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   <title>毎週更新！！雁屋哲と小哲の立体コラム</title>
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   <updated>2007-05-18T06:20:28Z</updated>
   <subtitle>シドニー在住の雁屋塾長が、ビデオチャットを介して塾頭小哲と語る、南半球からの対話形式の立体的なコラム。漫画では書ききれなかった話から、取材の裏話、そしてシドニーの話題まで、美味しんぼファンなら聞き逃せない話が続々登場します。</subtitle>
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   <title>寿司（その５）</title>
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   <published>2007-05-18T03:11:03Z</published>
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   <summary>素手で握るという世界にも稀な料理 雁屋〜江戸前の握り寿司っていうのは、料理の中で...</summary>
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      <![CDATA[<h3>素手で握るという世界にも稀な料理</h3>

<strong>雁屋</strong>〜江戸前の握り寿司っていうのは、料理の中で極端に特殊な料理なんだよ。というのは、素手で握ったものを人に食べさせる。そんな料理はほかにないんだよ。手で直接食べものに触るって、例えば、インドあたりで手でカレーを食べたりするけれども、調理人が素手で料理して、それをそのまま食わせるなんて、そんなものないわけだよ。

<strong>小哲</strong>〜サンドイッチなんか、手でつくるけど、寿司とは意味合いが違うしね。

<strong>雁屋</strong>〜だからね、お寿司屋さんとお客さんの間には人間的な信頼関係がなかったら成り立たないと思うんだよね。だから、嫌な寿司屋っていうのがあって、そんなやつの握った寿司は絶対食いたくないっていうのもあるわけじゃない。

<strong>小哲</strong>〜面白いのは、最近はおにぎりなんかみんな薄いゴム手袋をはめて握るんだよね。寿司屋でも持ち帰り寿司なんかだと、そういうのあるんじゃないかな。

<strong>雁屋</strong>〜そうだよね、おにぎりでさえそうなんだから。だから、握り寿司というのは極めて稀な料理で、世界にあんな料理のしかたはない。よく、外国人のわけのわからないやつらが、寿司は料理じゃない、なんてばかを言うわけだよ。あるいは、刺身は料理じゃないとか。そういうとんでもない大馬鹿さんがいるわけだけど、寿司ほど握る人によって味の違うものはない。

<strong>小哲</strong>〜うん、まったくそうだよね。

<strong>雁屋</strong>〜それから、握るときの姿かたちの美しさがこれほど味に影響するものはない。寿司の技術教科書を見ると、二手返しとか本手返しとか、いろんなやり方があるんだよね。あれは見てるとすごいなあと思うね。日本人てなんて器用なんだって。

<strong>小哲</strong>〜ずいぶん前だけど、「美味しんぼ」のテレビ特番で、美家古の先代の親方にやってもらったことがあるんだよ。五手で握るとか、三手で握るとか、で、究極は一手で握る名人が昔はいたとか。

<strong>雁屋</strong>〜大阪につかみ寿司っていうのがあるんだよ、黒門市場のところに。何だろうと思ったら、ごはんをつかんで、そこにパッと載っけるからつかみ寿司って言うんですって。握り寿司と変わらないんだけどね。

<strong>小哲</strong>〜形は、どんなふうになるの？

<strong>雁屋</strong>〜同じ形だよ。でも、つかみ寿司っていうんだよ。ごはんをつかむからって。つかみ寿司っていうのはあそこだけだね。そんなに高級なお店じゃなくて庶民的なお客さんがどんどん入ってくるようなところなんだけど、名前がおもしろかったね、つかみ寿司って、聞いたことがなかった。

<strong>小哲</strong>〜握り寿司って、素人がやるとどうしてもご飯つぶが手についちゃうでしょ。あれって、手につかない方法がちゃんとあるんだよね。

<strong>雁屋</strong>〜そうだよ、なぜプロは手がごはん粒だらけにならないのか。２つある。１つは、手の温度と寿司めしの温度を同じにする。だから、寿司屋に行くとごはんの温度が下がらないようにおひつに入れ、店によってはこもをかぶせているところもあるな。もう１つは、彼らは握る前に手に酢をちょっとつけてパンと叩くじゃない。あれは冗談でやってるんじゃないのね。パンと叩くと、その瞬間に手に水の膜ができちゃうんだって。それで握るから手につかないんだってさ。お酢をひとすくい手にとってパンとやる。

<strong>小哲</strong>〜なるほどね。素人がやると、手のひらに酢がたくさんついてごはんがベヂャベチャで水っぽくなっちゃうんだよ。パンとやるとちょうどよくなるんだ。

<strong>雁屋</strong>〜酢をひとすくいとってパンとやると、その瞬間に手の表面に水の膜ができて。

<strong>小哲</strong>〜そうか、いいこと聞いたな。ところで、それは誰から聞いた話？

<strong>雁屋</strong>〜これはシドニーの職人から聞いた。

<strong>小哲</strong>〜え！日本じゃなくて、シドニーで聞いたの？ああ、例の寿司屋さんね。最近はシドニーも開けたもんだ。でも、それ覚えておこう。だけどさ、握り寿司ってのはやっぱり家で作るもんじゃないね。

<strong>雁屋</strong>〜あのね、寿司、天ぷら、そば、うなぎ、これは日本食中でも人気メニューのベスト４だ。しかし、これこそ職人料理で、この４つは絶対に家で作るのは無理。職人の技術と勘が不可欠なんだ。

<strong>小哲</strong>〜昔、うちで親父が寿司をつくったじゃない。あのときは、嬉しかったけど、いわゆる店で食べる寿司とはまるで違ってたもんね。

<strong>雁屋</strong>〜ごはんが大きくてなあ。

<strong>小哲</strong>〜あとねえ、酢の加減が弱いと、水っぽいっていうか、味にしまりがないんだね。

<strong>雁屋</strong>〜多いとすっぱいし。それから、砂糖の按配も難しいしな。親父はひどかったよ、ご飯だけ先に握って、あとからその上に刺身を載っけてたぞ。

<strong>小哲</strong>〜子どものときはあれでも楽しかったけどさ。でもひとつ違うなと思ったのは、酢の微妙な加減で、魚の味が浮いてしまって、生臭く感じちゃうんだな。

<strong>雁屋</strong>〜だから握り方もそうだけど、そのへんの加減が素人には難しい。

<strong>小哲</strong>〜ということは、やっぱり職人料理には素人は手を出しちゃいけないってことだ。皮肉なことに、うちの親父が身をもってわが子に教えてくれたってわけだ

<strong>雁屋</strong>〜しかし、あれはあれで、楽しかった。

<strong>小哲</strong>〜そう、子供にとっては最高のイベントだった。・・・・ということで、美味しい寿司が食べたくなったところで、そろそろ終わりにしたいと思います。

（了）]]>
      
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   <title>寿司（その４）</title>
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   <published>2007-05-01T02:29:37Z</published>
   <updated>2007-05-01T02:33:36Z</updated>
   
   <summary>寿司ダネは豊富になったけど、フグだけは無理 小哲〜前回の続きだけど、大阪寿司が江...</summary>
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      <![CDATA[<h3>寿司ダネは豊富になったけど、フグだけは無理</h3>

<strong>小哲</strong>〜前回の続きだけど、大阪寿司が江戸前寿司に席巻され、さらに江戸前寿司も刺身をのせただけの今風の「東京寿司」に負けちゃったわけなんだけど、ということは、結局は新鮮なネタの力が大きかったってことですよね。要するに物流と冷蔵技術が進歩したおかげで、昔と違って新鮮な魚がどこでも手に入るようになり、寿司ダネも一気に種類が増えた。

<strong>雁屋</strong>〜やっぱり新鮮ないいネタを使えば誰が食べてもうまいからね。ただ、握り寿司としてのうまさは、ネタだけでなく職人の腕のよしあしにかかっている。

<strong>小哲</strong>〜江戸前だと、白身にしても限られた伝統的なものしか使わないけれど、店によってはいろんな種類の白身魚を置いてるところがあって、僕なんかうれしいね。

<strong>雁屋</strong>〜ただ、あれこれネタはあるけど、握り寿司で食べておいしいのはマグロとコハダだね。僕はマグロとコハダを順番でそれだけ繰り返して食べてもいいね。途中の他のものは、実はいらない。

<strong>小哲</strong>〜僕は白身は食べたいな、ヒラメとかタイとか、それから、カサゴとかスズキなんかもうまいしね。若い頃は白身なんか全然食べなかったんだけどね。

<strong>雁屋</strong>〜ヒラメとかタイは向こうがつくってくれるから食べるけど、自分でじゃあ何を食べようって考えたときには、ヒラメとかタイって気持ちはないな。ただ、おもしろいのは、フグだけは寿司にならないね。

<strong>小哲</strong>〜ああ、そうかもしれない。

<strong>雁屋</strong>〜身が硬すぎるんだ。

<strong>小哲</strong>〜ヒラメあたりならまだいいけどね。

<strong>雁屋</strong>〜ヒラメなら大丈夫だけど、フグは薄造りにしてあっても硬いじゃない。ポン酢でくちゃくちゃやるけど、寿司にはならない。

<strong>小哲</strong>〜かんでいるうちに、口の中にフグだけ残っちゃうんじゃない？硬くて。

<strong>雁屋</strong>〜残っちゃうだろうな。

<strong>小哲</strong>〜ごはんの方が先になくなっちゃうでしょ。

<strong>雁屋</strong>〜いや、ふぐの寿司は前にどこかで食べたことあるかな。

<strong>小哲</strong>〜刺身だったら、それだけで食べるからいいけど、握りだと、シャリと噛む時間が違うから、先にシャリがなくなってフグだけ口の中に残っちゃうよ。かといって、薄造りのやつをシャリに乗せても、薄すぎて量的なバランスがとれないでしょ。そう考えると寿司はやっぱりタイとかマグロかな。

<h3>マグロがなかったら寿司屋は成り立たない</h3>

<strong>雁屋</strong>〜そう、マグロですよ。それもヅケだよ。赤身のヅケ、あれがおいしいなあ。あれはちょっと泣けてくるね。

<strong>小哲</strong>〜そうだね、マグロのない寿司は寂しいな。

<strong>雁屋</strong>〜マグロがなかったら寿司屋さんは成り立たないね。ある時、文芸評論家でこういうことを言った人がいた。三島由紀夫ってすごく変わった人で、寿司屋に行くとマグロばっかり10個でも20個でも食べるんだって。で、三島由紀夫はほんとに思慮が足りない。そんなことをしたらマグロがなくなっちゃうじゃないか。寿司屋はマグロがないとやっていけなくなるから、そういうことをしちゃだめじゃないかって。僕なんか若い頃、築地の安い寿司屋に行って「トロを10個」って頼んで、それを端からパカパカ食っていったことがあったから、思慮が足りないどころじゃないよな。

<strong>小哲</strong>〜マグロでよく言われるのに、赤身がいいか、トロがいいかっていうのがあるじゃない。

<strong>雁屋</strong>〜両方いいじゃない。

<strong>小哲</strong>〜どっちもいいけど、もしも１つだけマグロの寿司を食べていいよって言われたらどっちをとる？

<strong>雁屋</strong>〜一つだけはイヤ。全部がいい。一つだけは無理だよ。

<strong>小哲</strong>〜いやいや、いちおう話として。たとえば、大トロ、中トロ、赤身で。僕だったら、中トロかな。赤身だけだと、トロも食べておきたいし、トロだけだと、赤みも食べたくなる、で、中間をとって中トロ。赤みのよさもトロのよさもわかる。

<strong>雁屋</strong>〜うーん、赤身だけだとね。しかし、それはちょっと難しいね。

<strong>小哲</strong>〜でも、赤身にマグロそのものの味さが現れるでしょ。素性というか。中トロも、大トロも、それぞれ別物だしね。

<strong>雁屋</strong>〜別物ですね。マグロについてはこの間「美味しんぼ」でも書いたんだけど、部位が違うだけで別の味になっちゃうからね。それも「寿司金」なんかでよくやってくれるんだけど、同じ中トロでも、３センチか４センチ場所が違っただけで味が全然違っちゃうんだな、あんな大きい魚だからさ。牛肉は部位が変わってもそんなめちゃくちゃ味は変わらないんだけど、なぜマグロはあんなに味が変わるかな。
　これもおもしろいんだけど、一般消費者を相手に試験をするわけだ。ミナミマグロ、冷凍で持ってくるマグロがあるでしょう。あれを解凍してお寿司にしたのがすごく人気があるんだよ。おいしいんだって。

<strong>小哲</strong>〜そうらしいね。

<strong>雁屋</strong>〜魚市場の人間も冷凍で持ってきたマグロの寿司が一番おいしいなんて言ってるんだよ。でも、近海の本マグロで獲りたてのは香りが違うと思うけどな。

<strong>小哲</strong>〜赤身で比べると、本マグロの赤身とミナミマグロとでは全然違うのがわかるよ。トロだと、ミナミマグロのトロっていうのは、本マグロの次に高級とされるんじゃなかったかな。

<strong>雁屋</strong>〜やっぱりミナミマグロには一種強いクセがある。それが好きな人は好きなのかもしれない。いがらっぽいっていったら言い過ぎだけど、極めてクセがあるよね。

