。

小哲〜そういえば喜多方でも食堂という名前のついたラーメン屋が多かったですね。おっと、斎藤さんここが「丸竹食堂」ですか。ラーメン屋にしてはずいぶん立派な店構えだけど、やっぱり「食堂」って書いてありますね。

斎藤〜そう、食堂なんですけどね、でも、のれんの横に中華そば専門店て書いてありますよ。

小哲〜へえ、ラーメン屋にしてはずいぶん立派ですよね。それと、玄関前はきれいに掃除がされ水も打たれている。そして、灯籠や植木で飾られている。なんだかラーメン屋とは思えないくらいきれいだ。そうか、いま気がついたけど、「中華そば屋」よりも「食堂」のほうが、飲食店としては格が上なんですね。

この地ではラーメンではなく中華そばと呼ぶ

斎藤〜壁の品書きを見てください。いろいろ並んでるけど、チャーシューメン以外は、全部「中華」となってますね。

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小哲〜なるほど、ここはラーメンじゃなく、いまだに昔風の「中華」なんですね。

斎藤〜冷やがけ中華というのがあるでしょ。ここは中華そばも特徴がありますけど、あの冷やがけ中華というのがまた独特で、いわゆる冷し中華ではなく、汁が冷たいんです。

小哲〜でも、やっぱり最初だから、僕は、基本の中華そばを注文しましたよ。

斎藤〜はい、その中華そばが来ました。

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小哲〜わぁ、ほんとうにスープの色が薄いですね。一見、塩ラーメンのようだけとけ、そうでもない。ちゃんと醤油の匂いがする。で、具は煮豚のチャーシューに、オオッ、やっぱり麸が入っている。そして、メンマと、刻みねぎ、のり、さらに、かまぼこが入っている。ウーム、関東だとなると巻きのところが、かまぼこと来ましたか。そこで、スープをすすってみると・・・・・・・・、いやあ、煮干しだしと鶏ガラなんだろうか、スープの味はとてもきれいにまとまっていますね。煮干しがでしゃばっていないし、かといって脂で味をまとめているわけでもない。かすかに浮いているのは、チャーシューの脂だけで、だから、脂にごまかされず、それぞれの味が素顔のまんま生きている。いやあ、うまいなあ。この細めで少し縮れた麺がね、個人的にいって、僕の一番好きなタイプなんです。カンスイの匂いもないし、じつに、うまいなあ。

北前船が運んできた薄口醤油文化

斎藤〜いいでしょ。この麺とスープが十文字の特徴なんです。だしは、煮干し、焼干し、それとかつお節も使っているそうです。それに、鶏ガラと昆布。それと、醤油が薄口醤油を使っているんですね。だから、関西の煮物のように汁の色が薄い。

小哲〜エッ、秋田でも薄口醤油を使うんですか?

斎藤〜地元で作っているんですよ。ここは雄物川を使って物資が往き来している場所だったので、そういう点で、当然薄口醤油が関西から伝わってきたんだと思います。。
 
小哲〜そうか、秋田県というとしょっつるが有名だけど、ちゃんと薄口醤油文化もあったんですかねえ。関西ならどこの家でも必ず薄口と濃口があるんだけども。
 
斎藤〜東北でも、このあたりは北前船による交易関係があったので、そういうのがあります。

小哲〜そうか、じゃあ北前船で京都とか関西の文化が来たってことですね。それがある地域では根付かなかったけども、ある地域の人たちには気に入られて定着し、その後ラーメンにもそれが使われた、と。それから、醤油もいいけど、この麺もいいですね。このへんの製麺所がいいのかな。煮豚もこんなにさっぱりしていいいのかなって感じ。

斎藤〜麺はここの自家製ですね。主人のおばあちゃんの話だと、昔は手で打っていたんだけど、いまは機械で自分のところで打っているそうです。この店を始めたのが昭和28年で、その前におばあちゃんは戦前からあった「まるたま」という駅前の店で働いていて、麺も味付けもそのラーメンが基本になっているとのことです。

小哲〜戦前からといえば、じゃあこれおばあちゃんが子供の頃から食べていたラーメンということなんですね。なんだか、歴史を感じますねぇ。そうそう、話がそれるけど、さっき店の前がとてもきれいに掃除されているっていったでしょ。そうしたら、店の中もね、隅々まで掃除が行き届いているんですよ。

斎藤〜お手洗いもとても清潔でしたよ。

小哲〜で、厨房を覗いてみたら、ここもやっぱりきれいに整頓されている。僕はね、こういうすべてのことが味に出ていると思うんだな。普通のレストランでも、ほんとうに美味しくて三つ星クラスの店は、キッチンがもうピカピカで片づいている。

斎藤〜そうですね、やっぱり料理人の姿勢というものは、作る料理にでてしまうもんですよね。

地域の人たちが慣れ親しんできた味だから、インパクトなんかいらない

小哲〜そう、だからラーメンの味も、特別なギミックを加えるでもなく、素直できれいな味になっている。最近は、脂を入れたり、だしを何種類も重ねたインパクトの強いラーメンというのが流行っているみたいなんだけど、ここのラーメンはその正反対なんですよね。

斎藤〜これこそ、その地域でずっと食べられてきた地のラーメンというのか、郷土のラーメンなんだと思います。ですから、刺激を強くして、それでお客さんを呼んで来る必要は全くなくて、ほんとにその地域の人たちが慣れ親しんできた味。毎日食べに来たりするわけですから、インパクトなんか全然要らないわけですよ。だから、どれもみんなものすごくやさしいです。

小哲〜そうですね。最近は、新しく店を始めた、客を集めなければいけない、話題性がなければいけない、それでインパクトが大事だというような発想が多いらしいんですね。そのために新しい脂を入れたとかいろんなものを使い、よそがやってない新しいことをやる。でも、それがエスカレートすると、いつしかものすごい厚化粧の化け物のようなものになってしまう。一番の問題は、本人が゙気がついてないってことだけどね。渋谷のヤマンバ娘たちみたいに。

斎藤〜その点、十文字のラーメンは、毎日食べても食べ飽きない素顔美人だと思います。やさしくて気立てもいいし・・・・・・。

小哲〜なるほど、今回はほんとにいいひとを紹介してもらってよかった。それじゃあ、次はどんなひとに会わせてくれるのかな、楽しみだな・・・・・。

第13回 日本全県ラーメン巡り その7

ラーメン屋一軒あたりの人口比が日本一という山形県。その中でも酒田のラーメンには北前船の歴史と、中国人コック直伝の技術が受け継がれている。一杯の酒田ラーメンから、斎藤講師の話は食材自給率にまで及ぶのだった。いつもの様に、この基調トークを踏まえ、塾生諸君の意見や感想を、ブログや美味しんぼフォーラムで大いに発言してほしい。

第13回 発言テーマ
1.キミが美味しいと思う麺のタイプは?
2.ラーメンの食材自給率についてどう考える。

※ 発言テーマは上記に限らず広く考えて結構です。
   今回の基調トークとの関連で自由に発言して下さい。


●店データ
「満月」
住所:山形県酒田市東中の口2-1
TEL:0234-22-0166
営業時間:11:00〜20:00
定休日:毎月2・12・22日、不定休

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酒田はラーメンの町

小哲〜酒田にやってきて驚いたんですけど、この町もラーメン屋が多いんですね。

斎藤〜意外だと思われるかもしれないけれど、ラーメン屋一軒あたりの人口比では、なんと山形県が全国一なんですよ。「酒田のラーメンを考える会」なんてのもあって、14店が参加しています。それ以外の店も含めると、酒田だけで42軒のラーメン店があるんです。

小哲〜その酒田で、最初にやってきたのが、ここ「満月」という店で、ここはラーメン以外にもワンタン麺があって、どうやらこっちのほうも人気があるみたいですね。

斎藤〜ここは、じつはワンタン麺が有名で、ご主人自身もワンタン麺に自信を持っていらっしゃいます。

小哲〜かなり昔からワンタン麺が人気だったようですが、酒田では他の店でもワンタン麺を置いているんですか?

