雁屋小哲×審査員「有名ラーメン店」店主 試食後座談会

写真:安井敏雄

番組収録後、審査員として出演した有名ラーメン店の店主に、今回、出場した各地域の ラーメンについて話し合っていただいた。「創作ラーメン」の旗手ともいえる店主たちに、「郷土ラーメン」の味は、はたしてどのように感じられたのか。司会役の雁屋小哲だけでなく、塾生にとっても大いに気になるところだ。


高野〜それにしても、郷土色という点も考えて得点を入れるというのは難しかったですね。味に頼ってしまった部分もありました。

山田〜札幌、福岡、あとは富山のラーメンに少し郷土色を感じたぐらい。で、富山のブラックラーメンは、自分が作り手だったらどうやろうと思いながら食べたけれど、いじりようがないと思ったな。

中村〜いずれにしても、こんなに一気にラーメン食べることなんてない!(笑) 北海道のラーメンは洗練されてましたね。

山田〜あれは、自分の店でやりたいと思ったよ。

小哲〜さて、みなさん。今回、全6県から、郷土性の強いラーメンを作っている店主にご登場いただいて、皆さんに食べていただきました。従来のラーメンではなく、独自の創作ラーメンを作っている皆さんからみて、地方色のあるラーメンはどうだったか。率直な感想を聞かせてください。

山田〜もうちょっと郷土の香りがしてもいいのかな、と率直に思いました。もちろん、なかには何十年前からの郷土ラーメンを作っている人もいましたけれども。ですがそこにももう少し新しいエッセンスが入ってくれていてもよかったかな。時間が止まっちゃっているラーメンもあったし、行きすぎているものもあったし。また、一杯の丼のなかに、地産地消というものが溢れているほうがいいと思いました。北海道のラーメンにはその地産地消という概念がインクルーズされていて、僕的には宝の山。富山のブラックラーメンは、ものすごく“顔”の見えるラーメンでしたね。

高野〜郷土色豊かということは、ラーメンに使う食材が常にそこに豊富にある、ということだと思いますからね。

小哲〜確かに、地産地消のもの、という見方もあります。あともうひとつ、歴史的な郷土料理としての背景、土地の風土とか生活習慣とか、そういうものが出ているというのが郷土性だと思うんですよね。その辺も含めてどうでしょう。

中村〜郷土ラーメンというのは、郷土料理とはちょっと違ってカテゴリーがないじゃないですか。いわゆるご当地ラーメンと郷土料理はちょっと違った意味合いがあると思うから。その土地の空気、土地によって流れている時間の速度が違うんですよね。そういうものも含めての郷土料理だったら、富山のラーメンはあれでいい、そこでストップしていていいと思う。その土地で食べる雰囲気も違うでしょうし。ただ、スタジオにずらっと並べられても、ただの食材の違いということで、なかなか評価をするのは難しい。点数の世界ではないんじゃないかなと思います。

小哲〜うん。だから最初はね、果たして対決ができるのかなとも思いました。というのは、郷土独自の価値感があって味もあるから、単純に並べても無理があるのではと思ったんです。だから、暫定的にはどれが自分の好みにあったかということですね。

山田〜それですよね。

小哲〜そういうふうにしないと意味がない。「美味しんぼ」で郷土料理を扱っているのは、同じ日本で、みんな好みがあって価値感があって地方がある。それを、ひとつのラーメンで見せようとしているんですよ。そういう意味で、たとえば富山のラーメンが出たときに東京の人にどう映るか、北海道のラーメンを九州の人が食べたときにどう映るか。その辺が面白いと思うんですよね。

中村〜これ一回じゃなく続けたらいいと思う。これを機に、時の流れが違う部分というのに気づく人がいるわけじゃないですか。競う、ということは相乗効果につながるとも思うし。郷土ラーメンというのが出てきたことで、もっと地元の食材を勉強したりして活性化につながると思うんです。

一同〜そうですよね。

古谷〜皆さんが話した通りなんですけど、郷土色ということでみると、たとえば富山のブラックラーメンというのは郷土の人みんなに愛されているという郷土性がある。個人的な好みとしても、あの黒いスープは僕にぴったり。しょっぱいから、ご飯があってはじめてラーメンが成立するというのもいい。で、北海道は、郷土色の強い蟹を使って、さらに従来の札幌ラーメンにプラスαをしている。これは今回の主旨にあった、かつ競うためにがんばったものじゃないかなと思いますよね。そういう意味でいうと、ほかは郷土性が足らなかったのかな。

山田〜本当に。さっき中村も言ったように、この番組を見た地元のラーメン屋さんが、俺だったらこうしたい! というようなストーリー展開が今後あったら、僕はこの番組はとても価値があると思う。「美味しんぼ」って漫画はそういうカテゴリーにあるものだと思うし。俺だったら、たとえばこのブラックラーメンをこういうふうに進化させるよ、みたいな地元の人が、応募するぐらいの勢いがあったら活性化すると思うんですよ。

小哲〜それを実はやりたかったんですよ。「美味しんぼ塾」が立ちあがってまだ2ヶ月の段階で、テレビの特番をやりましょうという話が持ちあがった。ということで、今回は招待選手でやりましょうという話になったわけです。本来は応募するとか推薦する形がいいと思うので、次回はそうやりたいと思っています。

坂井〜もちろん、今日登場した6店を選ぶのにもみなさん苦労されたと思います。けれど、僕はこのあいだ青森に行ったときにとても青森らしい個性のあるものを食べたので、そういうのを期待していた部分があり、郷土色という意味ではちょっと自分との温度差があったかなと正直思いました。

小哲〜話をまとめると、郷土性をどう表現するかということだと思うんです。土地の中の素材という郷土性、もうひとつは土地の食文化という郷土性がある。郷土性とはその2本立てで、今回はちょっと、土地の素材をいかに工夫するかということがあまり出てこなくて、漠然と昔から続いている伝統によりかかっていたという部分があった。今回の皆さんの意見としては、郷土性をもっと出すために、現在のものにプラスαをする。また、未来に対するなんらかの郷土性といえる工夫を加えたほうがいいということですね。ありがとうございました。番組が続いたときは次回もまたよろしくお願いします。

参加ラーメン店 店主(五十音順、敬称略)

九段斑鳩 坂井保臣
中華そば多賀野 高野多賀子
麺処中村屋 中村栄利
なんつッ亭 古谷一郎
麺屋武蔵 山田雄




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