<strong>小哲</strong>〜前に何かで読んだけど、そういう意味では、トロで本マグロの次に喜ばれてるのがミナミマグロ。だけど、ビンナガなんかになると、まったく別ものだからね。

<strong>雁屋</strong>から　しかし、寿司は寿司ダネもそうだけど、職人の握りかたによってもぜんぜん違ってくるだろう。

<strong>小哲</strong>〜そうそう、「美味しんぼ」でも、シャリをガチガチに握ってしまう職人の話がありましたよね。それじゃあ、寿司の握りかたについて、この続きは次回にお願いします。]]>
      
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   <title>寿司（その３）</title>
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   <published>2007-04-01T21:07:41Z</published>
   <updated>2007-04-01T22:08:19Z</updated>
   
   <summary>雁屋〜寿司っていうものが、なぜそこまで外国人にも訴えかけていくのか。そこのところ...</summary>
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      <![CDATA[<strong>雁屋</strong>〜寿司っていうものが、なぜそこまで外国人にも訴えかけていくのか。そこのところなんだけれども、要は、やはり酢飯の力だと思うんだな。あの味が外国人にもわかるんだよ。

<strong>小哲</strong>〜なるほど。酢って、レモンもそうだけど、生臭みを消したり、抑えてくれるから食べやすくなるんだよね。

<strong>雁屋</strong>〜いま外国で寿司のコンテストなんかやると、いろんな国の人間が出てきて握り寿司をつくるじゃない。見てると考えられないようなネタを乗せている。それでも下に酢飯があるとそれが寿司として通用しちゃうんだよ。カリフォルニアロールなんていうのがあったり、それから、スモークドサーモンを乗っけたりしてるのもある。あんなの考えつかないよ、我々日本人は。

<strong>小哲</strong>〜サーモンの寿司は昔ロンドンで食べたよ。市内に何軒か寿司屋があったんだけど、まぐろのトロが手に入らないのでトロの代用でピンクサーモンのトロを使って、それが、うまいんだよ。ドイツとかヨーロッパに長期駐在している商社の人間なんかわざわざロンドンまで食べに来るって言ってた。でも、最近は日本でもサーモンの寿司を出すところがあるよね。

<strong>雁屋</strong>〜サーモンならいいけどね。

<strong>小哲</strong>〜だけど、生のサーモンには虫がいるんだよね？

<strong>雁屋</strong>〜いるよ。サーモンはだいたいどの国でも北の方にいるんだけど、海の獣、海獣っているだろう、オットセイとかアザラシとか。そういうものの糞が寄生虫の卵を媒介するわけだよ。そういう海獣が棲んでいる海域を通ってきたサケの中にはその寄生虫をもらっちゃうやつがいるんだ。それが人間の体に入ってきちゃったりするんだよね。ところが、オーストラリアではサケを養殖してるんだけど、これは非常に清潔な海域なんだよ。オーストラリアのタスマニアだから、海がとってもきれいなわけだよ。普通、サケが病気になるとそこで薬を撒いたりするじゃない。それがいけない。ところが、そこはサケがちょっと病気になったなと思ったら、船で引っ張って別の海域に連れて行って、そこで治しちゃうんだよ。

<strong>小哲</strong>〜へえー、そういうことができちゃうんだ。

<strong>雁屋</strong>〜できるんだよ。そのサーモンが築地で一番高い値段がつくって言ってたよ。美味しいよ。

<strong>小哲</strong>〜そういえば、前にサケ釣りの取材でカナダへ行ったことがあるんだけど、バンクーバーの北の方のフィヨルドの入り江にバンガローを大きくしたようなロッジを係留してあって、それがいってみれば釣り宿ってわけ。お客はみんなアメリカの金持ちだから、そこまでは水上飛行機かヘリコプターでやって来て、毎日朝からモーターボートで釣りに出る。で、サケの群がいなくなると、そのロッジごとサケのいる海域に引っぱって行って、また適当なところに係留するわけ。やることがでかい。

<strong>雁屋</strong>〜だけど、あれは１日何匹とか、規則があるだろう。

<strong>小哲</strong>〜うーん、どうだったかな。ただし、サケ釣りの登録が必要だった。それに釣れててもせいぜい５、６匹だし。

<strong>雁屋</strong>〜だけど、一人でそんなに釣ったってしょうがないじゃない。

<strong>小哲</strong>〜それがね、釣った魚はロッジのオヤジに頼んでおくと燻製にしたのを缶詰にして、後から自分の国に送ってくれるの。

<strong>雁屋</strong>〜へえー、だけど刺身は食えないの？

<strong>小哲</strong>〜刺身は僕が包丁を持ってたから自分でつくって食べた。彼らはやっぱり刺身では食べないね。

<strong>雁屋</strong>〜だけど、寿司は江戸前だけに限らずに、大阪の寿司もうまいよな。昔、京都の鯖ずしを食べたら、ごはんが硬すぎてあんまり美味しくなかったんだけど、その後、大阪に行って吉野寿司に行って食べたら、こんなに美味しいもんかと思った。

<strong>小哲</strong>〜僕は京都の棒寿司も大好きだけどな。吉野寿司の押し寿司は京都と違ってバッテラがいいけど、こけら寿司がまた美味しい。だけど、京都の鯖寿司はそんなに硬いかなあ。

<strong>雁屋</strong>〜硬い硬い。飯がガチンガチンで食べてて苦しくなってくるよ。

<strong>小哲</strong>〜寿司っていうと、もともと大阪寿司のほうが古いんだけど、江戸前寿司の美家古で食べてて思ったのは、あそこはみんなタネに火を通してるじゃない。で、エビだったら、茹でたエビとシャリの間におぼろを入れるでしょ。若い頃は甘ったるくて好きじゃなかったんだけど、年をとるに連れて、ああいう美味しさがよくなってきた。で、あるとき思ったんんだけど、江戸前寿司って、いま全盛の生のタネばかり使う東京寿司と比べると、むしろ大阪寿司に近いんだね。

<strong>雁屋</strong>〜なるほどね。

<strong>小哲</strong>〜最近の東京の寿司は刺身の新鮮さがウリになってるけど、美家古みたいな江戸前寿司は、タネを煮たり、茹でたりして、料理として手を加えているでしょ。だから、江戸前寿司ってのは、最近の東京の寿司よりも、ずっと大阪寿司に近くて、そこに独特の美味しさがあると思う。

<strong>雁屋</strong>〜煮ハマとか美味しいよな。まぐろのズケもうまいしな。

<strong>小哲</strong>〜そうそう．最近は江戸前じゃない店でも、ズケを出すところが増えたよね。でも。エビはどこでもたいてい生だね。僕は、あの茹でたエビにおぼろをはさんだやつが、なんとも優しい甘味で好きなんだな。大人になってわかった味。

<strong>雁屋</strong>〜あれは美味しいねえ。あそこのお寿司は独特だな。僕は美家古の寿司は昔から好きだなあ。

<strong>小哲</strong>〜大阪寿司だったら、やっぱり吉野寿司ですか。

<strong>雁屋</strong>〜うん、あそこは美味しいね。ところが、今じゃ大阪で大阪寿司をやってるところはもう数軒しかないらしい。数が少なくなっちゃって、圧倒的にいわゆる江戸前の握り寿司屋になっちゃったって。酢飯の上に魚とかを載っけて食べるのは非常に訴求力があるじゃない。

<strong>小哲</strong>〜あ、それともう一つ、握り寿司が全国に広まった理由があるらしいんだ。前に、大阪の寿司屋さんから聞いたんだけど、終戦直後の食糧統制の時代には、外で食事をするときは配給された外食券を使い、指定された食堂でしか食べられなかったんだって。寿司屋の場合は外食券１枚につき握り寿司５個と海苔巻き５切れが一人前と決められていた。で、その場合の寿司というのは握り寿司とされ、それ以外の寿司は禁止された。そのせいで、日本中のすし屋が握りずしを作るようになり、統制が終わった後も、寿司といえば握りずしをさすようになったっていうんだよ。　

<strong>雁屋</strong>〜へえ，ほんとかね。僕の子どもの頃は寿司なんて贅沢品もいいとこで、大変なごちそうだったよな。食糧統制の時代に外食券で寿司が食べられたわけか。だけど、結局は、握りのほうが寿司ダネの種類も豊富だし、味も明快だし、訴求力という点で大阪寿司に勝ったってことなんだろうな。

<strong>小哲</strong>〜だけど、その後の展開は、早寿司といわれた江戸前寿司が、さらに手をかけない、刺身を切ってのせるだけの超早寿司に負けたってわけだよね。大阪寿司が握り寿司に負けたみたいに。


<em>つづく...</em>
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   <title>寿司（その２）</title>
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   <published>2007-03-25T09:00:34Z</published>
   <updated>2007-03-25T09:10:28Z</updated>
   
   <summary>シドニーの寿司ブーム 小哲〜じゃあ、前回の続きで、一番困るのは寿司のうまさを外国...</summary>
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      <![CDATA[<h3>シドニーの寿司ブーム</h3>

<strong>小哲</strong>〜じゃあ、前回の続きで、一番困るのは寿司のうまさを外国人に教えちゃったってこと・・・・・・その続きからいきましょうか。

<strong>雁屋</strong>〜僕がオーストラリアに行ったのは１９８８年なんだけど、その時は、まず、現地の人はお寿司なんてものは知らなかった。海苔巻の寿司さえ知らなかったね。だいぶ前だけど、子供たちがお世話になった小学校の校長先生一家をうちに招いて、いろいろ出した料理の中に海苔巻があったわけだ。そうしたら、校長先生の子どもたちが海苔巻の黒いのを気持ち悪がって、海苔をはがして中身だけを食べた。それが、いまやシドニーの町中いたるところにテイクアウトの海苔巻屋があって、オーストラリア人は当然のように海苔巻きを全部食べている。そして、さらに海苔巻を作ってるのは中国人とか韓国人で、日本人じゃないのが圧倒的に多いんだよね。中身も我々が食べているのとはまるで違うのが入ってる。

<strong>小哲</strong>〜韓国にも海苔巻があるじゃない。シドニーで売ってるのはそういうやつ？

<strong>雁屋</strong>〜いや、日本の海苔巻だけど、中に入っている具が違うんだよ。そして、もうひとつ、回転寿司が世界中に増えちゃったね。

<strong>小哲</strong>〜たしか、１９８０年代の始めだったと思うけど、ニューヨークに行ったとき、五番街に元禄寿司ができたってのがニュースになってた。あれはアメリカで寿司が一般的に広まった最初かもしれない。それまでは商社の人間が行くような日本人向けの寿司屋はあったけど、ふつうのアメリカ人が自分から行けるような店ってのはまだなかった。

<strong>雁屋</strong>〜今じゃオーストラリアだってあちこちに回転寿司があるよ。

<strong>小哲</strong>〜だけど、塾長がシドニーに移住した1988年頃にはテイクアウトの寿司も、回転寿司もなかったんでしょう。

<h3>シドニーで食べられる正当派江戸前寿司</h3>

<strong>雁屋</strong>〜８８年にはなかった。それがこの10年ぐらいであっという間に寿司がブームになっちゃった。で、シドニーにとってもおいしい寿司屋さんができたんだよ。彼は、本人が言うには、オーストラリア人の女性に日本で捕まって拉致されていったという、かわいそうな日本人の男でね。もともと寿司職人だったんだけど、オーストラリア人の女性と結婚しちゃったもんだからシドニーで開業した人で、大変に上手なんだよ。もし、彼がいま日本にいたら、おそらく寿司屋としてスターになれたと思う。そのくらい握った寿司の形もいいし、味もいい。京都の料理人の人がシドニーに来たときに僕がその寿司屋を紹介したら、その人は感心しちゃって、こんなお寿司があるのかって、シドニーにいる間、毎日店に行った。弟子たちも連れて行って、ここの寿司を食べて勉強しておけって言ってたよ。

<strong>小哲</strong>〜そんなにいい寿司屋がシドニーにあるなんて信じられないな。いわゆる正統な江戸前寿司で？

<strong>雁屋</strong>〜そう、全く正統な江戸前寿司なんだ。ぜんぜん崩してない。それでほんとにうまい。握った寿司の形も、真ん中がこんもりと高くなるきれいな形に握るんだ。

<strong>小哲</strong>〜横から見た形が扇紙の形をしているっていうけど、そういうんだ。

<strong>雁屋</strong>〜そう、きれいな山型ね。ネタも、シドニーの魚ってあまり脂がないんだけれども、彼はそういうのを選んで仕入れて、すごくおいしい寿司をつくる。で、彼はなんと、世界各地の料理コンテストとか料理の催事にオーストラリア代表で出ていくんだよ、寿司を持って。おかしいよね。

<strong>小哲</strong>〜たとえば、どんな国へ行くの？

<strong>雁屋</strong>〜たとえば、シンガポールとか、スペインとか、各国で開かれる食のフェスティバルに彼はオーストラリア代表で寿司を持って行くんだ。