斎藤〜ワンタン麺はいろんなお店にありますけど、でも、酒田の人に「ワンタン麺、どこに食べに行く?」と聞けば「満月」なんですね。

小哲〜なるほどね。それにもかかわらず、僕が注文したのは、やっぱりラーメンなんですね。

斎藤〜おかわりでわんたん麺を頼めば、いいじゃないですか。

小哲〜そうなんですけど、僕は斎藤さんみたいに5杯も10杯も食べられないんですよ。おっと、出てきましたよ、ラーメンが。ふーむ、このラーメンはずいぶん魚の匂いがしますね。

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酒田といえば煮干しの風味

斎藤〜それじゃあ、先に具材の紹介をしておきましょうか。えーと、ここはチャーシューは煮豚です。それが2枚のっています。それとメンマ。そしてネギ。ネギは長ネギを青い部分を含めて輪切りにしたものがのっています。具はそれだけ。麺は中細麺で、あまり縮れてはいません。

小哲〜じゃあさっそくスープからいきます。なるほど、煮干しが強いなあ。それと醤油の味もだしに合わせてなのか、かなり濃い目ですね。でも、こういうの、煮干しが強いか斎藤さん好みなんじゃないですか?

斎藤〜いやいや、煮干しだしは好きですけど、特にということではないです。でも、ここは煮干しが強いほうだと思うます。この次に行こうと思っている店があるんですけど、そこはもっと動物系が強いですね。同じ酒田でも、店によって煮干し系と動物系のバランスが微妙に違っているんです。

小哲〜いずれにせよ、酒田の人たちはごくあたりまえにラーメンというとこの煮干し系のラーメンだと思っているわけだ。ラーメンといっても、その土地によっていろいろなんですね。これ、横浜の家系とか東京の二郎ファンが食べたらなんて言うんだろう。

斎藤〜そうですね、感想を聞いてみたいですね。

小哲〜まったく対照的にシンプルですよね。で、もう一口スープをすすってみると、ああ、やっぱりかなり煮干しだしが濃いです。で、麺はというと、これも結構しっかりしています。かなりもちもちした感じですね。チャーシューは肩ロースなんだけど周りに脂がついている。だけど、煮込み方がかなり硬いな。このへんはみんなこうなんですかね。

斎藤〜いや、お店によりますが。ただ、バラ肉を巻いてとろとろにしたようなタイプのチャーシューはありませんね。

小哲〜最近、東京ではそういうのが多いけど、それって20年くらい前かから始まったんじゃなかったかな、僕の記憶だと。その前は、これと同じように肩ロースだった。

斎藤〜東北では昔からの店はそれはやってないですね。

小哲〜だから、これは伝統的なチャーシューなんだろうけど、煮方が浅いというか、まだ硬いですね。そういえば、これまで食べてきた店のチャーシューって、どこも、さっぱりというか、脂が少なく硬めのが多いですね。だから、チューシューを食べてるうちに、おつゆを追加して飲まないと口の中でモソモソしてきちゃう感じだな。

北前船と中国人コック

小哲〜ところで、酒田でラーメンを食べるのは、僕は初めてなんだけど、歴史は古いんですか。

斎藤〜酒田は北前船の港だったという関係で、明治以降、港町だったので移住してきた中国人がいました。その中国人の中で昭和の初期に中華料理店を開いた人がいるんですね。

小哲〜じゃあ、かなり昔からあったわけだ。北前船との関係は、もともと港をして栄えていた。そして、北前船の時代が終わったあとも港町として栄えていたとしても、中国人が来たというのは海からじゃなくて、やっぱり東京から来たんでしょうね。

斎藤〜関東大震災のあとに東京や横浜から移住してきた人が多いというふうに聞いています、その中の一人が昭和の初期に中華料理店を開いたらしいんですよ。で、そこに勤めていた女性の方が、その後、中国人が引き揚げていなくなったあとも、中華料理店を引き継いでやった。その中国人がもともとカンミョンという、これは太い竹の棒で打つ麺なんですけど、そのやり方で中華料理の麺料理を出していたらしいんです。その女性がそれを習い覚えていたので、カンミョンというやり方で麺をつくる酒田風のラーメンが生まれたらしいんですね。その後、暖簾分けしたり、それをまねしたり、ということでどんどんカンミョンというやり方の麺づくりが広がっていきました。

小哲〜カンミョンで麺を打つのは、横浜中華街の「徳記」がそうだったけど、それが酒田という町のラーメン屋で普通に行われていたとは、驚きですよね。東京じゃほとんど見かけませんから。

自家製麺があたりまえの酒田ラーメン

斎藤〜いまはカンミョン自体はやっていないお店も多いんですけれども、もともと、自分のところで麺を作るもんだということを酒田のラーメン屋さんは普通に思っているから、ほとんどの店が自家製麺です。製麺会社があって、そこから麺を持ってくるというのではなくて、機械は使っていたりしても、ほとんどのお店が自家製ですね。

小哲〜ほとんどって、どのくらいなんですかね。

斎藤〜8割以上ですね。

小哲〜エッ、8割以上!?そりゃスゴイなあ。この10年くらい、東京では意欲的な創作系ラーメン屋さんが、試行錯誤の末に、結局、自家製麺にたどりついてるんですよね。東京だって、その昔は自分の店で麺を打っていたのが、ある時代になって製麺屋さんができてからは、麺を外注するのが一般的にはなった。それにもかかわらず、この地域では、自家製麺というやり方をずっと守ってきたわけだ。そうすると、最近の店みたいに「うちは自家製麺です」って威張ってるのも妙な感じですよね。

斎藤〜そうですね、この地域では自家製麺であるのが当たり前ですから。どの店も、うちは国産小麦粉しか使わないんだよとか、国産小麦粉の中でもこれこれを使ってる、というところが他店との差別化で、自家製麺は当たり前なんです。

小哲〜東京にいると、意外とそういうのは知られてないんですよ。

斎藤〜それと、醤油。これも北前船の港町っていうのは、味噌屋さん、醤油屋さん、豆腐屋さん、大豆関係の加工業者が多いんですよ。なぜかというと、もともと背後に大豆の産地を持っているということもあったり、よその大豆産地から積み荷として大豆を積んで来たりしたわけです。そうすると、北前船の船頭が積み荷の1割は寄港した港町で売って、船の中で働いている水夫たちの生活費にあてていたんですね。で、積んできた大豆を売ったりした。だから、北前船の港町は、金沢も、富山もそうですけど、酒田でも、大豆屋さんとか、醤油屋さん、味噌屋さん、豆腐屋さんといった大豆関係の加工業者が非常に多いんです。酒田のラーメンは、酒田に醤油屋さんがたくさんあって、ラーメン屋さんも醤油だけは地元の醤油を使う。これもほとんど当たり前のことなんです。

ラーメンの食材自給率も日本一

小哲〜そういえば、この店の満月という看板の下に、マルジュウ醤油って書いてありましたね。あれが地元の醤油屋さんですか?

斎藤〜ええ、地元の醤油屋さんです。それから、豚も地元にいい豚があるので、それぞれ好みがあるでしょうから、例えば、庄内豚とか、別のお店で三元豚を使うとか。

小哲〜三元豚っていうのはどこのですか。

斎藤〜山形県の平田牧場で生産しています。

小哲〜県内産ですか。

斎藤〜ええ、山形にはとてもいい牧場がたくさんありますので、皆さんそれぞれ選んで地元の豚でチャーシューをつくっています。

小哲〜その他に地元産というのは?

斎藤〜ラーメンの中で食材自給率はどうなっているのかということを計算するとすごく高くいんです。例えば、ほかでは、醤油は大豆がほとんど輸入大豆でしょう。それから、麺もほとんどが外麦でしょう。そして、チャーシューの肉だって、もうみんな輸入物だったりすることが多いので、ラーメン一杯の自給率というのは、平均すると7%ぐらいなんだそうです。ところが、酒田のラーメンは、麺に使う小麦粉は国産のところが多い。醤油は地元の大豆を使っているし、豚も山形県産のものを使っていることが多い。ということを考えると、ラーメン一杯の中の自給率というのは、全国平均の7%に比べると、山形は非常に高いですよ。

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小哲〜いまの話だと相当高そうだ? 輸入ものは小麦粉くらいのもんでしょ?

斎藤〜いや、店によっては輸入小麦粉はほとんど使わないところもあるわけですから。

小哲〜すると、100%自給ですか。

斎藤〜かなり高い、100%に近いお店があります。そういうことを考えると、酒田のラーメンというのは、ほんとに酒田の地域の食べものなんです。

小哲〜そうですね。

斎藤〜いわゆるご当地ラーメンの中には、なんとかラーメンという名前はついているけれども、その中に入っているものはほとんど地元産のものはなかったりということが多いでしょ。それに比べると、酒田のラーメンというのは、アゴの焼き干しを使うとか、そういう象徴的なものもあるし、ほかの食材についても地元のものを使うことが多いというわけで、これこそまさに地のラーメンといっていいと思います。

小哲〜いま食材自給率という話が出たけれど、国内での自給率じゃなくて、県内での自給率ということですね。それはたいしたもんだなあ。そういう意味では、いわゆる「ご当地ラーメン」ではなくなくて、本当に「郷土ラーメン」だって言えますね。ラーメン屋密度日本一の県は、素材の自給率も日本一だったってわけだ。こりゃ、エライことだな・・・・・・・

第14回 日本全県ラーメン巡り その8

酒田で次にやってきた店は、かつて中国人コックが伝えた太い竹棒ならぬ鉄パイプで麺を打っているという。酒田では珍しくないというが、それはまさに、かつて「美味しんぼ」で究極のラーメンを作ったときに用いた製麺法ではないか。酒田ラーメンの質の高さにいよいよ期待が高まるのであった。例によって、この基調トークを踏まえ、塾生諸君の意見や感想を、ブログや美味しんぼ塾フォーラムで大いに発言してほしい。

第14回 発言テーマ
1.ラーメンの具はたっぷりがいいか、シンプルがいいか。
2.キミがいままでに美味しいと思った麺

※ 発言テーマは上記に限らず広く考えて結構です。
   今回の基調トークとの関連で自由に発言して下さい。


●店データ
山形県酒田市「三日月軒」
住所: 酒田市東中の口町8-1
TEL: 0234-22-7616
創業年 : 昭和42年
営業時間 : AM11:00〜PM7:30
定休日: 不定休


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酒田には棹麺(カンミェン)の伝統がある

小哲〜酒田は初めてなんですけど、まさか棹麺(カンミェン)を使ったラーメン屋が何軒もあるとは考えてもいなかったですね。もう今から20年ちかく前になりますけど、雁屋塾長がはじめて「究極のラーメン」を作った時の麺が、太い竹棹で打った棹麺(カンミェン)だったんですよ。その時たまたま中国から棹麺(カンミェン)作りの名人が横浜に来ていたので、その人にやってもらったんだけど、当時、横浜でも棹麺(カンミェン)式の麺を使っているところは珍しかったくらいですから。それが、酒田では昔からずっと店ごとにそうやって作っていたというわけでしょ。これは、僕はびっくりですね。

斎藤〜酒田にはここと同じ「三日月軒」という店が何軒かあるんですけど、同じように酒田のラーメンを代表するスタンダードなところで、「大来軒」というお店も何軒かあって、そこも棹麺(カンミェン)というやり方をしていますね。なかでも三日月軒はアゴの焼き干しを使うという特徴があるので、棹麺(カンミェン)というつくり方と、アゴの焼き干しを使うというのでこの店にやってきました。

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小哲〜さて、注文したラーメンが出てきたんですけど、具はチャーシューに、メンマと刻みねぎ、それだけで、いたってシンプルです。で、さっそくスープを飲んでみると・・・・・・・魚出汁の味がかなりします。ただし、そんなに飛びでてはいない、とても穏やかな感じがするのは、動物系の出汁とうまくバランスがとれているからですね。

斎藤〜使っている豚は庄内豚だそうです。

小哲〜山形県の地元の豚ですね。

斎藤〜出汁に使っているアゴの焼き干しも、酒田の沖にある飛島という小さな島でつくったものですね。

小哲〜ということは、出汁も麺もみんな地元産ってことがゃないですか。

斎藤〜小麦粉がどこのものかはまだ聞いてないんでわかりませんがね。

小哲〜で、この麺なんですけど、中細の縮れ麺で臭みはまったくない。ああ、よくかんでいると口の中に小麦の甘味が広がってきて、美味しいなぁ。斎藤さん、じつはこれは僕の好きなタイプなんですよ。魚出汁がもっと強いかと思ったけど、思ったほど出しゃばってないし、醤油も強すぎず、スープの加減がちょうどいい。斉藤さんとしては、もっと魚出汁がきいているほうがいいんじゃないのかな。(笑)

斎藤〜いやいや、これはこれで美味しいですよ。

小哲〜でも、やっぱりこの麺がいいですね。ただチャーシューが肩ロースなんだけどけっこう固いな。口の中でもそもそしてきた。これも昔風ですね。

斎藤〜あ、今、ちょうどお客さんがいないから、ご主人の話を聞いてみましょう。

酒田では竹から鉄パイプに棹麺(カンミェン)が進化していた

小哲〜こちらでは麺に棹麺(カンミェン)を使っているって聞いたんだすが、昔からなんですか?

佐藤(店主)〜うちは私で2代目ですが、ずっと変わらず棹麺(カンミェン)でやってます。

小哲〜棹麺(カンミェン)って普通は太い竹棹なんですが、こちらは竹棹ではなく鉄の棒なんですね。

佐藤〜元々は竹だったんですけど、竹だと軽すぎてつぶれないんですよ。

小哲〜竹だとぴょんぴょん跳びながら打ってますよね。

佐藤〜これは鉄パイプなんですが、梃子の原理で後ろからみるとしなってますよ。これでいいんです。栃木の佐野あたりはまだ竹でやってるところもあるっていう話は聞きますけど。竹の場合は軽すぎて落ち着かない。それと、酒田ラーメンの特徴は多加水の熟成麺なんです。ちなみに我々のケツで打つやり方でいくと、いまの時期だと47〜48%ぐらい入るかな。

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小哲〜エッ、そんなに。ちなみに、多加水じゃない普通の麺は何%ぐらいなんですか。

佐藤〜30%を切るでしょう。

小哲〜そんなに入るんだ。

佐藤〜普通の製麺の場合、ミキサーからすぐ圧延しますので、多少硬くてもなんぼでも延してくれるんですよ。うちらの場合には、延びないんですよ、鉄棒で何度やっても。それが一つ。それと、生そばなんかでもそうですけど、多加水の方がはるかにおいしい。だた、これの欠点は、日持ちがしない。それと伸びやすいんです。ですから、出前には不向きです、はっきり言って。伸びないようにつくることも可能なんです。ただ、麺としてのうまさは残念ながら損われるかな。昔は出前主体だったんです。どこの地域もそうだと思うんだけど、いまはほとんどが店に来るお客さんが圧倒的に多くなっていますので、うまさを重視したようなつくり方をしています。