<strong>小哲</strong>〜なんでオーストラリア代表が寿司でなの？

<strong>雁屋</strong>〜わからない。でも、オーストラリア代表で行くんだよ。

<strong>小哲</strong>〜オーストラリア料理を持ってじゃなくて。

<strong>雁屋</strong>〜何度も行ってる。ニドニーで非常に評判が高いんだけれども、その客はほとんどオーストラリア人だよね。

<strong>小哲</strong>〜しかし、オーストラリアは移民の国だから、もともとオーストラリア料理なんてのはないわけだ。イギリス系とか、ドイツ系の移民が多いんでしょ。だから、日本の料理だって日本系オーストラリア料理にといっても間違いじゃないんだ。

<strong>雁屋</strong>〜その店のお客さんは８割以上がオーストラリア人だね。オーストラリア人は寿司って最高の料理だと思ってるんだ。

<h3>外国人にも訴えかける寿司の魅力</h3>

<strong>小哲</strong>〜だけど、寿司にしておいしいネタってあるじゃない。オーストラリアで、寿司用の魚が揃うの？

<strong>雁屋</strong>〜日本みたいに脂っこいマグロはないけれどもね。

<strong>小哲</strong>〜でも、いちおうマグロはあるんでしょう、オーストラリアに。

<strong>雁屋</strong>〜あるけれども、脂っこくて一番いいのは全部日本に行っちゃうんだよ。現地で食べるマグロは、こっちでいうところのキハダマグロかな、脂はあまりないんだよね。でも、赤身がおいしい。それから、現地で捕れる白身の魚もおいしいし、ぜんぜん引けをとらない。

<strong>小哲</strong>〜じゃあ、一応、寿司のタネは揃うわけだ。

<strong>雁屋</strong>?サバなんかもおいしいし、なんでもあるね。

<strong>小哲</strong>〜それはこの10年の話だから、すごい進歩だねえ。

<strong>雁屋</strong>〜とにかく、その寿司屋さんに行くっていうのは、オーストラリア人にとって特別のことなんだね。もう、大ごちそう。

<strong>小哲</strong>〜じゃあ、値段も高い？

<strong>雁屋</strong>〜値段も高い。オーストラリア人の常識からすれば、すごく高いんだけれども、それにしても、すごくおいしいものを食べても日本円で５、６千円で済むわけだ。

<strong>小哲</strong>〜それならば、そんなに高いわけじゃない。それよりも、魚なんてほとんど食べなかったオーストラリア人までもが、寿司を食べるようになったってことは大変なことだよね。マグロの争奪戦の問題もあるけれど、やっぱり、それだけ寿司に魅力があるってことなんだろうね。

<strong>雁屋</strong>〜そうなんだよ。じゃあ、いったい何が外国人にまで訴えかけていくのか。なんだと思う？

<strong>小哲</strong>〜うーん、なんだろうな・・・・・・・・・・


<em>つづく</em>
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   <title>寿司（その１）</title>
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   <published>2007-03-21T11:24:33Z</published>
   <updated>2007-03-21T11:29:16Z</updated>
   
   <summary>酢飯の発明が偉大だった 小哲〜寿司には、鮒寿司みたいなものもあれば、押し寿司や、...</summary>
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      <![CDATA[<h3>酢飯の発明が偉大だった</h3>

<strong>小哲</strong>〜寿司には、鮒寿司みたいなものもあれば、押し寿司や、ちらし寿司なんてのもあって、実際にはいろんな種類があるんだけど、一般的に寿司というと、今では誰もが握り寿司を思い浮かべます。それと、海外でも寿司が大人気なんだけど、寿司というと、やっぱりみんな握り寿司だと思ってる。

<strong>雁屋</strong>〜そうなんだ。だけど、実は寿司というのは非常に古い歴史があって、元々はなれ寿司といって、ごはんと一緒に発酵させて、半年とか、琵琶湖の鮒寿司などは３年近く時間がかかる。それだけ時間をかけて発酵させるから美味しいんだけれども、場合によってはものすごく臭いよね。鮒寿司なんかは、あの臭いのがたまらなく美味しいんだけど、中には匂いが強すぎて食べられないという人もいる。大体、発酵食品ていうのは、熱狂的に好きな人がいれば、反対に、絶対にだめだって人もいる。納豆だって食べられないない人もいるし、チーズだって、発酵させて臭いが強くなったのが僕は大好きだけど、それが嫌だという人がいて、発酵食品はとにかく好き嫌いがあるんだよね。ところが、江戸前の寿司は、なれ寿司ではなく、早寿司という分類に入る。なぜ早寿司かというと、なれ寿司は半年以上待たなきゃできないんだけど、江戸前の握りはその場で酢飯をつくって握れば寿司になっちゃうので早いから早寿司っていう。で、考えてみると、この酢飯の発明こそが偉大だった。

<strong>小哲</strong>〜そうだよね、発酵させる代わりに酢を入れちゃうんだから、言ってみれば、手抜きのインスタント寿司でしょ。だけど、その後の寿司の歴史を考えると、これがあったから、今みたいな寿司の隆盛があるわけだ。してみると、酢飯の発明は寿司の革命といってもいいよね。

<strong>雁屋</strong>〜そう、大革命だよ。酢飯を発明した人は誰だか知らんけど、江戸時代中期だろう。これは大変な発明品であり、革命だと思うんだよね。酢飯の上に何か乗っけるだけでなんでもお寿司になっちゃうんだもの。だから、いろんな形のお寿司があるけれども、野菜を載せてもお寿司になってしまうし、肉を載せてもお寿司になる。ここで一気に料理としての幅が広がった。酢飯の発明っていうのはすごいね。

<strong>小哲</strong>〜たしかに、偉大だね。酢飯に乗せればなんでも美味しくなっちゃうというんだから。

<strong>雁屋</strong>〜昔よく食べた五目寿司っていうのは、刻んで煮たニンジン、ゴボウ、レンコン、油揚げ、シイタケ、そういうものを酢飯に混ぜて、上にサクラデンブと金糸たまごをのせたもの。あれはおいしかったね。誕生日にいつも母親がつくってくれて。

<strong>小哲</strong>〜そうそう、五目寿司というのは、誕生日とかお祝いの時に作ったもんなんだよね。

<strong>雁屋</strong>〜誕生日は必ず五目寿司だった。それだって酢飯があればこそだ。

<strong>小哲</strong>〜そう考えると、酢飯ってのは一種のコロンブスの卵だけど、最初に思いついた人間は偉大だよね。

<strong>雁屋</strong>〜天才だな。

<h3>握り寿司は、寿司の長い歴史の中では最近の食べ物</h3>

<strong>小哲</strong>〜だけど、歴史的に見ると、握り寿司が発明されたのは江戸時代でも終わり頃なんでしょ。

<strong>雁屋</strong>〜最初は深川に松が寿司というのが現れ、その後で与兵衛寿司が両国にできたのが文政から天保の時代だっていうから、もう19世紀に入った江戸の末期だよね。その前は、歌舞伎にも寿司屋の弥助というのがが出てきて、寿司のことを符丁で弥助って呼んだりしていたんだけど、その頃はまだ鮎寿司だから、握りじゃなくてなれ寿司だったんだな。

<strong>小哲</strong>〜とすると、握り寿司というのは、千数百年にわたる寿司の歴史の中では、ごく最近の食べ物なんだね。

<strong>雁屋</strong>〜それから、最初は今みたいに高級じゃなかった。江戸草紙なんかを見ると、屋台で浪人者とか尻っぱしょりをした職人が食べている図がある。よく、美家古寿司の先代の親方が言ってたけども、昔は寿司なんていうのは、３個か４個食うもので、それで一食にするもんじゃなかったって。お茶を飲んで３、４個食べる。ちょっとした腹つなぎに食べるもので、それがディナーだったり、ランチだったりということはなかったんだって。

<strong>小哲</strong>〜しかし、そうだとすると僕は今のほうがいいな。寿司は酒を飲みながらゆっくりと食べたほうが楽しいじゃない。立ち食いで４個ぐらいをつまむだけじゃ、せっかくの寿司なのに物足りないよ。

<strong>雁屋</strong>〜ただ、その頃はネタが限られていたからね。マグロとコハダぐらいのものだろう。そうしたら何個も食えない。

<strong>小哲</strong>〜あとは煮はまぐりとか、あなごみたいに火を通したものね。なにしろ、昔は冷蔵庫がなかったから、生じゃなくて、煮るとか、酢でしめたってことだよね。

<strong>雁屋</strong>〜そう、昔は生のネタが限られていたけど、いまはネタがいろいろ使えるようになったから一食の料理として食べられるようになった。そもそもは、なれ寿司だって保存のためのものだったんだから。

<strong>小哲</strong>〜でも、その結果、最近の寿司は、料理として酢飯とのバランスを考えながらネタに手を加えることをせずに、単に酢飯の上に刺身を乗っけるだけの、早寿司よりもさらにインスタントな刺身寿司になっちゃった。

<strong>雁屋</strong>〜新鮮なネタだったら、握るだけでも美味しいからね。そこが違う。しかしね、一番困るのは、寿司のうまさを外国人に教えちゃったってことだよね。

<strong>小哲</strong>〜アハハハハ、そういえば、そうだ。

<strong>雁屋</strong>〜とにかく、そのせいで世界中にマグロの争奪戦が起こっちゃってるわけじゃない。マグロが絶滅種に指定されて、そのうち日本人も食べられなくなるんじゃないかっていうぐらいの騒ぎだからな。

<strong>小哲</strong>〜そう、それが困るんだよね。じゃぁ，そのへんの話は、次回に続けることにしましょう。


<em>つづく...</em>]]>
      
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   <title>醤油（その６）</title>
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   <published>2007-03-10T06:23:31Z</published>
   <updated>2007-03-12T04:27:10Z</updated>
   
   <summary>豆腐だって醤油あってのもの 雁屋〜オーストラリアから日本にもどってくると、たまに...</summary>
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      <![CDATA[<h3>豆腐だって醤油あってのもの</h3>

<strong>雁屋</strong>〜オーストラリアから日本にもどってくると、たまにスーパーを覗いてみるんだけど、昔とちがって最近はいい醤油が並ぶようになったね。

<strong>小哲</strong>〜そうそう、この10年くらいでほんとうによくなった。いわゆる「グルメブーム」が単なる底の浅い外食ブームでしかなってことで、塾長も嫌っていたけれど、でも、全体的にみると、それだけ消費者の食に対する意識が高まったんだと思う。

<strong>雁屋</strong>〜銘柄も、地方の小さな銘柄がたくさん並ぶようになった。いいことだよな。いままでみたいに、大メーカーの独占じゃなくなって、いろんなところの醤油が並ぶようになった。ただ、ちょっと高いんだけど、でも、楽しみが増えていいことだよ。ついでにいうと、豆腐も醤油がなくちゃ美味しくないんだけど、その豆腐も、最近はスーパーであっても、昔とくらべたらずいぶん美味しいのが並ぶようになった。

<strong>小哲</strong>〜そうそう、最初はデパ地下がいいものを置きはじめたんだけど、このごろはスーパーでも、美味しい豆腐を置くようになった。

<strong>雁屋</strong>〜僕が食べたのは、ふざけた名前の豆腐屋なんだ、「風に吹かれてなんとか・・・・・・」とかいう名前でさ。

<strong>小哲</strong>〜あッ、「風に吹かれて豆腐屋ジョニー」っていうんじゃないの、へんな形のパーケッジの。

<strong>雁屋</strong>〜そう、そう、それだ。「風に吹かれて豆腐屋ジョニー」。あと、「喧嘩一番」なんとかって、勝手に喧嘩売ってどうするって、よくわからないんだけど、これがうまいんだよ。

<strong>小哲</strong>〜あれ、食べてみたの？

<strong>雁屋</strong>〜食べた、食べた。ひとおとり全部食べたよ。結構うまいんだよ。ひところスーパーの豆腐なんて食うもんじゃないと思ったけど、今は美味しくなったね。

<strong>小哲</strong>〜そう、最近は、いい大豆に天然のニガリを使い、消泡剤も使ってない豆腐が、スーパーでも並んでいるんだよ。いますごくいいのがある。だけど、豆腐も醤油がないと寂しいよね。

<strong>雁屋</strong>〜味噌田楽みたいにして食べてもいいよ。

<strong>小哲</strong>〜あと、ごまだれとかもあるけど、やっぱり醤油だよな。田楽もそうだけど、飽きちゃうでしょ。

<strong>雁屋</strong>〜田楽みたいに焼けば別だけど、でも、しょっちゅう食べるんだったやっぱり醤油だなあ。冷ややっこは毎日食べても飽きないもんね。うちはほとんど毎日食べてるよ。

<strong>小哲</strong>〜そうでしょう、だから、やっぱり醤油って偉大なんですよ、毎日食べたって飽きないんだから。世界中探したって、そんな万能調味料ってほかにないですよ。

<strong>雁屋</strong>〜とにかく、日本人にとって醤油は欠くべからざるものであって、醤油がなかったら日本の食生活、食文化はまず崩れちゃうんじゃないか。