小哲〜なるほど、昔は出前でも伸びないようにもう少し加水率を低くして。

佐藤〜ええ、加水を少なくして、グルテンをがっちりきかせて。

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自家製麺なら安くて美味しい麺が作れる

小哲〜小麦粉はどこのものですか、これは。

佐藤〜小麦粉そのものは国産と普通の純強力粉を混ぜて使ってます。 

小哲〜この色は鹹水でこの色になってるんですか。

佐藤〜そうです。鹹水はいまものすごい少なくなってますね。

小哲〜あんまり鹹水のにおいがしないですね。昔のはすごく臭かったじゃないですか。

佐藤〜そう。鹹水の質も悪かったしね。ちなみにこれはモンゴル鹹水なので、においはだいぶとれてますよね。

小哲〜においは少ない。全然気にならない。それと、熟成っていうのはどれぐらいの期間やるんですか。

佐藤〜最低3日。

小哲〜これで何日目ですか。

佐藤〜何日目だろう、1週間ぐらいなったのかな。

斎藤〜そんなにやったら色が黒くなりません?もっと黒くなると……、

佐藤〜いやいや、それは悪い小麦粉を使ってるからですよ。酒田のラーメンは、自家製麺比率がすごく高いんですよ。で、その理由として、一つは原価的なものもあるし、あともう一つは、スープに合った麺をつくれる。で、原価という面でいくと、いい粉を使えるんですね。ですから、1週間経ってもこの程度で済むんです。製麺屋さんは10グラム20グラム変わっただけで10円、20円変わっていくんです、買った場合に。実際の原価は数円なんですけどね。1袋当たり高い粉を使っても1個当たりにするとこれもまた数円で済む。そういうふうにしていってるもんで。

小哲〜手間はかかるけど、そのぶん満足のいくものが作れると。

佐藤〜手間は、毎日やってればこんなもんだと思えば。

小哲〜いやぁ、職人のカガミですね。客としては本当にありがたい。ところで、出汁なんですが、酒田はアゴ出汁が主なんですか。

アゴ出汁は昔は貧乏人は使えなかった

斎藤〜いや、煮干しが基本です。その中にアゴ、トビウオの焼き干しを使っているお店もたくさんある。全部がトビウオの焼き干しを使っているわけではない。昆布、煮干しなんです、基本的には。

小哲〜こちらは、煮干しとアゴ、それとも全部アゴですか?

佐藤〜全部アゴではないです。全部アゴでは出汁はとれないです。さっぱりし過ぎて、旨味もそれほど出ない。むしろ、和食のお店で昆布とカツオで純粋にきれいな出汁をとる手法があるでしょう。酒田も昔の良家ではお祭りとか催事があるときは、昆布とアゴ、トビウオだけで出汁をとったんです。

小哲〜それは煮物とかの出汁?

佐藤〜煮物しかり、そうめんしかり。いろんなものにね。そういう流れは昔からあったんです。ただ、いかんせん、昔からトビウオ自体が高かった。で、我々貧乏人は使えなかったんですよ、いくらおいしくても。それで煮干しの方に行ったんです。でも、いままたあらためてトビウオが見直されて。それと、トビウオの使い方そのものがわかってきたんですね。要するに、大量に使うもんじゃないです、あれは。48センチの寸胴に入れるのはせいぜい2尾ぐらい。

小哲〜えっ、そんなものなんですか。

佐藤〜そんなもんなんです。

小哲〜そうすると、どのぐらいの違いが出るもんですか、2尾入れたことによって。

佐藤〜味が丸くなります。

味には作り手の性格も出る

斎藤〜こちらのスープは一般的な酒田のお店に比べて、煮干しとか魚よりも少し動物系の方が強く出てますよね。これはどうしてそういうふうになったんですか?

佐藤〜どうしてっていうか、自分の好みの味を突き詰めていったらそういうふうになってきたんですね。動物系のだしは前日から煮るんですよ、仕事終わって。

小哲〜何を使ってるんですか。

佐藤〜動物系は一般的に普通の、ゲンコツ、あとは比内地鶏と普通の地鶏と、それから、豚のバラ軟骨、背脂はもちろん次の日なので、あとはモミジ。

小哲〜モミジも。

佐藤〜モミジも入れてます。モミジはかなり洗わないとね。これもまたクセが出やすくてね。

斎藤〜あと、昆布とか香味野菜、タマネギ、ショウガ、ニンジン?

佐藤〜もちろん入れます。

小哲〜それだけ入っていても味がうまくまとまってますね。

佐藤〜そうですね。それは結構時間がかかりましたね、ここまでなるには。

小哲〜僕はすごくおいしいと思いました。

佐藤〜ありがとうございます。

小哲〜魚出汁が飛び出てないし、動物系もそんなに飛び出してなくて、まとまっている。

佐藤〜俺自身が飛び出すのが嫌いなんです。煮干しくさいのがどうも。煮干しだしは好きなんですよ。好きなんだけど、いかにもって主張するのがどうもね。

小哲〜そうですか、やっぱり味には作り手の性格も出るってわけだ。いや、どうもありがとうございました、ごちそう様でした。

第15回 日本全県ラーメン巡り その9

酒田での3軒目は、斎藤講師が以前に何回も来たことのあるお気に入りの店「味龍」。一般的に魚出汁が強い酒田のラーメンの中で、あえて魚出汁をおさえ動物系出汁とのバランスに気を配っているという。さて、その味のほどは・・・・・。例によって、この基調トークを踏まえ、塾生諸君の意見や感想を、ブログや美味しんぼ塾フォーラムで大いに発言してほしい。

第15回 発言テーマ
1.キミの好きなご当地ラーメンはどこ?
2.キミから見て、郷土ラーメンと呼ぶにふさわしいとラーメンはどこ?

※ 発言テーマは上記に限らず広く考えて結構です。
   今回の基調トークとの関連で自由に発言して下さい。

●店データ
住所: 山形県酒田市錦町1-2-24
TEL: 0234-31-3717
営業時間 : 11:00〜15:00
定休日: 水曜日


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自家製麺が当たり前の土地柄

小哲〜斎藤さん、やっぱりこちらの店も麺は自家製なんですね。酒田では8割以上が自家製麺だってことは聞きましたけど、それにしても、酒田のラーメン屋さんはみんなやる気まんまんだ。レベルも高いしなあ。

斎藤〜自家製麺というのが、当たり前なんですよね。かつては、うどんだって、そばだってみんなそうだったんですから、ラーメンだって同じ感覚なんでしょうね。

小哲〜ここの麺は中細よりもちょっと太めだけど、よーくかんでいると、小麦の甘味が広がってきてうまいですね。とにかく、ラーメンもうどんも小麦の麺は、そばみたいにクセもないし香りが強くないから、あわてずによーくかんだほうがいいですね。

斎藤〜ここの麺は腰もあるし、なめらかですよね。

小哲〜そういえば、よく麺がなめらかで喉ごしがいいとかいうでしょ。とくに蕎麦なんかだと、江戸っ子は、ツツーッとすすり込んだら、ほとんどかまずに飲み込んじゃう。それが粋な食べ方だってっいうんだけどね。でも、あれは僕に言わせれば間違いですよ。蕎麦こそよくかまなければ、せっかくの蕎麦の持ち味がわからないからもったいない。ラーメンもいっしょ。

斎藤〜ちなみに、ここの麺は、南部小麦を使っていたと思いますよ。それから、つなぎとして輸入の小麦も入れているそうです。カンスイは、こちらも内モンゴルのものですね。

小哲〜そうか、小麦粉も国内産を使っているんですね。

斎藤〜南部小麦は、国産小麦の中でも甘味があるんですよ。ただ、これだけだと、ブツブツ切れちゃうので、つなぎとして輸入小麦を入れているんですね。

小哲〜やっぱり、グルテンが足りないってわけだ。

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地元のいい食材が味の基本

斎藤〜で、スープのほうですけど、ここは酒田のラーメンにしては魚介系出汁をおさえ動物系の出汁をうまく使っています。どうですか、魚系の出汁とのバランスはいいと思いませんか?

小哲〜そうですね。ただ、これまでに食べた店と比べると、魚系も動物系もバランスはとれているんだけど、少し濃いめかな。醤油も濃いめだし。でも、見かけよりも、さっぱりした素直な味に仕上がっています。

斎藤〜ちなみに、このスープは、出汁にあごの焼干し、あじ干し、かつお節、それにさんま節も使っているそうです。その他に、貝柱、昆布、とりがら、豚のゲンコツ、あとは香味野菜ですね、ネギやにんじん等々。

小哲〜そうか、やっぱり出汁にそれだけ入っているから厚みがあるっていうか密度が高いんだな。でも、もっちりした麺とスープがよく合ってますね。

斎藤〜それと、化学調味料とか、そういう刺激的なものは一切入ってないから、最初は物足りなさを感じるかもしないけど、食べてゆくうちに自然なうま味がだんだん口の中に広がってくる。

小哲〜だから、さっぱりと感じるんでしょうね。

斎藤〜前回、ラーメンの食材自給率の話をしましたが、チャーシューの豚は、これも「三元豚」という 地元産のものなんです。酒田のラーメンは煮干しを使うやり方が基本にあるんですけども、こらちの特徴は、それをベースにしながら、たとえばこの平田牧場の三元豚とか、いろんな地域の食材を使って独自のスープなり麺なりをつくっているところです。平田牧場っていうのは首都圏では店舗を持ってない生協とかに売ったりしていて、育て方がしっかりしているということで注目されてるんですけど、こちらでは有名になる前から平田牧場の豚をチャーシューに使うとか、出汁をとるのにゲンコツを使うとかいうことをやってきたんですね。とにとかく地元のいい食材を使おうという姿勢のお店なので、今回とくにお連れしました。

小哲〜なるほど、それにしても、こうしてちゃんと地元で食材が揃っちゃうってうところが素晴らしいですね。じっさい、この豚、肉にあまみがあってうまいですよ。

斎藤〜そうでしょ、臭みもないし。

※ここで店主の岡部さんも参加

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素材の味が生きているようなラーメンが作りたい

小哲〜どうも、ごちそう様でした。こちらは食材にもずいぶん気を使っているということを斎藤さんから聞いたところです。ところで、お店を始めたのはいつ頃ですか。

岡部〜昭和63年です。

小哲〜昭和63年というともう18年前になりますけど、その前は何をやっていたんですか?

岡部〜サラリーマンをやってました。

小哲〜えっ、そうなんですか。じゃあ、店を始めたときはどんなラーメンを目指したんですか。

岡部〜最初は、麺がうまい、スープがうまい、だけじゃだめなんじゃないかと思ったんです。酒田のラーメンていうのはすごい煮干しが効いてるんですよ。食べると、麺の味もわからなくなっちゃうぐらい魚の味が効いてるんですよ。

小哲〜えっ、そんなに効いてますか。

岡部〜ええ、いわゆる酒田のはそうです。それで、これじゃだめだなと思って、何を食べても素材の味が生きてるようなラーメンをつくりたいなと思って、最初からこういうスタイルで出しているんです。

小哲〜岡部さん、出身は酒田ですよね。酒田の人間にとっても煮干しの味が強すぎる、と。

岡部〜私もラーメン好きですごい食べるんですけど、私としては。食べたときにあんまり煮干しの味が強くて、麺を食べても煮干しの味がワァーッと口に広がってわからなくなるんですね、ほかの味が。何を食べても素材の味、ねぎはねぎ、メンマはメンマでおいしいなって感じるようなラーメンがいいかなと思って。普通はカタクチイワシの煮干しを使ってるんですよね。で、店を始める前にいろいろやってみたんですけど、アジ干しが一番クセがないというか、魚の味が出て来ないんですよ。それでアジ干し一本に絞ってずっとやってたんですけども、ここは飛島のいい焼き干しがあるので、それも使うようになりました。

斎藤〜酒田の沖に飛島っていう島があって、そこのトビウオ、アゴの焼き干しが名産なんです。

岡部〜で、そのアゴの焼き干しも使ってやってるうちに、あるときサンマ干しがいいってことを耳にして、じゃあ、使ってみようかということで、それも入れたりして、最終的には、さらに青森のホタテの貝柱も入れるようになりました。

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小哲〜そうすると、いわゆる酒田のラーメンの煮干のにおいをどう抑えてゆくかが出発点で、魚の臭みを消して、まろやかな旨味をいかに出すために岡部さん流に修正を加え、いまの形にたどり着いたというわけですね。

「ご当地ラーメン」とは違う「郷土ラーメン」

斎藤〜そんなことで、酒田には、こちらのように地元の食材を活かして割と新しいラーメンをつくろうとする店もあれ、もともとの酒田のラーメンていうのはこうなんだよということで、それを守ろうとするラーメン屋もあります。そして、地元の人たちも何種類もある酒田のラーメン屋の味の中から、このお店、このお店と選んで行く。で、昔ながらのラーメン屋が1店だけポツンと残っているというんじゃなくて、何十店もあるんですね。

小哲〜こないだの話だと、そうやって酒田には40何軒ものラーメンがあって、しかも、この地域なりのしっかりしたラーメンをつくっているというわけだ。そういう意味では、「酒田ラーメン」というご当地ラーメンというか、郷土ラーメンが確立されているんですね。

斎藤〜酒田ではご当地ラーメンなんていう言い方はしてないんですけども、自分たちのラーメンというのは、ほかの地域と比べて独自であるというふうにみんな思っていて、しかも、酒田に来たら、酒田のラーメンを食べてくださいって、「酒田のラーメンを考える会」というのもあって、パンフレットも作っているわけです。これをいわゆるご当地ラーメンと呼ぶのは、僕は正しくない気がするわけですよ。

小哲〜そうですね。郷土料理と同じように、郷土ラーメンと呼ぶのがふさわしいと思いますね。一般的にご当地ラーメンと呼ばれているものの中には、地域起こしやマスコミの力でポピュラーになったものもあるけれど、その意味では酒田ラーメンは全国的にはまだあまり知られていない。だけど、酒田ラーメンの背景にある歴史とか、実際に地元の素材を使っているということで、これはもう立派な郷土料理であり、「郷土ラーメン」と言えますね。

斎藤〜さっきの食材自給率の話をすると、たとえば、ご当地ラーメンとしていまや全国的に有名な喜多方ラーメンであっても、食材自給率はかなり低いわけです。ですから、酒田のラーメンはいわゆるご当地ラーメンとは区別する意味で、まさに地ラーメンとか、郷土ラーメンという呼ぶのがふさわしいと思います。

小哲〜こうやって、ラーメン巡りをしていると、ほんとうに郷土料理と同じように、その土地の歴史や文化とむすびついた郷土ラーメンというものが出来上がっているってことが、実感としてよく分かりました。