<strong>小哲</strong>〜成り立たないどころか、日本から醤油が消えたら暴動が起きるんじゃないかな。

<strong>雁屋</strong>〜醤油騒動が起きるね。ところがだ、日本の食文化の一番重要な要素を担ってるっていうのに、醤油の原料である大豆の95％が輸入さている。

<strong>小哲</strong>〜そう、大問題ですね。

<strong>雁屋</strong>〜日本の味、味覚の根幹である醤油の原料の大半が輸入に頼っているという現状は嘆かわしいものがあるよ。国産大豆でつくった醤油なんてほんとうに僅かだもんね。　

<strong>小哲</strong>〜そう考えると日本の食卓というのは、非常に危うい状況にあるわけだ。あらためて食糧自給問題を考えないといけないですね。

<strong>雁屋</strong>〜農業政策がまずかったんだよ。いまでも、アメリカとかオーストラリアとかのあの大農法でやれば安くできるに決まってるわけだから。

<strong>小哲</strong>〜醤油の話をしてたら、またこういう話になっちゃった。

<strong>雁屋</strong>〜なっちゃうんだよ。だから、僕が言うでしょう。食べものから見ると社会がよく見えるって。食べものは社会に密接に結びついてるわけだから、食べものの矛盾を突くと社会の矛盾に突き当たるわけだよ。醤油ひとつとってみても、日本の社会、農業生産のあり方、日本のいまの社会の構造、そういうところに結局突き当たっちゃうんだよ。

<strong>小哲</strong>〜醤油一滴であろうと、米一粒であろうと、日本の社会のありかたを映しだしているってわけだ。というわけで、またまた大きな宿題を背負わされたかたちになりましたけど、醤油の話は終わりたいと思います。


（了）]]>
      
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   <title>醤油（その５）</title>
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   <published>2007-03-02T02:15:22Z</published>
   <updated>2007-03-05T07:10:52Z</updated>
   
   <summary>魚醤なんてものもあった 小哲〜ところで、醤油の一種で、魚醤なんてのもありましたね...</summary>
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      <![CDATA[<h3>魚醤なんてものもあった</h3>

<strong>小哲</strong>〜ところで、醤油の一種で、魚醤なんてのもありましたね。醤油は大豆で作るけど、魚醤は魚から作る。で、魚醤は中国だけど、東南アジアに行くと、ベトナムではニョックマム、タイではナンプラー、フィリピンではパティスと、それぞれの国ごとに、同じように魚で作った醤油がある。

<strong>雁屋</strong>〜東南アジアに行って衝撃的なのは魚醤のうまさ、魚醤を使った料理のうまさだよね。日本でも、しょっつるとか、きびなご&#37292;油とか、イカで作ったいしるなんてのがあるけど、要するに魚醤ですよ。しかし、魚醤ってなんで日本ではあまり一般的にならなかったんだろうな。

<strong>小哲</strong>〜うーん、東南アジアみたいには種類もないし、限られた地域でしか使われてないですね。だって、魚醤って本来もっと南の方の国のものでしょ、発酵調味料として。

<strong>雁屋</strong>〜でも、あったっていいじゃない。

<strong>小哲</strong>〜高知には、おいしい塩からがあるから、魚醤があってもよさそうなんだけど、ないなあ。

<strong>雁屋</strong>〜日本では、よく知られているのもとして、いしる、しょっつる、きびなご&#37292;油ぐらいのもんか。

<strong>小哲</strong>〜伝統的なものはねえ。

<strong>雁屋</strong>〜しかし、歴史でいえば、醤油よりも魚醤の方がずっと古いらしいんだよね。作り方が簡単だから、当然ではあるけれど、この魚醤ってやつがバカにならない。

<strong>小哲</strong>〜そう、これがじつに料理を美味しくしてくれる。

<strong>雁屋</strong>〜ほんとうにうまいんだよ。一番いい魚醤はねえ、ベトナムに小さい島があるんだけどさ、そこでつくってる魚醤が一番おいしいの。なぜおいしいかっていうと、そこで使う魚は、日本でいうキビナゴなんだよ。きれいな色をした、あのキビナゴね。全部それでつくるんだけど、これが、すごくおいしいんだ。

<strong>小哲</strong>〜それは淡水魚じゃなくて、海水の魚だよね。ベトナムとかタイの方ではフナみたいな池の魚、淡水魚を使ってる魚醤もあるじゃない。

<strong>雁屋</strong>〜池の魚？

<strong>小哲</strong>〜そう、淡水魚ね。あと、タイとかフィリピンの市場に行くと、メダカみたいなのとか、いろんな種類の魚醤がかめに入って並んでるんだよね。

<strong>雁屋</strong>〜僕が前にタイで見たナンプラーは、インチキくさかったな。

<strong>小哲</strong>〜なんで、作るところを見たの？

<strong>雁屋</strong>〜あのね、看板にはキビナゴだけが出てるんだよ。ところが、中はいろんな魚を混ぜちゃってるんだ。イカでつくるのもあるよ、能登半島のイシルみたいに。

<strong>小哲</strong>〜だけど、それは、ウイスキーでいえば、シングルモルトとブレンドウイスキーの違いなんじゃない？

<strong>雁屋</strong>〜違う違う、そんなんじゃない。いい大豆を使った伝統的な醤油と、大量生産の醤油ほどの違いだよ。

<strong>小哲</strong>〜そうか、使っている魚の種類によっていろんなタイプの魚醤があるけれど、混ぜちゃってるのは見たことないな。

<strong>雁屋</strong>〜で、そもそも魚醤というものは、ソースというか、そういうものの中では東南アジアから始まって、これは醤油よりもはるかに古いわけですよ。というのは、つくり方が簡単なんだよね。魚に塩をぶち込んで放っておけば発酵してできちゃう。一番古い発酵食品の一つなんだよ。ところが、醤油は発酵の行程が複雑で、麹を使ったりなんかするでしょう。技術的に高度なものであって、しかも大豆と麦を生産するという農業体制がないとだめだというところがあるから、醤油の方がずっと後から出てきた。しかし、魚醤は東南アジアでは昔から使われていて、一番古い調味料だよね。だけど、僕がいままで体験した中では、ベトナムのニョクマムっていうのが一番おいしいね。

<strong>小哲</strong>〜その、キビナゴみたいな魚で作ったやつ。

<strong>雁屋</strong>〜そう、見たところキビナゴだよ、あれは。小さい魚、それだけでつくるニョクマムがあるんだけど、それが一番おいしい。

<strong>小哲</strong>〜あと、小っちゃなフナみたいな魚のもあれば、ちょっと違うけど、小エビで作ったのもあるでしょ。これは蝦醤っていってるけど。

<strong>雁屋</strong>〜いろいろある。でもね、キビナゴでつくったのが一番おいしい。シドニーは東南アジアの人たちがたくさんいるから、タイのものもあるし、ベトナムのもあるし、それからインドネシアとか、いろんな魚醤が並んでるわけですよ。シドニーには醤油があるなんてことで驚いちゃいけないんで、スーパーに行けば魚醤が並んでるわけだよ。その中で多いのはタイのだけどね。残念ならか、ベトナムのおいしいニョクマムをおいてるところはなかなかないけど。それと、魚醤の面白いところなんだけど、魚醤は食べたときはおいしいと思うじゃない。だけど、手についたら後で生臭いんだよ。

<strong>小哲</strong>〜そうそう、それが不思議なんだけどさあ、生のままだと猛烈に臭いんだけど、いったん料理して熱を加えると、これが嘘みたいに美味しくなっちゃう。

<strong>雁屋</strong>〜手についたのを洗い忘れたら、後ですごい臭い。あれは蛋白質特有の臭いだね、フグもそうじゃない。フグなんで、フグチリを食べる時に竹の柄でできてるチリレンゲを使うだろ。柄が竹で、すくうところは真鍮でできているやつね。それを使ってフグチリを食べて、その後でよく洗ったつもりでも、うっかりしてると翌日、竹の柄と真鍮のつなぎ目のところにフグの汁が残っているとすさまじい臭いがするんだよ。ものすごい臭い。それと同じだよ、魚醤は。

<strong>小哲</strong>〜じゃあ、ふぐを食べたあとのチリレンゲに塩を振っておけばいい。フグの魚醤風味の美味しいチリレンゲになってるかも・・・・

<strong>雁屋</strong>〜そうはいくもんか、その前に、真鍮がだめになっちゃうよ。

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   <title>醤油（その４）</title>
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   <published>2007-02-23T01:24:32Z</published>
   <updated>2007-02-23T02:14:59Z</updated>
   
   <summary>魚料理が美味しいのも醤油のおかげ 雁屋〜醤油だけど。僕らが魚をこんなに食べるよう...</summary>
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      <![CDATA[<h3>魚料理が美味しいのも醤油のおかげ</h3>

<strong>雁屋</strong>〜醤油だけど。僕らが魚をこんなに食べるようになったのは、醤油のおかげですよ。あなたはさっき焼き魚に醤油をかけちゃいけないなんて言ったけど、これは違いますよ。例えば、アジの干物だって、そのまま食ってもおいしいんだけど、そこに香りづけにちょっと醤油をたらすとまた味がおいしくなるんだよ。

<strong>小哲</strong>〜いや、おいしいのはわかるんだけど、醤油はなんでも同じ醤油味にしてしまうから、もったいない・・・・・

<strong>雁屋</strong>〜もったいないかもしれないけど、それはそれでまたおいしくなるのよ。特にちょっと味が落ちてるなあなんて思う魚は醤油をかけると……

<strong>小哲</strong>〜いや、そこは醤油のスゴイところだと思うんだな。早い話が、醤油は美味しすぎて困る・・・・・・・

<strong>雁屋</strong>〜とにかく、なぜ日本人がこんなに魚を食べるかっていったら、やっぱり醤油があるから調理してもおいしいわけだし。西洋で魚の調理をするとなると、結局、バターで焼いてとか、あとはブイヤベースみたいに煮込んじゃうとかそんなものでしょう。日本の場合は、醤油があるおかげでいろんな変化に富んだ調理法ができるんだよね、刺身もあれば鍋もできるしね。魚だけを煮つけることもできるし。それから、バターで焼いて醤油をかければまたおいしくなる。醤油があるおかげで野菜を一緒に煮てもおいしくなっちゃうしね。例えば、ブリ大根みたいなものだって考えられないよ、醤油がなかったら。醤油のおかげで料理の幅が広がり、奥行が深くなるんだよね。

<strong>小哲</strong>〜たしかに、その通りなんです。もしも醤油がなかったら、刺身とか寿司は、あんなに美味しく食べられないですからね。絶対に無理。

<strong>雁屋</strong>〜シドニーの家で、息子たちの友達のオーストラリア人の子どもが遊びに来ると、彼ら、ごはんにいきなり醤油をかけちゃうんだよ。僕が「それはだめ、それはとっても行儀の悪いことだから」って言うと顔色が変わってね。いちおうみんな僕のこと偉いと思ってるから、僕が「あっ、それはだめ！」なんて言うとエッて顔をしてね。だけど、そのうちみんな平気で醤油をかけちゃうんだよな。でもさ、それは行儀はよくないんだけど、実はうまいんだよ。（笑）

<strong>小哲</strong>〜子供の頃、海苔でごはんを食べるのが好きでね。で、あるとき、なんでそんなに美味しいのか不思議に思って、試しに海苔なしに醤油だけでごはんを食べみたら、やっぱり美味しくってね。その時、はじめて醤油の美味しさを知って感動したのを覚えている。

<strong>雁屋</strong>〜それじゃあ、熱いごはんにバターを落として醤油をかけて食べてごらん、おいしいから。

<strong>小哲</strong>〜もちろん、やりましたって。

<strong>雁屋</strong>〜大体、うな重で最後にたれの染みこんだごはんが残るじゃないか。あれがうまいんだから。醤油の染みこんだごはんてうまいよなあ。

<strong>小哲</strong>〜しかし、もしもあれが塩味だったら、ああはいかないもんなあ。海苔だって塩じゃ食えないし。

<strong>雁屋</strong>〜いかない、いかない。だから、ごはんに醤油をかけちゃいけないなんて言うけど、考えてみれば、素朴に醤油の味がわかってるオーストラリア人は偉いのかもしれないな。僕たちは行儀がどうのってことが先に出てきちゃうから。

<strong>小哲</strong>〜つまり、マナーや形式にしばられていない子供や外国人のほうが、時として、ありのままの美味しさに接することができるってわけか。

<h3>醤油のこげた匂いが日本人は好き</h3>

<strong>雁屋</strong>〜それからもう一つ、醤油の焦げた匂いっていうのは日本人にとってたまらないものなんだよ。

<strong>小哲</strong>〜おせんベいなんか、そうだよね。

<strong>雁屋</strong>〜おせんべいどころか、焼きとりだって、うなぎだってそうだろ。

<strong>小哲</strong>〜餅もそうだし、焼におぎりなんてのもあるね。

<strong>雁屋</strong>〜あの醤油とか味噌の焦げた匂いってのが、日本人にはたまんないんだよ。焼き餅の匂いもそうだし、それから、どこかから醤油の焦げた匂いがしてくると日本人は食欲が沸くわけだよ。味噌もそうだしさ。