斎藤〜あらあら、小哲さん、まだ話をまとめないで下さいよ。次の店があるんですから・・・・・

小哲〜はいはい。それじゃあ、どーも、ごちそうさまでした。

第16回 日本全県ラーメン巡り その10

米沢といえば神戸、松坂に並ぶ銘柄牛の産地。一方、知名度では牛にかなわないが、店の数では日本一の密度を誇るというのが米沢ラーメンだ。塾頭と斎藤講師は、数あるラーメン屋の中でも牛骨を出汁に使った店「喜久家」を訪ねてみた。

●店データ
住所: 米沢市大町 3-4-7
TEL: 0238-23-0757 
営業時間 : 11:00〜22:00 
定休日: 無休

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ラーメン店密度が日本一高い町

小哲〜日本全県ラーメンめぐりも、今回は米沢までやってきたんですけど、米沢といえば、僕なんかまっさきに浮かぶのが米沢牛です。でも、米沢ラーメンのほうは、あまり馴染みがない。

斎藤〜ところがですね、米沢は知られざるラーメンの町なんです。なにしろ、人口9万3000人の米沢市になんと219軒ものラーメン屋があるんですから。ちなみに、札幌が人口30万人弱のところに185軒。博多は人口123万人のところに231軒です。 

小哲〜ということはですよ、ラーメン屋1軒あたりの人口密度に換算すると、米沢は市民424人に対してラーメン屋が1軒あるのに対して、札幌が1261人に一軒、博多は5324人に一軒ということで、米沢がダントツじゃないですか。なんとも驚異的な数字だけど、そのわりに全国的に知名度が低いのなぜなんだろう。

斎藤〜あまり知られてないのは、おそらく米沢が札幌や博多みたいに全国から人が集まる大都市じゃないってこともあれば、ラーメンにインパクトというものを求める最近の流行りとも無縁で、昔から変わらない普通のラーメンだからじゃないでしょうか。

小哲〜それにしても、ラーメン屋の密度でいえば、博多の10倍はあるってのは驚きですよね。それだけ日常的にラーメンが食べられているってことなんでしょうね。

斎藤〜青森もそうですけれど、毎日食べて飽きないラーメンなんだと思いますね。で、店の数も多いけれど、米沢ラーメンは、歴史も古いんです。関東大震災の後には、すでに中国人が屋台のラーメン屋を出していたといいますから。

小哲〜それって、青森でも、酒田でも同じでしたね。最初は中国人が始め、やがて日本人が真似て作るようになった。

斎藤〜そうですね。たしか、喜多方ラーメンも中国人の出した店から始まったといわれてます。

牛骨だしの新米沢ラーメン

小哲〜ところで、米沢ラーメンの特徴はどんなところですかね。

斎藤〜ひとことで言って、麺は細めの縮れ麺。スープは、鶏ガラ、豚、煮干しがベース。ただし、これまでの青森県、秋田県、酒田までのラーメンほど魚系の出汁が表には出ず、鶏や豚の出汁に深みを与える程度。で、「喜久家」の場合は、さらに地元の米沢牛の牛骨を出汁に使っているんですが、一般的に牛は使われていません。

小哲〜じゃあ、ここは通常の米沢ラーメンのスタイルに、さらに地元の米沢牛の風味を加えられた、より米沢的な進化形ともいえるんですね。

斎藤〜そうなりますね。私が、今回この店を選んだ理由の一つとして地の素材である牛をどう使っているかってこともあったんです。

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小哲〜なるほど、いまラーメンがテーブルに運ばれてきたところなんでけど、すでに牛独特の香りがしますね。で、まずはスープからいくと・・・・・。うーん、実際に飲んでみると、最初は牛の香りがあるんだけども、口に含んでいると、ベースとなっている鶏の味が広がってきますね。あと、やっぱり煮干しが入っているからか、独特の、なんていうかな、ひなびたようなうまみが、動物系のだしに厚みを与えていますね。そして、スープに甘味があるんだけど、これは何の甘味なんだろう。

斎藤〜あ、この甘味は醤油の甘味じゃないでしょうかね。おそらくこの地域の醤油が甘いんだと思いますよ。

小哲〜そういうことですか。醤油は地域によって甘かったりしますもんね。でも、醤油ラーメンとして、醤油の味はそんなに濃くはないし、あと、味の角も立ってないですね。それと、チャーシューは、バラを巻いたやつと肩ロースの二種類の煮豚が乗っています。煮かたはとろけるようでもなく、硬くもなく、ちょうど中間かな。だけど、食べているうちにこの豚の脂がにじみ出てくるから、ある意味で豚のうまみと牛のうまみが渾然一体となってくる。

牛骨だしの独特の甘味

斎藤〜最初テーブルに運ばれてきたときは、牛の香りがずいぶんするんだけど、だんだん食べているうちに全体がなじんできますね。

小哲〜そうそう、ラーメンって、最初にスープを飲む時、レンゲで表面の脂の浮いたところをすくうか、脂をよけて素の部分をすくうか、または刻みねぎと一緒にすくうかで、スープの味が全然違うんですよね。でも、普通に食べればどれも混ざり合って、ああ、美味しかったってことになる。

斎藤〜これ、どんぶりの底のほうになると、牛独特の甘味というのかな、それが残っていて、すごくいいですよ。私・・・、決して煮干しだけが好きなんじゃないので・・・。

小哲〜この細めの縮れ麺は、僕の好きなタイプなんですけど、できれば、もう少し硬めのほうが良かったな。あと、メンマはというと、ああ、よく煮てあるからか、独特の臭みが抜けてますね。

斎藤〜スープは、牛骨は使ってるんだけど、牛骨を使いましたって感じで、主張しているわけではないんで、いいですね。

小哲〜で、どうなんでしょうね。せっかくこういうスープなんだから、チャーシューのかわりに牛肉を使うってのは。だだし、そうすると、ラーメンのお約束ごとから外れちゃうのかな、煮豚でなく、煮牛だったら。ただ、本家の中国では、そういうのいくらでもありますからね。

斎藤〜あ、そろそろ店長の手がすいたみたいなので、お話を聞いてみましょう。

朝鮮の人から教わった牛骨だし

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斎藤〜スープの出汁は牛骨のほかに何を使っているんですか。

店主〜そうですね、鶏がら、豚、煮干しがベースで、昆布は入れてません。あと、野菜はほとんど入れていないです、あまり好きじゃないので。米沢牛の太い骨の髄からでる出汁はあまみがあって、食べているうちになじんできます。でも、牛骨を使っているのは米沢でもうちくらいですね。豚、トリとのバランスが大事だと思います。どっかが主張しすぎてもだめだし。

斎藤〜牛骨を使おうと思ったのは、やぱり米沢牛があるからということだったんですか?

店主〜それもありますけど、最初に使いはじめたはの、先代なんです。

小哲〜ということは、この店は何年になるんですか?

店主〜60年以上になりますか。

小哲〜そうすると、戦前ということになるんですかね?

店主〜ええ、戦前からです。最初にラーメンを習ったのが、朝鮮の人なんです。

斎藤〜ああ、それで牛骨を使うんだ。

小哲〜そうか、そういうことですか。朝鮮ではスープの出汁は牛骨が基本ですからね。だけど、ラーメンなのになぜ朝鮮の人から教わったんですか?

店主〜始めに店をやっていたおばあちゃんの旦那さんが朝鮮の人だったんですね。その関係で、朝鮮の人からラーメンを教わった。で、その人に教わった時に、おばあちゃんが、みんなが豚なら、じゃあううちは牛でやろうということで始めたそうです。だから最初は苦労したと思いますよ、くさみがありますから。

小哲〜店を継いでからは、もうどのくらいになるんですか?