<strong>小哲</strong>〜銀座の７丁目あたりに夜行くと、屋台で餅を焼いて売ってるじゃない。

<strong>雁屋</strong>〜あるある。しかし高いなあ、あれ。１個１００円だぜ。

<strong>小哲</strong>〜でも、あれって実際に食べると美味しくはないんだろうけど、匂いだけはいいんだよね。だから、つい買いたくなる。

<strong>雁屋</strong>〜いや、私はよく買いますよ。１個１００円もするんだ。

<strong>小哲</strong>〜え、あんなところで買ってるんだ、しょうがないなあ。

<strong>雁屋</strong>〜銀座で飲んだあとさ、ついつい。

<strong>小哲</strong>〜やっぱりあの匂いに負けたってわけだ、塾長といえども。日本人はみんなそうなんだろうな、ほんとに。あと、縁日で売ってる焼とうもろこしなんてのもあるじゃない。あれも根強い人気があるね。

<strong>雁屋</strong>〜焼とうもろこしね。焼きとりも、うなぎもそうだけど、ああいう醤油系のものの焦げた匂いっていうのはたまらないんだよ。それこそ日本人の魂を揺さぶるかおりですね、あれは。

<strong>小哲</strong>〜そういえば、うなぎ屋の前で、うなぎを焼く煙をおかずに飯を食おうとする男の話が落語にあったでしょ。それを見たうなぎ屋の主人が代金を置いて行けっていうと、男が代金だよといってチャリンとお金の音を聞かせるって話ね。

<strong>雁屋</strong>〜あったあった。うなぎの煙で飯が食いたいと思うほどだから、つまり、醤油の焦げた匂いは今も昔も日本人の胃袋と魂を揺さぶるってわけさ。たかが調味料で、そこまでのものってのは、世界中でも醤油くらいのものだろう。

<strong>小哲</strong>〜そうだよね。となると、美味しんぼの究極のメニュー作りじゃないけど、醤油こそは日本人が後世に残す永遠の文化遺産の筆頭ですね。


<em>つづく...</em>]]>
      
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   <title>醤油（その３）</title>
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   <published>2007-02-17T09:35:04Z</published>
   <updated>2007-02-19T02:18:19Z</updated>
   
   <summary>牛肉には醤油が一番 雁屋〜前回、羊と醤油の話をしたけど、僕が思うのに、牛肉に一番...</summary>
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      <![CDATA[<h3>牛肉には醤油が一番</h3>

<strong>雁屋</strong>〜前回、羊と醤油の話をしたけど、僕が思うのに、牛肉に一番よく合う調味料は醤油だよ。

<strong>小哲</strong>〜明治時代に、牛肉を食べようってことになったときに、醤油がなかったら日本人は獣臭くて食べられなかったと思うな。

<strong>雁屋</strong>〜そう。でも最初の牛鍋というのは味噌だよ、横浜でやったのはね。

<strong>小哲</strong>〜たぶん猪鍋の要領でやったんじゃないかと思うんだな。でも、結局はすき焼きみたいに醤油味になっちゃったもんね。

<strong>雁屋</strong>〜ステーキだって、僕の家でステーキを焼くときは、最後にブランデーをかけて肉が燃えるところを取り出して、鍋に残った肉汁とブランデーに醤油を足して、それをたれにして食べる。これがうまいんだよね。それから、僕が一番好きなのは、牛肉の佃煮。生姜と醤油で煮たやつ。あれは僕の家の常備菜なんだけど、牛肉っていうのはほんとに醤油が一番合うと思うな。

<strong>小哲</strong>〜うん、合うよね。僕は、若い頃はステーキは塩と胡椒に限るって思ってたんだけど、最近はバター醤油のほうがよくなっちゃった。なんたってバター醤油味の肉汁にご飯をからめて食べると、これがもう旨くてたまんない。で、結局、塩胡椒派から醤油派に戻っちゃった。

<strong>雁屋</strong>〜例えば、牛肉のすじ肉の煮込みってあるじゃない。いわゆる煮込み。あれは味噌仕立てのと醤油仕立てのがあるけど、醤油仕立ての方がはるかにうまいもんね。醤油で煮た牛肉っていうのは２、３日置くと香りがよくなっておいしくなるんだよね、つくったその日よりも。

<strong>小哲</strong>〜ああ、そうかなあ。味がしみこむってことじゃなくて？

<strong>雁屋</strong>〜そうじゃなくて、香りがね、熟れるっていうのか発酵するっていうのか、味がまた変わってきてすごくいい香りになる。

<strong>小哲</strong>〜へえ、そんなふうに変わるの。

<strong>雁屋</strong>〜すごくよくなる。煮てすぐ食べるよりも２、３日置いて食べた方がおいしい。

<strong>小哲</strong>〜味噌は強すぎて、牛肉の味を殺しちゃうんじゃないかなあ。

<strong>雁屋</strong>〜いや、そんなことないよ。うちは昔よく味噌漬けなんてやったけど、おいしいよ、あれは。

<strong>小哲</strong>〜そういえば、味噌漬け肉を炭焼きにするとおいしいもんなあ。

<strong>雁屋</strong>〜おいしいよ、殺しやしないよ。

<strong>小哲</strong>〜昔、江戸時代に、彦根の殿様は寒中見舞いとして、将軍や親藩に、なんと牛肉の味噌漬けを贈ってたんだって。だから、下々には肉食を禁じていたけど、お城の中では牛肉を食べていて、しかも味噌漬けだったというんだよ。

<strong>雁屋</strong>〜すき焼きは、みんな醤油を使うじゃない。だから、それに慣れちゃってるから、味噌仕立てはまずいんじゃないかと思うけど、そんなことはないね。味噌仕立ての汁の中に牛肉の薄切りを入れて食べてもうまいしさ。だから、牛肉と野菜を炒めて、そこに味噌を入れてごらん、うまいから。

<strong>小哲</strong>〜うん、それはうまいだろうな。

<strong>雁屋</strong>〜すごくうまい。だから、味噌が必ずしも牛肉に合わないっていうんじゃなくて、単にすき焼きが受けちゃったってことじゃないかなあ。すき焼きの場合は、たしかに味噌より醤油の方が軽快でいいもんね。

<strong>小哲</strong>〜塾長はすき焼きはあんまり好きじゃないって言ってるけども、でも好きなことは好きなんだね。

<strong>雁屋</strong>〜好きは好きだよ。ただ、外で、いわゆるすき焼き屋に行こうとは思わないな。もったいなくて、そんなの。自分の家でつくった方がうまいんだもん。いい肉で自分の家でつくった方がはるかにうまいよ。

<strong>小哲</strong>〜それは僕もそう思う。すき焼き屋だと仲居さんが砂糖をドバッて入れるじゃない、澄ました顔で。あれやられると、もう泣きたくなるよね。

<strong>雁屋</strong>〜とにかく、そういう風に、自分の家でつくった方がうまいものは外では食べない。これが原則だな。

<strong>小哲</strong>〜そう、家庭の幸福のためにもね・・・・・・・・]]>
      
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   <title>醤油（その２）</title>
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   <published>2007-02-09T04:03:10Z</published>
   <updated>2007-02-09T06:04:24Z</updated>
   
   <summary>羊肉としょうゆ 雁屋〜醤油で思い出したんだけど、いまから20年ぐらい前にオースト...</summary>
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      <![CDATA[<h3>羊肉としょうゆ</h3>

<strong>雁屋</strong>〜醤油で思い出したんだけど、いまから20年ぐらい前にオーストラリアのボーダータウンで、僕の友達のエカードがやっている羊の食肉処理場を見学したことがあってね。で、羊の処理行程を見たあとで、羊を食べてみるかって言われたから、それじゃあ刺身にしてくれって言ったんだ。そうしたら、エカードがびっくりしちゃってさ。田舎町で人口は２、３千人しかいない町なのに、あわてて町のスーパーに行ってしょうゆを買ってきたんだよ。

<strong>小哲</strong>〜エッ、ボーダータウンでしょうゆを売ってたの！？あんなオーストラリアの田舎町で。僕も前に行ったことがあるけど、あそこは牧場と羊の食肉処理場で成り立っている町だから、住民のほとんどが処理場で働いているっていってたよ。

<strong>雁屋</strong>〜そう。それで、羊の肉のおろしたのを刺身にして食わしてくれたの。

<strong>小哲</strong>〜刺身で食いたいって言ったら、ちゃんと日本式の刺身で食べさせてくれたんだ。

<strong>雁屋</strong>〜そうそう。

<strong>小哲</strong>〜あんな小さな町で、信じられないな。僕はさ、刺身っていうから、てっきりタルタルステーキみたいな、そういうのかと思った。

<strong>雁屋</strong>〜違う、違う。日本の刺身を食わせろって言ったんだよ。そうしたらあんな田舎町なのにスーパーでちゃんと醤油を買ってきたもの。

<strong>小哲</strong>〜言うほうも、言うほうだけど、ちゃんとしょうゆを買ってきたってのも、それはすごいことですよ。

<strong>雁屋</strong>〜そう、すごいことだよ。だけど、もう20年ぐらい前の話だよ。僕がオーストラリアに行ったばっかりの頃だもの。そうそう、エカードの兄さん、エリックに「ここで羊の刺身を食ったの、誰かいるかい」って聞いたら、「いない、いない、お前だけだ」って。白衣を着て処理したての羊を刺身で食いたいって言ったんだから。でも、わざわざ醤油を買いに行ったからね。

<strong>小哲</strong>〜で、味はどうだったの、美味しかった？

<strong>雁屋</strong>〜いや、うまいうまい。ラムの刺身は最高だよ。

<strong>小哲</strong>〜そうかあ。だけどラムを焼いたときは、あの匂いと醤油は合わないと思うんだよね、僕は。味がぶつかっちゃう。

<strong>雁屋</strong>〜いやあ、うちでいちばん人気のあるバーベキューの材料はラムなんだよ。ラムを酒と醤油に一晩漬けておくの。それを翌日焼くのね。これが美味しいんだよ。ものすごく美味しい。それを食わせると日本から来たやつは、美味しい、美味しいって何本も食うよ。ラムのラックのところがあるだろう、脇腹のところ、骨をつけたままスライスしたやつね。それをやると日本人も何本でも食うよ。オーストラリア人も大好き。それから、ポークのスペアリブも醤油で味つけるとおいしいよ。

<strong>小哲</strong>〜ポークのスペアリブはいいんだよ、豚はどうにでもできるから。だけど、ラムはどうもしょうゆとは合わないな。

<strong>雁屋</strong>〜いやいや、やってごらん。うちではすごく評判いいよ。

<strong>小哲</strong>〜じつは、日本でなぜラムが流行らないか、前に雑誌に書いたことがあるんだ。何故好きにならないかっていうと、みんな醤油で食っちゃうから、ラムの味と醤油の味がぶつかる。塩とスパイスで食うとうまい。

<strong>雁屋</strong>〜それは変なラムを食ってるからだろう。いいラムだったら刺身で醤油でおいしいしさ。醤油でマリネにしておいたラムはバーベキューで焼いたら最高にうまいよ。

<strong>小哲</strong>〜そうかなぁ、じゃあ今度試してみるか。日本のスーパー、昔からそうだけど、スーパーの売り場でいつも売れ残っているのがマトンを醤油に浸けたやつなんだよ。

<strong>雁屋</strong>〜あれはまずいよなぁ。

<strong>小哲</strong>〜そうでしょ。みんなあれを食べてるから、羊は臭くてまずいもんだと思ってる。

<strong>雁屋</strong>〜おまけにあれ、甘くしてるだろう。それにたまねぎに混ぜちゃって。韓国のプルコギ、あれもまずいじゃない。あれみたいな味がするんだよ。ああいう形にするからおいしくないんであって、酒と醤油でひと晩浸けておくと美味しいよ。

<strong>小哲</strong>〜うん、日本では最近、ジンギスカンなんてのが流行ってはいるんだけどね。僕はどうも、食べる気がしない。

<h3>フランス料理としょうゆと日本人シェフ</h3>

<strong>雁屋</strong>〜昔は日本でフランス料理というと、ホテルのレストランしかなかったんだけど、町場で本格的なフランス料理店ができたのは、「シェイノ」の井上さんみたいな人たちが、70年代にフランスで修業して日本に帰ってきてからなんだよ。だけど、あの世代の人たちは醤油を使うことを拒否してたんだよね、面白いことに。とにかく醤油の味からいかに離れるかということが最重要課題だったんだよ。それが、最近のフランス料理のシェフたちは気軽に醤油を使うんだよな。醤油は完全に彼らの必須要件になってる。フランス料理の人たちが醤油をポタポタたらすんだから。今から思えば、その当時のフランス料理の日本人シェフたちっていうのは、固定観念にとらわれていたんだな。

<strong>小哲</strong>〜でもその気持ちはよくわかるね。彼らは一生懸命フランス人になろうとしていたんだと思う。

<strong>雁屋</strong>〜そうなんだろうね。そういう意味では何かにとらわれた心では新しいものは作れないな。だから、フランス人のほうがフランス料理に醤油を取り込んで美味しいものを作っちゃうみたいなね。ロビュションなんて平気で使っちゃうしさ、たいしたもんだよ。

<strong>小哲</strong>〜本家だから自信があるし、どうやろうと、自分が何をつくろうとフランス人がやっていればフランス料理だからね。日本人のシェフはフランス料理じゃないって言われるのがなによりも怖い。だから、しょうゆなんか使ったらお里が知れちゃうってわけでしょ。それで、みんなわざわざフランスから食材を取り寄せている。フランス料理らしくするために。

<strong>雁屋</strong>〜そうなんだよな。しかし、何てったって醤油のうまさだよ。これは揺ぎのないものですよ。

<strong>小哲</strong>〜そうか、じゃあ日本のフランス料理にとって、醤油はいわば逆輸入であって、ようやく最近になって醤油という呪縛から解き放たれたってわけだ。難しいよね、醤油って日本人の心みたいなもんだから。


<em>つづく...</em>]]>
      
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   <title>醤油（その１）</title>
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   <published>2007-02-07T17:33:03Z</published>
   <updated>2007-02-09T06:11:09Z</updated>
   
   <summary>醤油がなければ日本人は生きてゆけない 小哲〜日本人になくてはならないものとして、...</summary>
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         <category term="醤油" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
   
   
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      <![CDATA[<h3>醤油がなければ日本人は生きてゆけない</h3>

<strong>小哲</strong>〜日本人になくてはならないものとして、前回まではごはんについて話したんだけど、同じようにこれがなければ日本人は生きていけないというのに醤油があると思うんですね。とにかく、醤油がなければ日本の料理は成り立たない。ただし、醤油っていうのはなんでも美味しくしてくれるから、これほど有難い調味料はないのだけど、逆に、うますぎてね、本来塩で食べたらいいものまで醤油で食べてしまうもんで、どれも似たような味になってしまう。たとえば、焼き魚なんか醤油をかけちゃうと、せっかくの持ち味を消しちゃうでしょ。まずい魚だったら、そりゃ醤油でごまかせばいいけど。それと、醤油とひと口に言うけれども、みんな地方ごと違う味のものをこれが醤油だと思って食べているんですよね。富山では、刺身を甘いたまり醤油で食ぺていたりするし。

<strong>雁屋</strong>〜醤油は日本にいろいろあるけど、西の方に行くと甘くなるんだよ。ただ、たまりは醤油とは違うからな。

<strong>小哲</strong>〜まあ、そうだけどね。あと、長崎なんかもあまいですよね。

<strong>雁屋</strong>〜あのへんも醤油じゃなくてたまりだな。あれはわざと甘くしてるんだ。高知もそうだよ。たまり醤油って言ってるけれども、もともとたまりっていうのは味噌をつくってる途中で味噌の中の汁分が容器にたまるんだよ。それを取って出したのがたまりなんだよ。だから、たまり醤油なんていうのはほんとはおかしいんだよ。

<strong>小哲</strong>〜昔、農家のおばちゃんが作った味噌を２、３キロもらったことがあってね。それを冷蔵庫に１年くらい置いたままにしておいたら、下のほうにたまりがにじみ出ていた。それをなめたら、鮮烈でほんとうにうまかったなあ。あれがたまりの原型だと思うんだけど、現在のたまり醤油というのは、はじめから味噌と同じように大豆だけで醸造しているんだね。

<strong>雁屋</strong>〜僕はあの甘いたまり醤油っていうのは苦が手でねえ。お刺身を食べるときにたまり醤油はちょっとね。高知なんかも魚がすごくおいしいんだけど、たまり醤油を使うところが多いので、ああいうところに行くときには醤油を持って行った方がいいんじゃないかって思う、僕の好みからすればね。長崎の醤油も甘いけど、昔から砂糖を珍重する地域の醤油は甘いなあ。

<strong>小哲</strong>〜だけど、高知からちょっと和歌山の方に行くと甘くないいわゆる湯浅醤油系の透明感のある醤油になるんだよね、不思議と。そして、日本海側に行くとまたとろりとした甘いのがある。

<h3>醤油のルーツは径山寺味噌</h3>

<strong>雁屋</strong>〜醤油っていうのは、鎌倉時代に禅僧が宋から持ち帰った径山寺味噌が紀州に伝わり、それからできた溜まりがルーツとしてあるんだけど、今のような醤油が作られるようになるのは、比較的最近で、江戸時代の少し前くらいなんだよね。最初は紀州が中心だったのが、江戸中期になると、関東の野田とか銚子あたりでも作るようになって、産業として関西よりも関東のほうが盛んになった。

<strong>小哲</strong>〜いまや大手の醤油メーカーはキッコーマンをはじめ関東が多いでしょ。

<strong>雁屋</strong>〜この間、僕は青森に行って驚いたんだけど、青森では醤油は昔からずっとなかったから、何を使っていたかというと味噌なんだよね。味噌を布に入れて、それをお湯の中でゆするわけだ。そうすると味噌の塩分とかうまみが出るじゃない。それを調理に使うんだよ。すましといって、それがすごくおいしいんだよね、逆にね、醤油に慣れてるとさ。

<strong>小哲</strong>〜それって、醤油ができる前の時代の「垂れみそ」ってやつに似てますよね。味噌を水と一緒に煮たやつを布袋に入れて、それから垂れてきた汁を醤油代わりに使った。

<strong>雁屋</strong>〜そのすましがね、いま食べるとかえって新鮮でうまいんだよね、鍋なんかそれでやるとさ。要するに、青森はかつては日本の中で辺境の方じゃない。北海道なんか明治になってから開かれたところで、明治までは青森が北端だったわけだ、日本の。たから、北端の地までなかなか醤油は届かなかったんだよな。

<strong>小哲</strong>〜醤油はなくても、味噌はあったわけですからね。

<h3>日本人は醤油も日本風に変えてしまった</h3>

<strong>雁屋</strong>〜それで青森ではずっとすましを使ってたわけだ、醤油のかわりにね。いまでもそのすましを使ってるんだよ。ついでに言うと、醤油っていうのはもともとは中国のものなんだけど、日本の醤油と、中国の醤油を比べてみると、味が全然違うわけだ。日本料理に使うと中国の醤油っておいしくないんだよ。でも、中華料理のときは中国の醤油じゃないとおいしくないんだよね。魚とか貝の清蒸（チンジャオ）ってつくるじゃない。そのときに日本の醤油を使うと香りが強すぎて、中国の醤油だとちょうどいい具合になるの。やっぱり中華料理のときは中国の醤油じゃないとだめなんだな。

<strong>小哲</strong>〜僕、いつも家で清蒸（チンジャオ）を作るときは魚醤を使うよ。

<strong>雁屋</strong>〜清蒸には、魚醤は使わない。

<strong>小哲</strong>〜そぅ？　おいしいよ。今度やってみて。

<strong>雁屋</strong>〜重なっちゃうじゃない、魚の味と魚醤が。

<strong>小哲</strong>〜大丈夫、大丈夫、全然。広東料理でも使っているところあるよ。

<strong>雁屋</strong>〜そうかな、僕は魚醤は使わないね。とにかく、中国の醤油と日本の醤油というのは、ドロッとしたところも違うしな。日本の醤油の方が色が鮮やかで、日本では醤油のことをむらさきっていうだろう、別名。中国の醤油はむらさきにはならないよね。香りも違う。結局、中国からもってきた文化である醤油を日本風に変えちゃったわけだよね。

<strong>小哲</strong>〜これまた日本人の得意技で、なんでも日本風に変えて取り入れちゃうってやつね。

<h3>今や世界中に広まった醤油</h3>

<strong>雁屋</strong>〜で、いまや醤油は世界中に広まってるけども、これはみんなキッコーマンの醤油なんだ。海外ではキッコーマンの醤油が一番高く評価されてるわけでね。アメリカにも醤油工場を持ってるだろう。それから、オーストラリアなんかどんな田舎に行ったってスーパーマーケットに醤油があるもの。

<strong>小哲</strong>〜醤油ってオーストラリアでもそんなにポピュラーなの？

<strong>雁屋</strong>〜オーストラリアはどこに行ったってあるよ。最近はわさびだってある。

<strong>小哲</strong>〜え、わさびなんか誰が買うの？

<strong>雁屋</strong>〜オーストラリア人さ。

<strong>小哲</strong>〜オーストラリア人がわさびを使うの？

<strong>雁屋</strong>〜なに言ってるのよ、もう20年ぐらい前だけどさ、オーストラリアのリゾート地で有名なところがあるわけだよ。そこは島でホテルは１つしかなくて、昼はいわゆるバイキング形式になってて、そこに料理がいろいろ並ぶんだけど、マグロの刺身なんかも並ぶわけだよ。その脇にわさびがつくんだけど、これがどういうわけか知らんけど、もちろん粉わさびだけど、丸薬みたいに丸めてあるんだよ。

<strong>小哲</strong>〜ほんとに！丸めたわさび！？（笑）

<strong>雁屋</strong>〜そう、それで最初にマグロの刺身からなくなっていくんだから。

<h3>オーストラリアでは、醤油だけでなくわさびも売っている</h3>

<strong>小哲</strong>〜そうか、オーストラリアでも寿司ブームか・・・・・。

<strong>雁屋</strong>〜シドニー競馬に会員制のジョッキークラブってのがあってね、そこの食堂に行くといろんな料理が並んでんだけど、そこにも、ちゃんとマグロとサケの刺身があるんだよ。最近はオーストラリア人だって刺身が好きなんだな。で、皿の横にはちゃんと醤油と粉わさびが置いてあるよ。それどころか、スーパーマーケットに行けば、チューブ入りのわさびだって売ってるんだよ。

<strong>小哲</strong>〜えッ、ほんとうに？　日本人向けの日本食料品店じゃなくて？

<strong>雁屋</strong>〜ちがうちがう、一般のスーパーマーケットでわさびも売ってる。

<strong>小哲</strong>〜ありャァ、昔、僕がロンドンにいた頃なんか、わざわざ町のはずれにある日本食料品店まで買いに行ったもんだよ。

<strong>雁屋</strong>〜シドニーじゃ、もう普通の大きいスーパーマーケットでみんな売ってるね、そういうものは。

<strong>小哲</strong>〜オーストラリアってイギリス系とかドイツ系が多いから、彼らはいちばん生ものを食べない人たちだと思ってた。

<strong>雁屋</strong>〜いや、これがもう様変わりだよ。18年前に僕たちが初めてシドニーに行ったときは海苔巻を食べられないオーストラリア人がいたんだけど、いまはシドニーの街中、あちこちに海苔巻のテイクアウトの店があってさ、でも、日本人がやってるんじゃないんだよ、もう。

<strong>小哲</strong>〜韓国人なんじゃない？韓国にも海苔巻きがあるから。

<strong>雁屋</strong>〜韓国人も多いけれども、中国人もやってるし、オーストラリア人もやっている。で、学生が海苔巻を食べながら町を歩いてるんだよ。

<strong>小哲</strong>〜ハンバーガーじゃなくて、海苔巻きを手にして歩いてるの！？

<strong>雁屋</strong>〜うーん、すごいよ。海苔巻がちゃんと定着しちゃってるもの。だから、醤油もオーストラリアには完全に定着している。

<strong>小哲</strong>〜そうか、そうすると、日本の味が世界各地に定着する、その先導役を務めたのが醤油だって言えるんだ。

<strong>雁屋</strong>〜うん、醤油だな。

<strong>小哲</strong>〜そう考えると、改めて醤油という調味料の偉大さに驚かされますね。


<em>つづく...</em>]]>
      
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   <title>ごはん（その７）</title>
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   <published>2007-01-11T22:45:13Z</published>
   <updated>2007-01-11T22:48:57Z</updated>
   
   <summary>お茶漬けの粋、水漬けの妙 小哲〜そういえば、お茶漬けなんていうのも、ごはんならで...</summary>
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   <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.oishinbo.net/rittai/">
      <![CDATA[<strong>お茶漬けの粋、水漬けの妙</strong>

<strong>小哲</strong>〜そういえば、お茶漬けなんていうのも、ごはんならではの料理でしょ。料理と呼ぶにはこじんまりしてるけど、こればっかりはパンじゃうまくいかない。

<strong>雁屋</strong>〜お茶漬けは、僕も前に書いたけど、魯山人の書いたお茶漬けだけだってすごくいろいろな種類があるぞ。魚のお茶漬けもあるし、それから、納豆のお茶漬けもあって、うまいんだこれが。

<strong>小哲</strong>〜えッ、納豆はどうするの？　お茶なの、お湯なの、だしなの？

<strong>雁屋</strong>〜お茶だよ。お茶はどういうお茶かというと、例の粉茶だよ、寿司屋で出す。お茶漬けにはあれがいいって、魯山人は書いてる。よく、お茶漬け屋でだしをかけて出すところがあるけど、あれは違反だよ。あれは汁漬け、お茶漬けじゃない。お茶漬けはやっぱりお茶でなけりゃ。

<strong>小哲</strong>〜だしのほうがうまいけどな・・・・。

<strong>雁屋</strong>〜うまいけど、それはお茶漬けじゃない。それは汁漬けで別の話だよ。しかし、お茶漬けだって、内容によって、ほんとにいろんなものがあるぞ。