店主〜30年近くなりますか。

斎藤〜戦前、米沢は朝鮮人がけっこういたんですか。

店主〜鉱山があったから働きにきていたらしいです。おじいちゃんは鉱山で働いていたんですが、おじいちゃんの話だと、当時はずいぶん辛い目にあったという話です。おじいちゃんは、戦前は鉱山で働き、戦後は採石の仕事をやっていたようです。

体にも懐にも優しい郷土ラーメン

斎藤〜ところで、麺は自家製なんですか?

店主〜昔は自家製だったんですけど、今はおっつかなくなって、昔つくっていたような麺を製麺所に注文しています。

小哲〜チャーシューは昔から煮豚なんですか。

店長〜そうですね、ただ、肩ロースとバラの2種類使うようになったのはごく最近です。それまではバラは使わずに、肩ロースか内ももを使っていたんです。脂の嫌いな店は内ももを使い、ちょっと脂が欲しい店は肩ロースを使っていました。それが米沢では主流でした。

小哲〜牛の出汁を使っているから、牛肉を使おうとは思わなかったんですかね?

店主〜やったことはありますが、なかなか、うまくいきませんでしたね。

小哲〜韓国だと冷麺に牛が入っているじゃないですか。

店主〜ただ、牛を使うと高くなってしまうんですよ。うちの店は毎日食べにくる人がいますからね。

小哲〜えッ、毎日食べに来る人がいるんですか?

店主〜ええ、います。中には夜も来てくれる人もいます。


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斎藤〜やっぱり、毎日食べても飽きないというのが地のラーメンのいいとこなんですけど、もう一つ、毎日食べても懐が痛まないというのも、大事なことですよね。(笑)

小哲〜そりゃ、そうだ。毎日食べても飽きないくらい体に優しく、しかも懐にも優しい。これこそラーメンの必須条件じゃないですか。・・・・・・ということで、今日は、本当にごちそうさまでした。

第17回 日本全県ラーメン巡り その11

同じ米沢市内であっても、ちょっと郊外に行くとたんぼの広がる田園地帯になる。そんなのどかな景色の中に、昔と変わらぬ姿の「さつき食堂」があった。常連はラーメン好きの米沢市民だけでなく、毎年必ず遠く関東からやって来る客もいるという。塾頭と斎藤講師が店ののれんをくぐると、そこはほのぼのとした別世界だった。

●店データ
住所: 米沢市大字関根13562-7
TEL: 0238-35-2753 
営業時間 : 11:00〜15:00(スープが売り切れ次第閉店) 
定休日: 月曜日

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山とたんぼと中華そば

小哲〜いやァ、なんて言ったらいいんでしょうね、こういうラーメン屋は、僕は初めてです。東京では絶対にありえない、米沢というか、田舎ならではのラーメン屋ですね。とにかく、都会にいたらこんなラーメン屋があるなんて、想像すらできない。

斎藤〜ここは奥羽本線の関根という駅から歩いて3分くらいのところなんですが、ご覧のようにまわりは田圃と山です。ちなみに、電車だと米沢の隣駅になりますが、さっき駅で時刻表を見たら電車が1日に6本しか走っていませんでした。朝7時と8時に1本ずつあって、その後はもう午後の1時までありません。

小哲〜ひやァ、どうりで駅が静かだった。町を歩いても、ぜんぜん人影がないしね。

斎藤〜たしか、この町、というか村には、食堂はこの店を入れて2軒しかなかったはずです。

小哲〜ええッ!ということは、この町でいちばんにぎやかなのが、このラーメン屋ってわけだ。いやはや、感慨深いですなあ・・・・・・・。

斎藤〜たった2軒のうちの1軒がラーメンなんですから、いかに米沢の人がラーメン好きかですよね。おっと、変なことに感心しているうちに、ラーメンができあがってきましたよ。

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小哲〜じゃあ、さっそくいただきましょうか・・・・・・・。ほう、スープの色がずいぶん薄いですね。で、この味はやっぱり煮干しを使ってるんですね。でも、ここもそれほど煮干しの味が立っているわけではない、酒田みたいにはね。トリや豚のダシとうまく溶け合ってますね。スープとしては、さっぱりしていて、そして優しい味ですね。あと、この麺が細くて縮れているやつね、このところいつも言ってるけど、これ僕の好きなタイプなんです。

ネギも野菜も、みんな裏の畑で採れたもの

斎藤〜この細くて縮れているのが゙、米沢ラーメンの特徴ですね。

小哲〜この麺、けっこうもちもちしていて、あんまりカンスイも強くないし、かんでいるうちに、ちゃんと小麦のあまみが出てきて、なかなかいいなぁ。スープともよくあっている。あと、脂もほとんど浮いてなくて、かすかにチャーシューの脂が浮いているくらいですね。

斎藤〜全体としてスープはさっぱり系の、インパクトとは無縁の味ですねえ。煮干しと鶏ガラとバランスがとれていて、こってりでもないし、うまくまとまっていると思いますね。ところで、このラーメンに入ってるネギも、他の野菜も、みんな裏の畑でできたものなんですよ。さっきオバアチャンが裏の畑からとってくるのが見えました。

小哲〜えッ、そうだったんですか。そういえば、ここの厨房の窓からは裏の畑が見えるんですよね。さっき、オバアチャンが麺を茹で上がるのを待ちながら、外の畑を眺めてましたもんね。しかし、こんないい環境のラーメン屋ってめったにないですね。

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斎藤〜この店は、1966年から今のオバアチャンが始めて、その時から自分で作った野菜を使ってたそうです。それと、ここはかまどに羽釜を置き、それで麺を茹でているんですよ。出汁は鶏ガラ、豚、煮干しのほかに、昆布や干ししいたけ、にんにく、などを使っているけど、あまり教えたくないって言ってました、聞いちゃったけど(笑)で、野菜は自分ちの畑で作っていて、ねぎも、キャベツもにんじんも、なんでもここで採れたもので、しかも、無農薬だそうです。

小哲〜フランス料理店の話なんだけど、10数年くらい前から、郊外の人里離れた場所に新しい店がいくつもできているんですけど、そういうところって、みんな裏に畑を持ってるとか、ハーブ園を持ってるんですよ。とにかく、それがその店のポリシーであり、ウリでもあるんですから。ところが、この店、「さつき食堂」は、昔から、ごく当たり前に自分ちの裏の畑でとれた野菜を使ってラーメンを作っていたわけで、そのへんのところがスゴイですよね。都会のシェフから見たら垂涎の的ですよ。

斎藤〜ことさらそれを強調してるわけじゃないですしね。お店の中のどこを見ても、そんなことひとつも書いてありませんもね。でも、ふと見ると、ネギが足りなくなると、おばあちゃんが畑にとりに行ってる。

小哲〜そのへんの大らかさが、なんともすばらしいですよね。しかも、作ってるのはラーメンなんだから。今回は郷土ラーメンということで、いろいろ食べて来たんだけど、その意味では、この店は、まさに土地に根付いたラーメンって感じがしますね。都会の人間から見たら、羨ましすぎるロケーションだ。

斎藤〜かまどで麺を茹でてるというところも、昔はこういうタイプのお店、結構あったと思うんです。今回は回ることができなかったんですが、青森県の黒石市というところに「長崎屋」というラーメン屋さんがあって、そこも同じようなかまどがあって、そこで麺を茹でてるんですよ。

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北前船がもらたした関西の文化

小哲〜ところで、この店もスープは醤油が薄めだし、とてもバランスがいいでしょ。たとえは関東のうどんと関西のうどんを比べると、関東はすごくしょっぱいんですよ。醤油がやたらと勝ってる。反対に関西に行くと、醤油が薄くて、薄口醤油を使ってるとか、出汁がかなりしっかりしてるとかね。だから、ラーメンの場合は、これは僕の先入観だったんですけど、東北のほうが゛ずっと味が濃いかと思ってたんですよ。ところが、関東のラーメンと比べると、この店も、それから、これまで食べてきた酒田や十文字のラーメンも、東北は全般的にあまり醤油が強くなくて、関東と比べると、意外にも関西のうどんに近いような印象なんです。

斎藤たぶん、お醤油の感じが山形県ていうのはこういう傾向にあるのかもしれません。 かつては酒田が北前船の停泊地でしたから、最上川流域に交易圏が形成され、例えば、紅花とかも船で最上川を下って酒田で北前船に積み替えられていました。ほかにも、このルートを通じた様々な形の文化の交流があって、同じように料理にも北前船経由による影響が見られるんですね。

小哲〜そうか、そういうのがありましたか。そうすると、この関根という場所も最上川の流域になるんですか?