<strong>小哲</strong>〜魯山人のは何種類ぐらいあるの？そもそも、何の本に出てたの、それ。

<strong>雁屋</strong>〜これはほんとに偶然手に入れたんだけどね。魯山人が星岡茶寮って料理屋をやってたことがあっただろう。その時に会員用に配ったやつで、しまいには本屋でも売ったんだけど、「星岡」っていう月刊の雑誌があった。それの全巻揃いの合冊本を、いつも行く神保町の古本屋で見つけんだよ。うわあ、これ「星岡」じゃない！って。で、すぐにそれを買っちゃったんだけどね。

<strong>小哲</strong>〜高かったでしょ。

<strong>雁屋</strong>〜うーん、いくらだったかな。そんなには高くはなかったよ。で、早速それを「美味しんぼ」に書いちゃったよ。山岡が古本屋で「星岡」をを見つけけたって。

<strong>小哲</strong>〜いつ書いたの、それ。最近？

<strong>雁屋</strong>〜90何巻かな。で、そのあとでその店に行った時に「漫画になりましたから」ってオヤジさんに言ったらすごく喜んでた。そこのオヤジさんとはつきあいが長いからね。昔、僕は江戸のものをたくさん集めていて、その店でも江戸物をずいぶん買ったんだよ。で、あるとき「美味しんぼ」を見せたら「あれ！？江戸物を書くんじゃなかったんですか、食べものだったんですか」って驚いていた。次は絶対に江戸物だと思ってましたよって。

<strong>小哲</strong>〜ところで、お茶漬けの話だけど、お茶漬けもごはん料理のひとつとして、基本形はどんぶりのごはんがあって、それにお茶をかける・・・・。

<strong>雁屋</strong>〜そのときのお茶漬けのごはんは、あったかいごはんにかけるか、冷たいごはんにかけるか、またこれで味が違ってくるわけよ。うるさい人になると、冷ごはんじゃなけりゃいけないっていう人もいるし、いや、そうじゃない、あったかいごはんにかけたらまたうまいっていう人もあるし、これは好みで違ってくる。どっちがいいとは言えない。

<strong>小哲</strong>〜僕は、その冷ごはんのお茶漬けを昔やってみたことがある。子母澤寛の「味覚極楽」って本に出てた話で、芝増上寺の大僧正だったと思うんだけど、ごはんは水漬けに限るっていうんだ。水漬けに沢庵ね。

<strong>雁屋</strong>〜ああ、水漬けはうまいよ。

<strong>小哲</strong>〜で、さっそく自分でも試してみたんだけど、これがうまいんだよ。
お寺だから水漬けのごはんに沢庵なんだろうけど、沢庵みたいにあまり味が強くなくて、じわじわっと味が広がってくるもののほうが、ごはんの味とスピ〜ドが合うんだね。冷や飯だからごはんの余計な匂いもないから、ごはんのほんとうのうま味がわかる。炊きたてのごはんとは別もので、静謐そのもの。ああ、こういうのもあるんだなと思った。

<strong>雁屋</strong>〜いったん冷飯を食い始めるとあったかいごはん食えなくなる。冷飯の方が甘味があって、おいしくて。炊きたてのごはんは食べたくないっていう人がけっこういるね。俺はそうは思わないけどな。　

<strong>小哲</strong>〜その和尚さんは自分みたいに年をとるとって言ってたな。
　
<strong>雁屋</strong>〜俺はあったかいごはんも好きだけど、炊きたての。あれはうんこの臭いがするっていうな。

<strong>小哲</strong>〜きったねえな、でも、そう言われてみればちょっと臭いね、うんことは違うけど。なんていうか、蒸れた足のにおいのような。でも、それは米と水がよくない場合でしょ。

<strong>雁屋</strong>〜独特の嫌なにおい。あれが嫌だっていう人がいるんだよ。

<strong>小哲</strong>〜前に、富山からもらった城山の水っていう名水といわれてるやつでごはんを炊いたときは、その匂いが全然違うんだよ。びっくりするほど甘いいい香りがしたの。

<strong>雁屋</strong>〜そう、水によって違うよね。全然違う話だけど、俺、高校３年の夏休みに北海道、札幌の親父の会社の寮に行ったじゃない。そこに北大の医学部の学生がいたんだよ。その学生、いい男でもててさ。よく酒飲みに連れていってもらったりしたんだ。いつも面白い話をしてくれるんだけど、そいつひどいんだ。解剖の時間が足りなくなっちゃうと、鞄に腕を詰めて寮に持って帰ってきてやるんだって。

<strong>小哲</strong>〜寮で！？もしかして、まな板かなんかにのせたりして。

<strong>雁屋</strong>〜しょうがないから片腕持ってきて、テ〜ブルの上でやるんだって。それで、とにかく嫌なのは、解剖した後で、あったかいごはんをよそって食べようとすると、手のにおいとごはんのにおいが一緒になって、鼻にモアーと来るんだってさ。それがものすごい嫌なんだって。

<strong>小哲</strong>〜なに、死体の手のにおいが自分の手に染みついていてるってこと？

<strong>雁屋</strong>〜それがさ、あったかいごはんの匂いと合わさるとすごい匂いになるんだって。

<strong>小哲</strong>〜うわあ、たまんないな。

<strong>雁屋</strong>〜解剖が終わった後、いくら手を洗っても匂いが消えないそうだ。そうすると、ほかほかのごはんから立ち上る湯気に自分の手のにおいが混ざる。それがたまんなく嫌なんだって。

<strong>小哲</strong>〜ヒャァー、気持ち悪い。でもさ、冷たいごはんならいいのかな。

<strong>雁屋</strong>〜冷たいごはんだったらいいみたい。炊きたてのごはんが苦手だって言ってたよ。それをしてるときはいやだったって。

<strong>小哲</strong>〜じゃあ、医学生には増上寺の大僧正みたいに水漬けと沢庵だ。

<strong>雁屋</strong>〜しかし、すごいやつだよな、死体の腕を鞄に詰めて寮に持って帰り、その一室でやるわけだ。で、ここがどうで、あれがどうだ何だとレポ〜トを書くんだって。すごいやつだよ。

<strong>小哲</strong>〜それって、やっぱり台所でやるのかなあ。

<strong>雁屋</strong>〜馬鹿いってんじゃないよ、自分の部屋でやるんだって。当たり前じゃないか。夜中に自分の部屋で新聞紙を広げて、そこでメスを持ってやっていくんだよ。

<strong>小哲</strong>〜うわッ、新聞紙の上で！？まるで猟奇事件だよ。でも、血は流れないんだよね。

<strong>雁屋</strong>〜もうホルマリン漬けになったやつだから、血は出ないな。

<strong>小哲</strong>〜なるほど、ごはんの匂いってのは、人によってはそれほどまでに違って感じられるということか。人の好みには、人それぞれの事情があったってわけで、このへんでそろそろごはんの話も終わりにしたいと思います。どうも、ごちそうさまでした。ウップ・・・・・。]]>
      
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   <title>ごはん（その６）</title>
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   <published>2007-01-05T02:51:45Z</published>
   <updated>2007-01-06T02:50:01Z</updated>
   
   <summary>ごはんと丼と日本人 雁屋〜　ごはんといえば、日本の独特な料理、どんぶりものってい...</summary>
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   <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://www.oishinbo.net/rittai/">
      <![CDATA[<strong>ごはんと丼と日本人</strong>

<strong>雁屋</strong>〜　ごはんといえば、日本の独特な料理、どんぶりものっていうのがあるじゃないか。

<strong>小哲</strong>〜そうだね、あれはごはんがなけりゃ成立しない。

<strong>雁屋</strong>〜成立しないし、あんなものは日本にしかない。そのための器があるんだから、どんぶりという。ごはんの上にのっけちゃうんだよ、カツ丼だろ。カツ丼だって東京あたりでなじみのあるのは煮てたまごでとじたカツ丼だけど、関西のカツ丼ていったら、ウスターソースをかてただけのほんとのカツをのっけてるわけ。どんぶりものっていったら、何だって上ののっけてどんぶりにしちゃうじゃない。うな丼もあるし、鉄火丼もあるしさ。どんぶりものっていうのが不思議な食いものなんだよ。

<strong>小哲</strong>〜そうだね、どれもみなごはんが前提だからなあ。

<strong>雁屋</strong>〜ごはんの上に何かのっけちゃってどんぶりものにすると、それひとつで料理になっちゃう。それで一つのごちそうになる。だって、カツ丼一杯で、犯人が涙流して白状するんだぜ。

<strong>小哲</strong>〜そうそう、ああいう場合はどういうわけかカツ丼が絵になる。

<strong>雁屋</strong>〜カツ丼食わせると殺人犯が泣くんだよ。旦那、すいませんでしたって。その威力だよ。カツ丼とか、エビの天丼なんていったら大変なごちそうじゃないか。

<strong>小哲</strong>〜昼飯を食べに天ぷら屋に行くと、いつも迷うんだよ。てんぷら定食にするか、天丼にするかって。

<strong>雁屋</strong>〜俺は迷わず天丼。

<strong>小哲</strong>〜この間、てんぶら定食のほうを食べていて、ふと思ったんだけど、ど、天丼と普通の天ぷらは別もんだね。

<strong>雁屋</strong>〜全然違う、全く別もん。僕は　日本に戻ってきたときは、銀座に近くて便利だから帝国ホテルに泊まるんだけど、あそこの天一だけはしょっちゅう行くよ。で、天丼を食べる。

<strong>小哲</strong>〜だけど、せっかくの店で天丼しか食べなかったら、しみったれた客だって思われるんじゃないの？	

<strong>雁屋</strong>〜そんなことあるもんか、天丼だって立派な料理じゃないか。

<strong>小哲</strong>〜天丼は、てんぷらが濃いめのつゆにつけられてからご飯の上にのせられているでしょ。あれがいいんだよね。そのせいか、天丼だと多少まずくても食べられちゃう。

<strong>雁屋</strong>〜同じてんぷらでも、お好みで食べるてんぷらは繊細だけど、天丼はその反対で、一気に勢いで食うってところがある。これもどんぶりのいいところじゃないか。

<strong>小哲</strong>〜前に「チュボーですよ！」って番組のアドバイザーをやっていたんだけど、試聴率を確実にとるために定期的にどんぶりものを出すんだよ。というのは、フランス料理なんかいくらやったって、大多数の日本人にとっては遠い国の話なんだよ。だから視聴率がた落ち。だけど、どんぶりだと、誰だって食べたことあるし、食べやすいし、ごはんものだから、絵としても分かりやすい。だから、みんな身近に感じるんだね。

<strong>雁屋</strong>〜そうそう、何をのせてもどんぶりものはできるのよ。自分で考えられるの。何だって上にのっけちゃえばいい。納豆の上に生卵をのっければ立派などんぶりだからね。どんぶりものの威力だよな。これは忘れてはいけないね、ごはんを語るとき。

<strong>小哲</strong>〜鉄火丼ってあるじゃない。鉄火巻は鉄火場でつまみやすいから鉄火巻って名前になったんだけど。鉄火丼は単に刺身をのっけただけなのに、なんでそう呼ぶんだろう？　

<strong>雁屋</strong>〜それから来たんだよ。その流れで来て、鉄火巻をどんぶりにしたのが鉄火丼になった。

<strong>小哲</strong>〜そう、どんぶりってところがいいよな。

<strong>雁屋</strong>〜そんなわけだから、日本人とごはんを考えるとき、どんぶりものを忘れてはいけないな。

<strong>小哲</strong>〜そうだね。

<strong>雁屋</strong>〜料理の、非常に大きな一つの分野をなしてるよ。

<strong>小哲</strong>〜ちょっと変わったところで、深川丼なんてのもあったね、

<strong>雁屋</strong>〜アサリの味噌汁みたいなのをぶっかけるんだよ。うまいよ、あれ。アサリがよくなきゃだめだけど。アサリとネギだけだもん。

<strong>小哲</strong>〜前回の話に出た、味噌汁をぶっかけ飯みたいなもんだよね。

<strong>雁屋</strong>〜深川丼もそうだけど、どんぶりものっていろいろ創作ができるんだよな、西洋風のどんぶりものだってあるじゃない。

<strong>小哲</strong>〜フォアグラ丼てのがあって、最初いやみだなと思ってたけど、食べてくみると、これが結構うまいんだよ。ステーキ丼とフォアグラ丼、ミクニのどこかの店で出していたな。

<strong>雁屋</strong>〜だいたい、ステーキ丼なんていうのは、和洋折衷もいいとこだもんなあ。

<strong>小哲</strong>〜日本人の融通無碍なところね。どんぶりっていう器は、風呂敷みたいになんでも受け入れちゃうわけで、日本独特な料理のスタイルと言っていいと思う。SUSHI TERIYAKAKI と同じように、DONBURIっていう単語も そのうち 英語になっているかもしれないよ。]]>
      
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   <title>ごはん（その５）</title>
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   <published>2006-12-22T05:32:51Z</published>
   <updated>2006-12-22T05:38:57Z</updated>
   