斎藤〜この町自体は最上川に面しているわけじゃないんですが、山形県の酒田からずっと最上川の交易圏に入ると考えられます。

小哲〜なるほど。ある意味で日本海側の方が北前船という流れがあったから定期的にそういう文化が入っていたわけですよね。現在の交通からみると、関西とのつながりが見えてこないんだけど、じつは、かつては北前船や河川による水上交通を通じて、関西と近い位置にあったと考えていいんですかね。

斎藤〜はい、たぶんそういう傾向はあると思います。

小哲〜そういえば、来る途中で岩木山の近くにある店で食べたくじら餅なんてのも、それと関係ありましたよね。

斎藤〜ええ、くじら餅っていうのも、北前船で京都から伝わってきたものだけれども、今は山形県と青森県にだけ残っているんですよね。

小哲〜ただし、京都にはもうないんでしょ。歴史の皮肉っていうか面白いですよね。じゃあ、この話の続きは次回ということにして、いよいよ次回でこの「日本全県ラーメンめぐり〜東北篇」のパート1も最終回にしたいと思います。

第18回 日本全県ラーメン巡り その12

東北ラーメンめぐり、最終回

「日本全県ラーメン巡り〜東北編」もいよいよ今回で最終回を迎え、東北のラーメンのレベルの高さから、郷土ラーメンの魅力まで、斎藤講師の話にも熱がこもる。「日本全県ラーメン巡り」は、まだ東北3県を終えたばかりだか、今後は各地域の講師にひきつがれ、日本全県の郷土ラーメンをカバーする。どのようなラーメンが登場するのか、大いに期待してほしい。


東北のラーメンのレベルの高さに驚いた

小哲〜今回は、斎藤さんと一緒に5日間にわたって、青森県、秋田県、山形県の東北3県のラーメン屋を食べ歩いたんですけど、とりあえず、僕の感想からいうと、東北のラーメンのレベルの高さに驚きました。もちろん、斎藤さんがいい店を選んでくれてるってこともあるけれど、全体の印象でいうと、関東よりも品のいい味で、これはまったく予想外でした。最近の東京のラーメンは、やれインパクトだのパンチだのといって、出汁も具もやたらゴテゴテしているのが多いんだけど、東北の場合は、人間でいえば、おおむね肩肘はるとこもなく、居住まいのいい人って感じだったなあ。じつ言うと、もっとしょっぱかったり、グチグチャしたどんくさい味かと思ってたんですよ。ところが大違いで、地域それぞれのラーメンにその地域なりの洗練があった。青森県の「煉瓦亭」も、酒田の「三日月軒」もよかったし、とくに十文字の「丸竹食堂」のラーメンなんか、毎日でも食べたいくらいですね。

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斎藤〜東北全般についてみると、日本でラーメンという食べものが最初に成立したときに近いつくり方のラーメンだと思うんですね。ただ、手元にある食材が焼き干しだったり、煮干しだったり、その土地土地でいろいろで、それを使うということをことさら強調しているのではなくて、それはその場所にあるから使っているのであって、それにインパクトを持たせようという気持ちはさらさらないわけですから。
 
小哲〜そうですね。青森はイワシの焼き干しがあったからそれを使った。そば屋さんでもそれを使ったし、つゆものとか煮物にもそれを使った。その流れでラーメンにも使ったんだと。でも、ただ単にあったから使ったというのではなく、最初に入ってきた時は中国系の味であったはずで、それが時が経つうちに、煮干しを入れたほうがなにかしっくりとくる、うまい、ということで使われるようになったんじゃないかな。つまり、しだいに自分たちの舌に合わせてしまった。カレーなんかもそうですよね、インドからイギリス経由ではあるけれど。

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斎藤〜大間の場合は、真昆布がとれる地域なので、それを使って出汁をとった。函館もほんとはそうなんですけども。そして、南部地方のはじかみとか、煮干しがとれる地域では煮干しを使う。酒田は、アゴの焼き干しが飛島でつくられているので、それを使った。それぞれの地域で自分のところで手に入りやすい食材で、ラーメンというものの中に一つのバランスとして使う。

小哲〜行った店をずっと並べると、なんだ、どこも煮干しじゃないと思うんだけども、煮干しにそれぞれ違いがあるんですよね。それと、日本全体を見ていくとわかるのかもしれないけども、もともとラーメンのルーツは中国で、上海でも広東でも海に面してるところはいくらでもあるけれども、出汁は牛、豚、鶏、ほかに金華ハムなどの動物系で、基本的には魚出汁は使わないでしょ。ところが、周囲を海に囲まれている日本では、煮干し、かつお節、さば節の節文化があるから、結局、スープにもその土地の節文化が入り込んでいる。そういう意味では、魚味というのはごく自然な、なるべくしてなっだ日本のラーメンの味なんでしょうね。

土地ごとに微妙に違うところが、土地らしさ

斎藤〜いままで見てきた東北のラーメンというのは、材料を文字に書いて並べてしまうと、煮干し、焼き干し、昆布、云々かんぬんという、似たものになるんですが、土地ごとにそれぞれ微妙に違って、その微妙に違うところがその土地らしさだと思うんですね。郷土のラーメンというのは多様なんだけど、その多様性というのは、うちはこれ、とバーンと主張しているのではなくて、その土地毎に微妙なずれというか、差異があって、その連続だと思うんですね、ずっと北から順に歩いて来ると。

小哲〜そうですね。青森県、秋田県というような現在の行政区分的な視点では、郷土料理などの歴史的な流れの中で形成されたものは捉えきれないですよね。青森県だって津軽と南部に分かれていて、南部は岩手県と重なっているわけ出汁。だから、足でずっと歩いてゆくと、少しづつ違ってくるのがわかる。少しずつ違うから。県ごとではないし、さらにあえていえば、港と川とかの交通の要衝をおさえる必要があるかもしれない。

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斎藤〜いま郷土のラーメンというのは、最近、ここ10年ぐらい流行の、この食材にインパクトを持たせました、と主張していうのではなくて、その土地の食材を活かしつつ、一つのどんぶりの中にまとめているというか、まとめようと思ってまとめてるんじゃなくて、何十年とかいう時間、幾世代かをかけて、そういうものになってきたんですね。

小哲〜そういうものとしてできあがった、そういうことですよね。
 
斎藤〜で、その土地の人がずっと長く、例えば、毎日食べに来たりするわけだから、米沢の喜久家さんなんか、お客さんが毎日食べに来るっていってましたね。

小哲〜そうそう、毎日来る、夜も来るって行ってましたね。

斎藤〜毎日食べることができるということは、その土地の人がこういう味が好きだというものがあって、それにだんだんなっていくということでもある。

小哲〜新しいラーメン屋さんを見つけて食べたらおいしかった、じゃな