   <summary>米粒信仰 小哲〜ごはんといえば、日本人はお米だけは食べ物の中でも別格扱いだよね。...</summary>
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      <![CDATA[<strong>米粒信仰</strong>

<strong>小哲</strong>〜ごはんといえば、日本人はお米だけは食べ物の中でも別格扱いだよね。　

<strong>雁屋</strong>〜うちの親父が、遊びに来ていたLEEを食事の時によくを叱ったの覚えてる？

<strong>小哲</strong>〜イギリス人のLEEを？　知らないなあ。

<strong>雁屋</strong>〜子供の頃は飯粒残すと怒られたけど、立派な大人で、しかも外人のLEEに対しても、飯食うときにお茶碗に米粒を残すと怒るわけ。日本人にとって米は貴重なものだったから、米に対して異常なる執着があり、独特の高い価値観を与えていたね。

<strong>小哲</strong>〜日本人はごはんの食べかたにも作法があり、様式化してるしね。

<strong>雁屋</strong>〜ほかのものを粗末にすることはあまり気にしないのに、米を粗末にするとものすごく怒るわけだ。

<strong>小哲</strong>〜米ひとつぶでもね。

<strong>雁屋</strong>〜ひとつぶの米を。例えば、駅弁なんかでも蓋についた米つぶをひとつ残らず食べるじゃない。

<strong>小哲</strong>〜そうなんだよ。あれ、はたから見てるとけっこう笑えるんだよ。もうそのくらいでいいじゃないって思うのに、立派なサラリーマンのオヤジでさえも、ムキになって、最後の一粒まで米粒をこそげとって食ってるの、おかずは平気で残すのにさ。

<strong>雁屋</strong>〜そうだろう。うなぎを食いに行ったって、うなぎを残しても飯は食うやつがいるよ、ひとつぶ残さず。米に対しては一種信仰みたいな価値観を持っている。米ひとつぶでも無駄にしちゃいけない。米という字をよく見ろ。お百姓さんが八十八回も手間をかけるから米なんだってね。そうじゃなかったら、禄高で大名の位を決めるなんてことなかったと思うよ。米がそれだけの価値観を持っていた。金に代わるものだったわけだからね。外国だったら金とかダイヤだよ。それを日本人は米の禄高でやるんだもん。

<strong>小哲</strong>〜お米は、瑞穂の国っていうくらいだから、やっばり日本人にとっては特別な食べ物で、そのせいか、お米に対しては特別の美意識をもっているよね。だから、お米に甘いものをつけて食べると、わあ、気持ち悪いって言う。おはぎなんかは甘いあんこがついているのに、ああいう決まりきったものだったら平気なんだね。だけど、お茶碗のごはんにジャムを乗せたら気持ち悪がるぜ。でも、ほんとは美味しいんだよ、だって、おはぎは美味しいじゃん。それから、東北に行くと、ずんだ餅、枝豆をつぶして甘くしたの、あれもごはんがあるから美味しいだね。

<strong>雁屋</strong>〜だって、あれは餅だもん。

<strong>小哲</strong>〜もう一つ、面白いのはね、ごはんにサラダドレッシングをかけるとみんなギャーッて言うんだよ。だけど、フランスやイタリアじゃごはんはサラダに良く使われる。ごはんは野菜の一種だし、特別の美意識も持ってないしね。

<strong>雁屋</strong>〜うん、あれうまいよな。

<strong>小哲</strong>〜だけど、あれをやると、どうやら日本人には大切なごはんを粗末に扱っているように見えるらしい。お米に対して独特の信仰というか崇拝があるから、味がどうのこうの以前に、神聖な米を冒&#28678;しているように思えるんじゃないかな。

<strong>雁屋</strong>〜おれはよく、味噌汁をかけて食うよ。

<strong>小哲</strong>〜あれはうまいよね。冷たい味噌汁もいいし。

<strong>雁屋</strong>〜それから、生卵な。これも、ごはんでなくちゃ美味しくない。

<strong>小哲</strong>〜あれ、パンでやったら、ペチョペチョして、みじめな気持ちになるだけだだからね。

<strong>雁屋</strong>〜でも、ごはんに味噌汁をかけるのは、行儀が悪いからしちゃいけないことになっている。

<strong>小哲</strong>〜それも、やっぱりごはんに対する美意識に反するからだろうね。。

<strong>雁屋</strong>〜だから、うちでは、ごはんに味噌汁をかけるんじゃなくて、味噌汁にごはんを入れて食べるの。

<strong>小哲</strong>〜え、なに、それ？どっちもやってることは同じじゃない。

<strong>雁屋</strong>〜見えかたがぜんぜん違うだろう。

<strong>小哲</strong>−あ、そうか、ごはんを味噌汁で汚すか、味噌汁をごはんで汚すかの違いか。ご飯茶碗という神聖な器に味噌汁が入り込むのは冒&#28678;だけど、味噌汁の碗の中にごはんがお入りになる分には許されるということかな。日本人の感覚としては、ご飯の上に味噌汁をかけると、無残な感じがするからね。

<strong>雁屋</strong>〜しかし、うまいからしょうがない。

<strong>小哲</strong>〜僕も、家で時々やるけど、たいていは味噌汁のほうに入れるなあ。

<strong>雁屋</strong>〜僕もうちで子どもたちには、ぶっかけごはんはいけない、なんて言ってるんだけど、みんなやりたがってな。

<strong>小哲</strong>〜僕も好きだからよくやるね。美味しいからな。いいだしでとった味噌汁にごはんを入れると、もう最高だよ。

<strong>雁屋</strong>〜で、あるとき、味噌汁にごはんを入れたら子供に見つかって「お父さん、やってるじゃない」なんていわれた。

<strong>小哲</strong>〜きっとどこの親も子供には行儀が悪いっていいながら、子供のいない時こっそりとやっているわけだ。ごはん信仰のホンネとタテマエってやつですね。いっそのこと、家族全員で味噌汁ごはんをやればいいいのに。

<strong>雁屋</strong>〜それをやっちゃったら、おしまいだろう、日本人として・・・・・（笑）]]>
      
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   <title>ごはん（その４）</title>
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   <published>2006-12-18T11:49:49Z</published>
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   <summary>記憶の中のおむすびの味 雁屋〜でもねえ、もてなしは難しいよね。俺ねえ、よその家で...</summary>
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      <![CDATA[<strong>記憶の中のおむすびの味</strong>

<strong>雁屋</strong>〜でもねえ、もてなしは難しいよね。俺ねえ、よその家で食べると、時々ごはんが軟かくて気持ち悪くてさあ。

<strong>小哲</strong>〜ごはんが軟かいのって、要するに水っぽいってことじゃない。だから、一緒におかずを食べるとおかずも水っぽくなって美味しくないんだよ。

<strong>雁屋</strong>〜ごはんのツブツブがわからないんだよ、ぴっちゃりなってて。おまけに、それで海苔巻きをつくってくれたんだな。まずくてさあ。

<strong>小哲</strong>〜その家はそういう軟かいのが当たり前なんだろう。

<strong>雁屋</strong>〜当たり前だと思ってるわけだよ。

<strong>小哲</strong>〜そうすると、雁屋哲にとって一番美味しいごはんてなに？　いままでで一番おいしかったごはんは？自分にとっての究極のごはんて。

<strong>雁屋</strong>〜うーん、飯盒も美味しいし、釜で炊いたのも美味しい。いろいろあるなあ。でも、記憶に残っててすごいのは終戦のときのあれと、おふくろがつくってくれたおこげのおむすびかな。終戦直後の話だけど、親父が会社に弁当を持っていくんだけど、親父はいちおう管理職だから面子があるわけじゃない。弁当に米の飯を持っていかなきゃいけない。毎朝、米の飯を炊くんだけど、それは僕たち家族の口には入らないわけだよ。親父の分だけ炊くわけだ。そうすると、釜の底におこげが残るじゃない。それをおふくろがこそげ落として、一人あたま親指ほどの大きさのおむすびを僕たち子どもにくれるわけだよ。その塩むすびがおいしくておいしくてね。

<strong>小哲</strong>〜僕も思い出した。僕が覚えているのは、おばあさんが作ってくれたやつで味噌を塗ったおむすび。あれはあんまりよそにないなあ。味噌の焼きおにぎりはあるけど。

<strong>雁屋</strong>〜味噌のおむすび、田舎に行けばあるよ。

<strong>小哲</strong>〜生の味噌が、香りがよくてうまいんだよ。

<strong>何もない時代の親指の頭ほどのおむすび</strong>

<strong>雁屋</strong>〜僕が忘れられないのは、あのときお前はまだ生まれてなかったから、兄弟３人にほんと、親指の頭ほどのおむすびだよ。

<strong>小哲</strong>〜ということは、ごはんは２合ぐらい炊いたのかな。

<strong>雁屋</strong>〜１合じゃないの。それを親父の弁当に入れて。それは面子だからさあ。親父だって自分だけ米を食べたいとは思わない。子どもたちにも食わしてやりたいと思うけれども、それはかなわない話で、釜の底のおこげのおむすび。そのうまかったこと。ほんとにうまいもんだと思ったよ。お前たちの世代にはわからないと思うんだけれど、俺たちみたいに戦争直後の食糧難を過ごした者にとって、米の飯っていうのはほんとにごちそうだったんだよ。俺んちだって、米だけの飯を食えるようになったのは、昭和30年代になってからじゃないかなあ。

<strong>小哲</strong>〜押し麦が入ってるごはんは覚えてるな。

<strong>雁屋</strong>〜そうだよ、ずっとそうだったよ。全部お米になったのは俺が小学校の４年か、５年ぐらいじゃないかなあ。

<strong>小哲</strong>〜というと、昭和26､7年頃のことかな。僕は幼稚園の頃、３、４歳までは押し麦が入ってたな。ぼんやりだけど、覚えているよ。

<strong>雁屋</strong>〜今でも覚えてるんだけど、田園調布で東口から西口のほうに引っ越しただろ。そのときに大工なんかが家に出入りしたわけだよ。そうすると大工に出すために、おこわのおむすびをたくさん作って、お盆に置いて戸棚に入れてあるんだよ。それを１個ずつぐらい僕たちにくれるわけだよ。これがうまくってなあ。おこわのおにぎりよ。

<strong>小哲</strong>〜そういえば、あの頃はいろんな職人が来たなあ。　

<strong>雁屋</strong>〜西口の方にに引っ越したあと、大工とか植木屋とかがいつまでも入ってたんだよ。ほとんど１年中、うちは職人が入ってた。

<strong>小哲</strong>〜畳屋も来たしな。冬になると煙突屋さんがストーブの煙突を取り付けにきた。で、煙突掃除屋さんもいたけど、今はもう姿を消しちゃった。

<strong>雁屋</strong>〜とにかく、引っ越したときのおこわのおむすびね。あのうまさは忘れられないなあ。僕たちの頃にはほんとに銀シャリって言葉があったからね。白い米のごはんが最高のごちそうだったもん。昭和40年近くまで、田舎に行くと「何もないけど、ごはんだけはあるからたくさん食べてね」って言ったもの。その言葉をいまだに忘れられない。

<strong>小哲</strong>〜そうそう。そういうこと言ってたなあ。

<strong>日本人全員が米を食えるようになったのはオリンピック後</strong>

<strong>雁屋</strong>〜何もないけど、ごはんだけはあるからねって。時代を勘違いしてる人がいて、東京ではもうその時代じゃなくなってるのに、田舎ではまだその意識が残っていてね。そういうもんだったんだぜ、米って。日本人全体が米を食えるようになったのは、昭和40年以降のことだって。

<strong>小哲</strong>〜全国的にね、そうか、昭和40年か

<strong>雁屋</strong>〜40年ぐらいからだって。それまでは米を食うっていっても米だけの飯なんて食えなかった。

<strong>小哲</strong>〜昭和40年というと東京オリンピックの次の年だよ。

<strong>雁屋</strong>〜そうだよ、オリンピックぐらいからようやく全部の日本人が米だけの飯を食えるようになった。戦後のことで、戦前なんていうのは、中くらいのところではみんなお混じりだろう。純粋な米だけなんていうのは金持ちの家だけよ。米だって変な米を食ってたわけだしさあ。だって、昔の田舎の話だけど、死ぬまで米を食えなかったんだぜ、百姓は、自分たちで作っておきながら。年貢で持っていかれちゃって。６・４なんていったって、政府が６とっていっちゃうじゃない。残りの４で食っていくんだから、百姓はそれを食べないで、売って生活費をつくるわけだ。大変なもんだったんだから。大正年間にあった「米騒動」、あのときだってすごい騒ぎだったんだよね。米っていうのは日本人にとってすごく重要なものなんだよね。僕はよく言うんだけど、大名の禄高を何万石って米で言うわけだろう。そんな国って世界中にないって。

<strong>小哲</strong>〜そうね、イギリスで小麦何万ブッシェルの領主なんてないもんな。

<strong>雁屋</strong>〜そんなこと言わないもん。大名の位が米の石高でいうなんて、おかしな話だよ。百万石の大名、なんてさ。そんなの日本以外にはありえないって。そのくらい日本人にとって、米っていうのは大変なものだったということだよ。
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